「施設機能強化推進費加算って聞いたことはあるけど、よくわからない」
「うちの園は対象になるの?」
「備品は揃えたけど、他に何に使えるの?」
保育園やこども園の園長先生、主任の先生から、こうした声を聞くことがあります。
施設機能強化推進費加算は、簡単に言えば、保育園・認定こども園などが防災対策を進めるために活用できる公定価格上の加算です。
※この記事では分かりやすく「防災専用予算」という表現を使いますが、制度上は自由に使える補助金ではなく、国が定める公定価格上の加算です。
そのため、実際に対象となる取組や経費、申請の可否については、施設が所在する自治体への確認が必要です。
ただ、この加算で大切なのは、防災用品を買うためだけのものではないという点です。
こども家庭庁の資料では、施設機能強化推進費加算の取組として、職員等への防災教育、避難訓練、避難誘導体制の充実、避難具の整備、地域との防災支援協力体制などが示されています。
つまり、ヘルメットや非常食などの備品購入だけでなく、職員の防災研修、避難訓練の見直し、避難誘導体制の充実、必要に応じた外部支援なども含めて、園の防災体制を整えるために活用できる制度です。
この記事では、制度の基本、令和8年度の見直し、対象となる経費、保育園での活用の考え方を、公的資料をもとに整理します。
※実際の対象経費や申請手続きは自治体によって異なる場合があります。申請を検討する際は、必ず施設所在地の自治体にご確認ください。
施設機能強化推進費加算とは?
施設機能強化推進費加算は、保育所・幼稚園・認定こども園などが受けられる、公定価格上の加算です。
こども家庭庁の留意事項通知では、火災・地震等の災害時に備え、職員等への防災教育や、災害発生時の安全かつ迅速な避難誘導体制を充実させるなど、施設の総合的な防災対策を図る取組に対する加算とされています。
具体的には、次のような取組が想定されています。
- 職員等への防災教育
- 防災訓練・避難訓練の実施
- 地域住民等との防災支援協力体制の整備
- 合同避難訓練
- 避難具の整備
- 災害時の避難誘導体制の充実
ここで重要なのは、施設機能強化推進費加算は、単なる「備品購入費」ではないということです。
園の防災対策は、物を揃えるだけでは完成しません。
実際に災害が起きたとき、職員がどう判断するか。子どもをどう誘導するか。避難に必要な物品を使える状態にできているか。訓練後に改善できているか。
そうした園の防災体制全体を整えるための加算として考えると、制度の意味が分かりやすくなります。
令和8年度の見直しポイント
令和8年度の公定価格改正では、施設機能強化推進費加算について見直しが行われています。
主なポイントは次の3つです。
1. 複数実施要件の廃止
これまで施設機能強化推進費加算では、防災対策に加えて、延長保育、一時預かり、病児保育、乳児の利用、障害児の利用など、複数の事業等を実施していることが要件とされていました。
令和8年度の見直しでは、この複数実施要件が廃止されています。
こども家庭庁資料でも、複数実施要件について「廃止」と示されています。
これにより、これまで要件を満たしにくかった園でも、防災対策の取組内容によって加算を検討しやすくなります。
2. 加算額の見直し
令和8年度の見直しでは、単価が施設種別に応じて整理されています。
- 保育所・幼稚園・認定こども園:20万円
- その他事業所:10万円
こども家庭庁資料でも、保育所・幼稚園・認定こども園は20万円、その他事業所は10万円と示されています。
3. 対象施設の拡大
対象施設には、幼稚園、保育所、認定こども園、家庭的保育事業所、小規模保育事業所、事業所内保育事業所に加えて、居宅訪問型保育事業所も含まれています。
この見直しにより、施設の規模や形態に応じて、防災対策を進めるための加算として活用しやすくなっています。

対象になる施設と、企業主導型保育園の注意点
令和8年度の見直し後、施設機能強化推進費加算の対象として示されている施設・事業所は次のとおりです。
- 幼稚園
- 保育所
- 認定こども園
- 家庭的保育事業所
- 小規模保育事業所
- 事業所内保育事業所
- 居宅訪問型保育事業所
ここで注意したいのが、企業主導型保育園です。
