「施設機能強化推進費加算の20万円、今年は何に使えばいいのだろう」
保育園や認定こども園で、防災用品の購入、防災研修、避難訓練の見直しを考えるとき、こうした悩みが出てくることがあります。
非常食を買い足す。
保存水を入れ替える。
ヘルメットや防災頭巾を整える。
簡易トイレやライトを準備する。
もちろん、どれも大切な備えです。
ただ、毎年同じように備品だけを買っていると、次のような疑問が残ることもあります。
「備品はあるけれど、本当に災害時に使えるだろうか」
「避難訓練はしているけれど、毎回同じ流れになっていないだろうか」
「職員が火災・地震・水害の場面で、状況に合わせて動けるだろうか」
施設機能強化推進費加算は、防災用品を買うためだけに考えるものではありません。
防災備品を整えること。
職員が防災を学ぶこと。
避難訓練で実際に動いて確認すること。
訓練後に振り返り、次の改善につなげること。
こうした流れを作ることで、20万円は「物を買う費用」から「園の防災力を高める費用」へ変わります。
この記事では、施設機能強化推進費加算の20万円を、保育園の防災対策にどう活かせるのかを具体的に整理します。
制度の基本や対象施設については、前の記事で詳しく解説しています。
関連記事:
施設機能強化推進費加算とは?保育園の防災対策に使える20万円の加算を解説
※実際の対象経費や申請手続きは自治体によって異なる場合があります。申請を検討する際は、必ず施設所在地の自治体に確認してください。
20万円は「備品購入だけ」で考えない
施設機能強化推進費加算というと、非常食、保存水、ヘルメット、簡易トイレなど、防災備品を買うためのお金というイメージが強いかもしれません。
もちろん、備品整備は大切です。
しかし、保育園の防災対策は、物をそろえただけでは完成しません。
防災用品がどこにあるのか。
誰が持ち出すのか。
どのタイミングで使うのか。
0歳児・1歳児をどう避難させるのか。
保育士自身の安全をどう守るのか。
避難後に、保護者への連絡や引き渡しをどう行うのか。
こうしたことまで確認して、初めて備品が実際の防災対策として機能します。
そのため、20万円の使い方を考えるときは、次の3つに分けて整理すると分かりやすくなります。
- 防災備品を整える
- 職員の防災教育に使う
- 避難訓練と振り返りを充実させる

活用例1:まずは防災備品を整える
一番分かりやすい使い方は、防災備品の整備です。
たとえば、次のようなものが考えられます。
- 非常食・保存水
- 簡易トイレ・凝固剤
- ヘルメット・防災頭巾
- ライト・ラジオ
- 避難車・担架
- 誘導ロープ・拡声器
- おんぶひも・抱っこひも
- トランシーバー
- 防災倉庫・防災棚
まだ防災備品が十分にそろっていない園では、まず備品整備を優先するのは自然な流れです。
ただし、ここで大切なのは、買ったあとに実際に使ってみることです。
たとえば、避難車は、購入してから「思ったより重い」「門扉や段差で使いにくい」「保管場所から出すのに時間がかかる」と気づくことがあります。
誘導ロープも、子どもが握りやすい太さか、年齢に合っているか、避難経路で本当に使いやすいかは、実際に使ってみないと分かりません。
防災備品は、そろえることと、訓練で使って確かめることをセットで考える必要があります。
活用例2:職員の防災教育に使う
実際の災害が起きたとき、最初に動くのは職員です。
火災が起きたとき、誰が通報するのか。
初期消火をするのか、避難を優先するのか。
地震のあと、園庭へ出るのか、室内で安全を確保するのか。
水害のおそれがあるとき、どの時点で判断するのか。
これらは、マニュアルを置いているだけでは身につきません。
職員向けの防災教育では、たとえば次のようなテーマが考えられます。
- 火災時の初期対応
- 地震発生時の職員の動き
- 午睡中・給食中・園庭遊び中の対応
- 0歳児・1歳児クラスの避難方法
- 配慮が必要な子どもの避難
- 職員同士の役割分担
- 災害時の声かけ
- 保護者対応の流れ
保育園の避難訓練を見ていると、訓練中の保育士さんはとても落ち着いて、きれいに動けることが多いです。
しかし、実際の災害では、音、煙、揺れ、子どもの泣き声、職員の不足、保護者対応などが同時に起こる可能性があります。
子どもだけでなく、保育士自身も守る。
保育士が安全に動けるから、子どもを守る体制も維持できます。
