防災用品の購入を検討する前に確認したいこと|見積もり・必要量・選び方を元消防士が解説

防災用品の購入を検討し始めたとき、こんなふうに思ったことはありませんか?

  • 何をそろえればいいのか分からない
  • 人数分の数字をただ並べていいのか不安
  • 既製の防災セットだけで本当に足りるのか判断できない
  • 見積書を取ったけれど、内容が妥当なのか分からない

防災用品は、品目を埋めれば終わりではありません。
誰を守るのか、どこで、どのくらいの時間を過ごす想定なのか。
ここが整理できていないまま購入や見積もりに進むと、「買ったけれど使えない」「数はあるけど、肝心な物が足りない」という結果になりがちです。

災害対応経験からお伝えすると、現場で本当に役に立つのは、量もですが、それ以上に「使える状態で、必要な場所にあるか」です。

この記事では、防災用品の購入や見積もりを検討する前に確認しておきたい考え方を、現場の視点から整理します。

目次

防災用品の購入・見積もりでよくある悩み

ご相談をいただく際、最初によく聞くのが次のような声です。

  • 防災用品の種類が多すぎて、何を選んでいいか分からない
  • 水や食料、トイレが何人分・何日分必要か、社内で意見が割れている
  • ネット通販の防災セットを買ったが、これで足りているのか不安
  • 会社・園・自治会で必要なものが違う気がするが、整理しきれない
  • 見積書は取れたが、金額の妥当性が判断できない
  • 予算が限られていて、優先順位をつけたい

どれも自然な悩みです。

防災用品を実際どういう場面で使うか想像するのが難しく、「何が正解か」が見えにくいからです。

防災対策の購入や見積もりで大切なのは、最初から商品を選ぶことではなく、「誰を、どの状況で守るための備えなのか」を整理することです。 

この順番を逆にすると、見積書は安く見えても、いざという時に使えないという事態が起きます。

実際にあった相談の話をします。ある企業から「ダンボールベッドを購入したい」とご相談がありました。

そこで「毛布はすでにありますか?」と聞くと、ありません。 「ダンボールベッドはどこで使う予定ですか?」と聞いても、答えられない。 「置く場所はありますか?」と聞いても、答えられない。 「誰が使う予定ですか?」と聞いても、答えられない。

これは特別な話ではなく、同じような相談を何度も受けてきました。

「テレビで見た」「補助金で買える」といったきっかけで品目が先に決まり、使い方は後回しになる…というパターンです。

そこまでリアルに考えるのは、災害経験のない方にとって本当に難しいことなのです。

防災用品は「物」ではなく「使う場面」から考える

同じ「懐中電灯」でも、停電時に夜間の点呼で使うのか、避難経路の足元を照らすのか、屋外への移動中に使うのかで、必要な数も置き場所も変わります。

防災用品は、品名で選ぶのではなく、使う場面から逆算して選ぶものです。

想定しておきたい代表的な場面は次の通りです。

  • 地震で建物内にとどまる場合 ─ 余震対応、ガラス飛散、停電・断水
  • 火災で屋外へ避難する場合 ─ 煙対策、避難経路、人員確認
  • 水害で早めの移動が必要な場合 ─ 浸水前の判断、移動手段、垂直避難
  • 停電・断水で施設内に残る場合 ─ 明かり、トイレ、情報、保温・暑さ対策
  • 保護者の迎えや従業員の帰宅困難が発生する場合 ─ 待機中の食料・水・通信

よく聞くのは、「懐中電灯はある。けれど夜間にどこにあるか分からない」「電池が液漏れしていて使えない」というケースです。物があることと、使える状態にあることは違います。

購入を検討する前に、まずどの場面で、誰が、どう使うかをイメージしてみてください。特に大きな災害があってから一度も見直していない、というケースが多いのが現状です。

購入・見積もりの前に確認したい5つの項目

商品を比較する前に、この5つを整理しておくと、見積書の判断がぐっと楽になります。

1. 守る対象は誰か

人数だけでなく、属性を確認します。

  • 職員・従業員
  • 園児・児童
  • 来客・外部業者
  • 地域住民
  • 高齢者、乳幼児、妊産婦
  • 持病のある方、車いす利用者などの要配慮者

要配慮者が含まれる場合、一般的な備蓄品だけではカバーできません。アレルギー対応食、ミルク、おむつ、医療的ケアの備品など、対象者に合わせて品目が増えます。

2. 何日分・何時間分を想定するか

飲料用・調理用の水は、1人あたり1日3L、最低3日分(計9L)が一つの目安とされています。
東京都の帰宅困難者対策でも、事業者に対して従業員向けに3日分の水・食料等の備蓄が示されています。