企業主導型保育園は、名前だけを見ると「事業所内保育事業所」と似ているため、対象になるように感じるかもしれません。
しかし、施設機能強化推進費加算の対象施設一覧には、企業主導型保育施設は含まれていません。
特に混同しやすいのが、「事業所内保育事業所」と「企業主導型保育園」は同じではないという点です。
事業所内保育事業所は、地域型保育事業の一つとして市町村の認可を受ける施設です。
一方、企業主導型保育園は別制度で運営される施設で、自治体の説明でも認可外保育施設に位置づけられるとされています。
そのため、企業主導型保育園については、この記事で解説している施設機能強化推進費加算ではなく、企業主導型保育事業側の助成・運営費・安全対策に関する制度を確認する必要があります。
自園が「事業所内保育事業所」なのか、「企業主導型保育園」なのか分からない場合は、申請前に自治体や運営法人へ確認してください。
保育園にとっては防災対策に使う加算
「施設機能強化推進費」という名称だけを見ると、防災以外の幅広い用途にも使えそうに見えるかもしれません。
しかし、保育園・認定こども園でこの加算を考える場合、実務上は、火災・地震等の災害時に備えた防災教育、避難訓練、避難誘導体制、避難具整備などに活用する加算として整理するのが基本です。
そのため、この記事では「保育園の防災専用予算」という分かりやすい表現を使っています。
ただし、繰り返しになりますが、制度上は自由に使える現金給付ではありません。
対象経費として認められるかどうかは、取組内容、支出内容、自治体の運用によって確認が必要です。
何に使えるのか?
施設機能強化推進費加算で考えられる取組は、大きく分けると次の3つです。
1. 災害に備えるもの
災害時に必要となる備品や物品の整備です。
たとえば、次のようなものが考えられます。
- ヘルメット
- 防災頭巾
- 非常食
- 保存水
- 発電機
- 簡易トイレ
- 防災倉庫
- 避難時に使う備品
ただし、備品であれば何でも対象になるわけではありません。
あくまで、災害時の備えとして必要性を説明できるものかどうかが大切です。
2. 防災教育に使うもの
職員の防災知識や対応力を高めるための費用です。
たとえば、次のような内容が考えられます。
- 防災研修
- 外部講師への謝礼
- 防災教本
- 防災教育DVD
- 訓練用資機材
- 心肺蘇生訓練用の教材
- 消火訓練に関する教材
こども家庭庁資料でも、対象経費には謝金が含まれています。
そのため、防災教育に関する外部講師への謝礼などは、内容によって対象経費として検討できる場合があります。
3. 避難誘導体制を充実するもの
災害時に、子どもたちを安全かつ迅速に避難させるための物品や取組です。
たとえば、次のようなものが考えられます。
- 避難車
- おんぶひも
- 担架
- 誘導ロープ
- ゼッケン
- トランシーバー
- 拡声器
- 避難訓練に関する外部支援
こども家庭庁資料では、対象経費として委託費も示されています。
ただし、委託費は「防災訓練及び避難具の整備等に要する特別の経費」に限られ、通常の教育・保育に要する費用は含まれないとされています。
つまり、避難訓練の設計や実施支援などは、内容によって検討できる可能性がありますが、通常業務との区別が必要です。

対象になりやすいもの・なりにくいもの
施設機能強化推進費加算では、災害時に備えた防災対策に必要な経費かどうかが重要です。
対象になりやすいものは、次のようなものです。
- 職員の防災教育に関するもの
- 避難訓練に関するもの
- 避難誘導に必要な備品
- 災害時の安全確保に必要な物品
- 防災対策の記録・振り返りに関係するもの
一方で、次のようなものは注意が必要です。
- 法令上、通常設置が求められる設備
- 防犯目的が中心の物品
- 日常保育で通常使用する消耗品
- 防災との関係が説明しにくい汎用品
- 通常業務や一般的な園運営のための費用
たとえば、消火器、火災報知設備、防炎カーテンなどは、法令上の設置義務や通常の施設管理との関係があるため、自治体によって対象外と整理される場合があります。
また、おむつ、救急用品、筆記用具など、日常保育で通常使うものも、防災対策としての必要性を説明しにくい場合があります。