防災教育は、知識を増やすためだけではなく、園の状況に合わせて、職員が安全に、迷わず動けるようにするために行うものです。
活用例3:避難訓練と振り返りを充実させる
保育園では、毎月避難訓練を行っているはずです。
基本の流れを繰り返すことには、大きな意味があります。
子どもたちが避難に慣れること、職員が役割を確認することは、とても大切です。
一方で、毎回同じ出火場所、同じ避難経路、同じ時間帯の訓練だけになっていると、実際の災害に対応しにくい場合があります。
たとえば、次のような状況です。
- 出火場所がいつもと違う
- 正面玄関が使えない
- 園庭へ避難できない
- 午睡中に地震が起きる
- 職員が少ない時間帯に起きる
- 雨や猛暑で屋外避難が難しい
- 避難車や誘導ロープがすぐ使えない
こうした状況を少しずつ訓練に取り入れることで、避難訓練はより実践的になります。
また、訓練後の振り返りも重要です。
- どこで時間がかかったか
- 声かけは子どもに伝わったか
- 備品はすぐ取り出せたか
- 子どもや保育士に無理な動きはなかったか
- 次回見直したい点は何か
訓練を実施して、振り返って、改善する。
この流れを作ることで、避難訓練は「毎月やるもの」から「園の安全を高めるもの」へ変わります。

20万円の使い方は、園の状況で変わる
施設機能強化推進費加算の20万円は、「全額を備品に使う」「全額を研修に使う」と一つに決める必要はありません。
大切なのは、その年の園にとって、何を優先すべきかを見極めることです。
| 園の状況 | 使い方の考え方 |
|---|---|
| 備品が不足している | まずは非常食・保存水・簡易トイレ・避難用品などを整える |
| 備品はあるが使ったことがない | 備品を使う訓練や職員研修と組み合わせる |
| 毎月訓練はしているが同じ流れになっている | 避難訓練の見直しや振り返りの仕組みに使う |
| 新人職員が増えた | 基本的な防災教育や役割分担の確認に使う |
| 0歳児・1歳児が多い | 避難車・おんぶひも・職員配置を含めて見直す |
| 水害リスクがある | 垂直避難、情報収集、引き渡し判断の確認に使う |
同じ20万円でも、園の状況によって優先順位は変わります。
毎年同じように備品を買い足すのではなく、
「今年、自園の防災対策を一歩進めるなら、どこに使うべきか」
という視点で考えることが大切です。
使い方のシミュレーション例
ここでは、20万円の使い方をいくつかのパターンで考えてみます。
実際の金額は、購入する物品、研修内容、依頼先、自治体の判断によって変わります。あくまで考え方の例として見てください。
パターン1:備品整備を中心にする園
まだ防災備品が十分にそろっていない園では、まず基本的な備品を整えることが優先です。
| 使い方 | 考え方 |
|---|---|
| 非常食・保存水 | 園児数・職員数に合わせて不足分を補う |
| 簡易トイレ・凝固剤 | 災害時のトイレ対策を整える |
| ヘルメット・防災頭巾 | 年齢や人数に合わせて確認する |
| ライト・ラジオ | 停電時の情報収集や安全確保に備える |
| 避難用品 | 誘導ロープ、拡声器、避難車などを確認する |
この場合も、購入後には必ず保管場所、持ち出し担当、使い方を確認しておく必要があります。
パターン2:備品+職員研修を組み合わせる園
ある程度備品がそろっている園では、職員研修と組み合わせる使い方が有効です。
| 使い方 | 考え方 |
|---|---|
| 不足備品の補充 | 古くなったもの、足りないものを整える |
| 職員向け防災研修 | 火災・地震・水害時の判断を確認する |
| 避難用品の使い方確認 | 避難車、誘導ロープ、トランシーバーなどを実際に使う |
| 訓練後の振り返り | 課題を記録し、次回改善につなげる |
備品を買うだけでなく、職員が使える状態にすることで、実際の災害時に役立ちやすくなります。
パターン3:避難訓練の見直しを中心にする園
毎月避難訓練を行っていても、内容が固定化している園では、訓練の見直しに使う考え方もあります。
| 使い方 | 考え方 |
|---|---|
| 訓練シナリオの見直し | 出火場所、時間帯、天候、職員数などを変えて確認する |
| 外部講評 | 元消防士など外部の視点で課題を確認する |
| 振り返りシート作成 | 訓練後の気づきを残す |
| 次回訓練計画 | 課題を次の訓練に反映する |