ただし、これはあくまで基本目安です。
保育園は引き渡しまで、企業では帰宅困難者対策として施設内待機を想定するなど、施設によって「何日分」の意味が変わります

さらに、子どもが多いのか大人が多いのか、夏なのか冬なのかでも必要量は変わります。
特に夏場の水不足は、近年の気温上昇を考えるとかなり危険です。脱水・熱中症のリスクが平時より一気に上がります。

3. 施設内にとどまるのか、避難するのか

  • 在宅避難・施設内待機を基本にするか
  • 避難所への移動を前提にするか
  • 園庭・駐車場への一時避難までを想定するか
  • 上階避難(垂直避難)が必要な立地か
  • 保護者・家族への引き渡しまで待機するのか

ここが決まらないと、備蓄を「持ち出し用」を多めにするのか、「居残り用」を多めにすべきかが定まりません。

4. 置き場所と取り出しやすさは適切か

よくあるのが、「倉庫の奥に積まれて取り出せない」「鍵を持つ人が不在で開かない」という状態です。次の点を確認してください。

  • 倉庫の奥や高い棚に置いていないか
  • 夜間・休日でも取り出せるか
  • 誰でも場所が分かるよう周知されているか
  • 浸水しやすい1階・地下に集中していないか
  • フロア・建物ごとに分散配置できているか

5. 訓練で実際に使えるか確認しているか

簡易トイレは「使い方を読んだことがある」と「使ったことがある」では、緊急時の動きがまったく違います。発電機もそうです。年に一度、訓練の中で実際に開封し、使ってみることをおすすめします。

防災用品は、購入して終わりではなく、避難訓練や防災講座の中で「どこにあるか・誰が持ち出すか・実際に使えるか」を確認することで、はじめて備えが行動につながります。

さらに、どういう場面で使えるのかまで考えて試してみてください。

特に女性の場合、トイレが「使える」だけでは足りないことに気づくはずです。目隠し・着替え・生理用品まで含めて考える必要があります。

防災用品・備蓄品の基本項目

まず確認したい基本項目を、分類ごとに整理しました。
詳細な品目は施設ごとに異なるため、ここでは「購入・見積もりの前に確認したいポイント」に絞っています。

分類主な備蓄品購入前の確認ポイント
水・食料保存水、非常食、アレルギー対応食人数・日数・対象者の属性を確認
トイレ簡易トイレ、処理袋、凝固剤断水時の1日の使用回数を想定(1人5回程度)
明かり懐中電灯、ランタン、ヘッドライト場所ごとの配置・電池の予備を確認
情報・連絡ラジオ、モバイルバッテリー、乾電池充電・電池交換の管理も含めて考える
衛生用品手袋、消毒、ウェットシート、マスク感染症・嘔吐処理用も想定
保温・暑さ対策毛布、保温シート、冷却用品季節と施設環境(空調停止時)に合わせる
救急用品救急セット、包帯、ガーゼ等応急対応用として備える

必要な品目は対象施設によって大きく変わります。保育園では乳幼児用品や引き渡し対応、企業では帰宅困難者対応、自治会では地域住民への配布や避難所運営などを併せて考える必要があります。

保育園・企業・自治会では必要な備えが変わる

同じ「防災備蓄」でも、対象施設によって発想がまったく違います。ここでは概要を整理し、詳細はそれぞれの記事でご案内します。

保育園・こども園の場合

  • 園児だけでなく、職員分も忘れない
  • 乳児・低年齢児には専用の備蓄が必要(ミルク・離乳食・おむつ)
  • アレルギー対応食をクラスごとに分けて管理
  • 引き渡しまでの数時間〜半日の待機を想定
  • 嘔吐処理セットや感染症対策を含める
  • 子どもと保育士の両方を守る視点が欠かせない

企業・店舗の場合

  • 従業員数だけでなく、来客・外部業者も含めて算出
  • 帰宅困難者対応として3日分の備蓄が求められる
  • 夜間勤務・休日勤務がある場合は別途想定
  • フロア・拠点ごとに分散配置
  • 社内稟議用に、根拠資料が揃った見積書が必要

東京都の帰宅困難者対策では、事業者に対して従業員の一斉帰宅抑制と、施設内待機のための3日分の備蓄が求められています。

自治会・町内会の場合

  • 全住民分を自治会で抱えるのか、各家庭の在宅備蓄を支援するのか
  • 備蓄は「配布用」か「避難所運営用」かで考え方が変わる
  • 高齢者・子ども・要配慮者の名簿と備えを連動させる
  • 防災イベントを通じた啓発と組み合わせる
  • 補助金・助成金の活用余地もある