迷った場合は、購入や契約の前に、自治体へ確認することが重要です。

見落とされやすいのは人やサービスにかかる費用
施設機能強化推進費加算というと、多くの園では「防災用品を買うためのもの」と考えがちです。
もちろん、備品整備は大切です。
しかし、公的資料で示されている対象経費には、備品購入費だけでなく、謝金、使用料及び賃借料、委託費なども含まれています。
つまり、内容によっては、次のような使い方も検討できます。
- 外部講師を招いた防災研修
- 避難訓練の設計や実施支援
- 防災訓練に必要な資機材のレンタル
- 防災対策の記録や振り返りに関係するツール
- BCPや備蓄管理など、防災対策に関係する仕組みづくり
ただし、ここは特に注意が必要です。
「使用料及び賃借料」として記載があるからといって、すべてのクラウドツールやサービス利用料が対象になるわけではありません。
防災訓練、避難具整備、防災教育、避難誘導体制の充実など、制度の目的に沿った内容であることが重要です。
たとえば、防災訓練の記録、備蓄管理、BCP作成、防災対策の振り返りなど、災害時の備えに直接関係するツールであれば、自治体に確認する価値はあります。
一方で、通常の保育記録や一般的な園務支援に近い部分は、対象外と判断される可能性があります。
備品購入で終わらせない防災対策へ
ヘルメット、非常食、保存水、発電機などを整備してきた園にとって、次に悩みやすいのが、
「もう何を買えばいいのかわからない」
「毎年同じような備品を更新しているだけになっている」
「防災対策として本当に役立っているのか分からない」
という点です。
防災で大切なのは、備品を持っていることだけではありません。
災害時に、職員が判断できること。
子どもたちを安全に誘導できること。
避難経路や避難先が現実的に使えること。
訓練後に気づきを残し、次の改善につなげること。
これらが揃って初めて、備品が実際の防災力につながります。
たとえば、避難車や誘導ロープを整備していても、実際の訓練で使っていなければ、いざという時に使いにくい場所に置かれていたり、職員の人数に合っていなかったりすることがあります。
だからこそ、施設機能強化推進費加算は、次のように段階的に考えるのがおすすめです。
- 防災備品を整える
- 職員が防災について学ぶ
- 避難訓練で実際に動いて確認する
- 記録・振り返りを日常に組み込む
この流れをつくることで、防災対策は一度きりの購入ではなく、園の安全管理として残りやすくなります。

令和8年度からは安全計画の減算にも注意
令和8年度の見直しでは、施設機能強化推進費加算だけでなく、安全計画の策定等を行っていない場合の減算も創設されています。こども家庭庁の令和8年度見直し事項にも、「安全計画の策定等を行っていない場合の減算の創設」が示されています。
ここで大切なのは、「加算があるから防災対策をする」という考え方だけでは不十分になってきているということです。
これからは、
- 安全計画を整える
- 研修や訓練を実施する
- 記録を残す
- 振り返って改善する
という一連の流れを、園の安全管理として日常に組み込んでいくことが重要になります。
施設機能強化推進費加算は、その流れを整えるためのきっかけとしても活用できます。
加算を活用するための5ステップ
施設機能強化推進費加算を活用する場合は、次の流れで考えると整理しやすくなります。
Step 1 自治体に確認する
まずは、施設所在地の自治体に確認します。
令和8年度の見直しにより、要件や単価が変更されています。
また、実際の申請書類、提出時期、対象経費の判断、実績報告の方法は自治体によって異なる場合があります。
Step 2 園の防災の現状を棚卸しする
次に、園の防災対策の現状を確認します。
- 備品は足りているか
- 古くなっているものはないか
- 職員研修は実施できているか
- 避難訓練は形だけになっていないか
- 安全計画やBCPとつながっているか
- 記録や振り返りが残っているか
この棚卸しによって、今の園に必要な対策が見えやすくなります。
Step 3 年間計画を立てる
加算を活用する場合は、単発で考えるより、年間計画として考える方が実務に落とし込みやすくなります。
たとえば、
- 春:防災備品の確認
- 夏:水害・熱中症対策の確認