避難訓練は、実施すること自体が目的ではありません。
園の状況に合わせて、少しずつ改善していくことが大切です。

対象になるか迷う場合は、自治体確認へ
ここまで活用例を整理しましたが、実際に対象になるかどうかは、自治体への確認が必要です。
同じ物品やサービスでも、
防災対策として必要なものなのか。
通常保育や一般業務として必要なものなのか。
防災教育や避難誘導体制の充実に関係するのか。
によって、判断が変わることがあります。
たとえば、防災研修、講師謝礼、避難訓練の外部支援、委託費として検討できるかどうかは、事前に整理して自治体へ確認することが重要です。
この点については、次の記事で詳しく整理する予定です。
【関連記事】
施設機能強化推進費加算は防災研修や避難訓練に使える?講師謝礼・委託費を自治体に確認するポイント
20万円を活かすための5ステップ
施設機能強化推進費加算を活用するときは、次の流れで考えると整理しやすくなります。
- 自治体に確認する
- 園の現状を棚卸しする
- 年間の防災計画に組み込む
- 実施して記録を残す
- 実績報告につなげる
特に大切なのは、実施して終わりにしないことです。
防災備品を購入したら、保管場所と使い方を確認する。
職員研修を行ったら、参加者や内容を記録する。
避難訓練を見直したら、気づいたことを次回の訓練に反映する。
こうした記録は、実績報告だけでなく、園の防災対策を継続して整えるためにも役立ちます。

「うちの園では何に使うべきか」と感じたら
ここまで読んで、
「考え方は分かったけれど、自分の園では何から始めればいいのか分からない」
と感じる方もいるかもしれません。
それは自然なことです。
園によって、子どもの年齢構成、職員数、建物の構造、避難先までの距離、地域の災害リスクは違います。
だからこそ、20万円の使い方も一律ではありません。
ファーストレスキューでは、保育園・こども園向けに、防災研修、避難訓練支援、防災対策の見直しを行っています。
たとえば、次のような相談に対応できます。
- 備品はあるが、訓練で使えているか不安
- 毎月の避難訓練を、実際の災害に近づけたい
- 0歳児・1歳児の避難方法を見直したい
- 子どもだけでなく、保育士自身も守れる訓練にしたい
- 防災研修と避難訓練をセットで考えたい
- 自治体に確認する前に、使い道を整理したい
施設機能強化推進費加算の対象になるかどうかは、最終的には自治体の判断になります。
ただ、自治体へ確認する前に、研修内容、訓練内容、備品整備、見積の説明を整理しておくことで、相談は進めやすくなります。
園の防災対策を、備品購入だけで終わらせず、実際に動ける形へつなげたい場合はご相談ください。
まとめ
施設機能強化推進費加算の20万円は、防災備品を購入するためだけに考えるものではありません。
もちろん、非常食、保存水、簡易トイレ、ヘルメット、避難用品などを整えることは大切です。
ただ、それだけでなく、
- 職員が防災を学ぶ
- 避難訓練で実際に使って確認する
- 訓練後に振り返る
- 次の改善につなげる
という流れまで考えることで、20万円の価値は大きく変わります。
大切なのは、「何を買うか」だけで考えないことです。
今の園に足りていないものは何か。
今年、強くしたい防災対策は何か。
備品だけでなく、人の動きや仕組みまで整えられているか。
この視点で考えることで、施設機能強化推進費加算は、園の防災対策を一歩前に進めるきっかけになります。
制度の基本や対象施設を確認したい方は、前の記事をご覧ください。
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施設機能強化推進費加算とは?保育園の防災対策に使える20万円の加算を解説
防災研修や避難訓練、講師謝礼、委託費として検討できるかについては、次の記事で詳しく整理する予定です。
施設機能強化推進費加算は防災研修や避難訓練に使える?講師謝礼・委託費を自治体に確認するポイント
参考資料
- こども家庭庁「令和8年度 公定価格・基準等の見直し事項」
- 川崎市「施設機能強化推進費加算の対象物品について」
※この記事は、制度内容を分かりやすく整理するために作成したものです。実際の対象経費、加算額、申請手続きは自治体によって異なる場合があります。申請を検討される際は、必ず施設所在地の市区町村の担当窓口に確認してください。