防災用品の購入・見積もりで注意したいこと

ご相談を受ける中で、「もったいなかった」と感じる買い方には共通点があります。

  • 安いセットだけで選ぶ ─ 中身が施設の実情に合っていないことが多い
  • 「主役」だけ買って「脇役」を忘れる ─ ダンボールベッドだけ買って毛布がない、簡易トイレだけ買って凝固剤や目隠しがない。防災用品はセットで初めて機能します
  • 人数分だけで機械的に選ぶ ─ 来客・要配慮者・夜勤者などが抜ける
  • 置き場所を考えずに買う ─ 倉庫の奥に積まれて忘れられる
  • 消費期限・交換時期を管理していない ─ いざ開けたら期限切れ
  • 訓練で一度も使っていない ─ 緊急時に使い方が分からない
  • 施設の災害リスクを反映していない ─ 水害リスクが高いのに浸水対策がない

防災用品の見積もりは、金額だけで比較すると判断を誤りやすくなります。
大切なのは、必要な場面で使える内容になっているか、施設の人数や災害リスクに合っているかです。

予算の都合はもちろんあると思いますが、迷ったら多めにしておく方が災害時には安全です。
そもそも「想定」というのは少なめに見積もりがちで、実際の被害規模はそれを上回ることが多いからです。

防災用品だけでなく、避難訓練・防災講座と合わせて考える

備蓄品は、使い方を知らなければ活かしきれません。
実際の災害現場では、「物はあったのに、誰が持ち出すか決まっていなかった」「鍵を開けられる人がその場にいなかった」という理由で、備蓄が機能しないケースもあります。

備えを「行動」につなげるために、次の3つを組み合わせて考えてみてください。

  1. 避難訓練 ─ 持ち出し・配置・役割分担を体で覚える
  2. 防災講座 ─ 職員・従業員・地域住民の理解を底上げする
  3. 備蓄品の見直し ─ 訓練後の振り返りで、必要な物・不足している物を洗い出す

災害経験が少ない、またはない方にとって、想像だけで準備することは難しいものです。

ファーストレスキューでは、防災用品をそろえることだけでなく、実際の災害に即した避難訓練や防災講座と合わせて「使える備え」につなげることを大切にしています。

なぜここまで訓練と講座にこだわるのか。
それは、防災を「自分ごと」にしてもらうためです。防災用品を使うためには、まず生き延びることが大事です。 
そのための知識と行動を身につけていただくことが、私たちの一番の願いです。

防災対策は
ファーストレスキューにおまかせください

ここでは伝えきれない、施設・対象者に合わせた防災対策があります。

防災対策は、建物のつくり、年齢、体制、地域の災害リスクによって必要な対策・備えが変わります。

ファーストレスキューでは、それぞれの状況に合わせて、地震・火災・水害などに備える防災講座や、実際の災害に即した避難訓練支援を行っています。

その対象に合った講座内容のご提案、避難訓練後の講評、改善点の整理まで含めて支援します。

対象に合った防災対策を、負担を抑えながら具体的に進めたい方へ。
無料相談をご希望の方は、以下よりお問い合わせください。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 防災用品の購入を検討する前に何を決めればよいですか?

 A. 守る対象、想定日数、施設内にとどまるか避難するか、必要な備蓄品、保管場所、管理方法の6点を整理しておくと、購入する商品や見積もり内容を判断しやすくなります。

Q. 防災備蓄は何日分必要ですか?

 A. 一般的には最低3日分が目安です。水は飲料用・調理用として1人1日3L、3日分で9Lが基本とされています。ただし、施設の種類や立地によって必要日数は変わります。

Q. 防災用品は人数分そろえれば十分ですか?

A. 人数分だけでは不十分なことが多いです。施設の種類、利用者の年齢、滞在時間、災害リスク、置き場所、使う人の役割まで考慮する必要があります。またその施設が避難所化するリスクも考える必要があります。

Q. 保育園と企業では備蓄品は違いますか?

A. 大きく違います。保育園では園児・職員・乳児用品・引き渡し・衛生対応が中心になり、企業では従業員・来客・帰宅困難者・フロアごとの分散配置などが重要になります。

Q. 防災用品の選定だけ相談できますか?

A. はい、選定のみのご相談も承ります。あわせて、避難訓練や防災講座と組み合わせた備え方もご提案できます。

Q. 既製の防災セットを買ってしまった後でも相談できますか?

A. もちろん可能です。お手持ちの備蓄を確認したうえで、不足している部分や見直しポイントをご提案します。買い直しではなく、活かす方向で整理することが多いです。

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