- 秋:職員向け防災研修
- 冬:避難訓練の振り返りと次年度計画
というように、園の年間行事や訓練計画に合わせて組み立てることができます。
Step 4 実施して記録する
防災対策は、実施した記録を残すことが重要です。
- 研修の実施記録
- 避難訓練の記録
- 購入物品の記録
- 写真
- 参加者名簿
- 振り返りメモ
- 次回への改善点
こうした記録は、実績報告だけでなく、安全計画の運用や次年度の改善にも役立ちます。
Step 5 実績報告につなげる
加算を活用した取組は、実績報告につなげる必要があります。
そのため、年度末になってから慌てて整理するのではなく、実施するたびに記録を残しておくことが大切です。

保育士さんや保護者の方へ
この記事を読んでいる方の中には、加算の申請を直接行う立場ではない保育士さんや、保護者の方もいるかもしれません。
その場合でも、制度を知ることには意味があります。
「この加算を使って、防災研修や避難訓練を見直せるかもしれません」
「備品だけでなく、職員の研修や訓練にも活用できる可能性があるようです」
「安全計画や訓練記録とあわせて考えるとよさそうです」
このように、園長先生や主任の先生に共有することで、園の防災対策を見直すきっかけになることがあります。
子どもを守る防災対策は、園だけでなく、職員、保護者、地域が一緒に考えていくことが大切です。
ファーストレスキューでも相談できます
施設機能強化推進費加算は、防災用品の購入だけでなく、防災教育、避難訓練、避難誘導体制の充実、記録や振り返りの仕組みづくりにも関係する加算です。
ファーストレスキューでは、保育園・こども園向けに、防災講座、避難訓練支援、防災対策の見直しを行っています。
たとえば、
- 職員向けの防災研修を行いたい
- 避難訓練を実際の災害に即した内容にしたい
- 子どもだけでなく保育士も守れる訓練にしたい
- 備品整備と研修・訓練をセットで考えたい
- 園の状況に合わせて防災対策を整理したい
このような場合は、必要に応じてご相談ください。
ただし、施設機能強化推進費加算の対象となるかどうかは、最終的には自治体の判断になります。
ファーストレスキューのサービスを活用する場合も、申請前に自治体へ確認していただくことをおすすめします。
具体的な使い方は次の記事で解説します
この記事では、施設機能強化推進費加算の基本的な考え方、令和8年度の見直し、対象となる取組や経費を整理しました。
次の記事では、より具体的に、
- 防災備品・職員研修
- 避難訓練の組み合わせ方対象になりやすいもの・なりにくいもの
- 園の状況別の使い方の優先順位
- 自治体に確認するときの伝え方
を、解説します。

まとめ
施設機能強化推進費加算は、保育園・認定こども園などが、防災対策を進めるために活用できる公定価格上の加算です。
令和8年度の見直しでは、複数実施要件の廃止、対象施設の拡大、単価の見直しが行われ、保育所・幼稚園・認定こども園は20万円、その他事業所は10万円と整理されています。
対象となる取組は、防災用品の購入だけではありません。
職員への防災教育、避難訓練、地域との連携、避難具の整備、避難誘導体制の充実など、園の防災体制を総合的に整えるための取組が対象になります。
大切なのは、加算を「何かを買うためのお金」としてだけ見るのではなく、子どもと保育士を守る防災体制を整える機会として活用することです。
防災備品を整える。
職員が学ぶ。
訓練で動いて確認する。
記録し、振り返り、次の改善につなげる。
この流れをつくることで、施設機能強化推進費加算は、園の防災対策を実際に動ける形へ近づけるきっかけになります。
参考資料
- こども家庭庁「令和8年度 公定価格・基準等の見直し事項」
- こども家庭庁「特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について」
- こども家庭庁「公定価格全般FAQ 第30版」
- 大阪市「企業主導型保育事業について」
※この記事は、制度内容を分かりやすく整理するために作成したものです。実際の対象経費、加算額、申請手続きは自治体によって異なる場合があります。申請を検討される際は、必ず施設所在地の市区町村の担当窓口にご確認ください。

