保育園や認定こども園では、安全計画の策定が求められています。
しかし、実際に安全計画を作成すると、
「また新しい書類が増えた」
「計画は作ったが、その後どうすればよいか分からない」
「避難訓練や安全点検は以前から行っているのに、さらに何を増やすのか」
と感じることもあるのではないでしょうか。
保育現場には、日々の保育、保護者対応、行事、記録、職員間の調整など、多くの仕事があります。
子どもの安全が重要だからといって、様式や記録を際限なく増やせばよいわけではありません。
安全計画は、新しい安全業務を次々に追加するための書類ではありません。
園ですでに行っている、
- 避難訓練
- 施設や遊具の安全点検
- 職員研修
- ヒヤリハットの共有
- マニュアルの確認
- 園児への安全指導
- 保護者への周知
などを年間で整理し、それぞれを次の改善へつなげるための土台です。
安全計画があることと、園の安全管理が実際に機能していることは同じではありません。
大切なのは、計画を作った後に、園内でどのように動かすかです。

すでに必要な取組として行うのであれば、義務だからやるとせず、その時間を、子どもの命と職員の安全に直結する形で活かす。安全計画は、そのために使うものです。
この記事では、安全計画の様式を一から作る方法ではなく、今ある点検、研修、避難訓練、記録をつなぎ、園の負担を必要以上に増やさずに運用する方法を解説します。
安全計画は、防災だけの計画ではない
安全計画には、火災や地震への対応だけでなく、施設・設備の安全点検、職員研修、園児への安全指導、保護者への周知、事故やヒヤリハットの再発防止など、園児の安全に関わる幅広い取組が含まれます。
保育所には、安全計画の策定と計画に基づく取組、職員への周知、定期的な研修・訓練、保護者への周知、定期的な見直しが求められています。
安全計画の中に、午睡、食事、園外活動、送迎、不審者、災害などの詳しい対応手順をすべて書くわけではありません。
安全計画は、
- いつ点検するのか
- いつ職員研修を行うのか
- どのような訓練を行うのか
- いつマニュアルを見直すのか
- 誰に何を共有するのか
- 実施結果をいつ振り返るのか
を年間で整理するものです。
詳しい対応方法は、それぞれのマニュアルや訓練計画、点検表などで定めます。
分かりやすく整理すると、次のようになります。
- 安全計画:今年度、いつ何を行うか
- マニュアル:その場面で、どのように対応するか
- 実施記録:実際に何を行い、何が分かったか
- 見直し:次に何を変えるか


安全計画が負担に感じられやすい理由
安全計画の必要性を説明されても、園側が負担を感じるのは不自然なことではありません。
保育園では、すでに毎月の避難訓練、安全点検、職員研修、事故報告、ヒヤリハット、保護者への連絡などを行っています。
そのうえで、新しい安全計画の様式が加われば、
- 同じ内容を別の書類にも書く
- すでにある年間予定を転記する
- 実施記録を複数の場所に残す
- 誰が確認するのか分からない
- 年度末にまとめて整理する
といった重複が起こりやすくなります。
この状態では、安全計画が子どもの安全を高めるものではなく、監査や書類確認のための作業として受け止められてしまいます。
安全計画を運用するときに、まず行うべきことは、新しい様式や記録を増やすことではありません。
現在、園で何を行っているかを整理することです。
まず、園ですでに行っている取組を整理する
安全計画のために、すべてをゼロから始める必要はありません。
多くの園では、すでに安全計画に必要な取組の多くを実施しています。
| 園ですでに行っていること | 安全計画上の位置づけ |
|---|---|
| 毎月の火災・地震訓練 | 避難・消火等の訓練 |
| 園舎、遊具、門扉の確認 | 施設・設備の安全点検 |
| 救命講習や事故防止研修 | 職員研修 |
| ヒヤリハットの報告 | 事故の予防・再発防止 |
| 園児への交通安全指導 | 園児への安全指導 |
| 園だよりや入園説明 | 保護者への周知 |
| 午睡、水遊び、散歩等の手順書 | 安全管理マニュアル |
| 防災備蓄の確認 | 災害への備え |
まずは、現在行っている取組を安全計画の中へ当てはめます。
そのうえで、
- 実施時期が決まっていない
- 担当者が曖昧
- 一部の職員しか知らない
- 実施後の振り返りがない
- 同じ課題が繰り返されている
部分がないかを確認します。
すでにできていることまで作り直す必要はありません。
安全計画を機に、園の取組を整理し、抜けている部分や止まっている部分だけを見直してください。


安全計画で大切なのは、取組同士をつなぐこと
安全計画を運用する目的は、年間予定表の項目を予定どおり消化することではありません。
点検、研修、訓練、ヒヤリハットなどから得られた情報を、別の安全対策へつなげることが重要です。
ヒヤリハットを安全点検へつなげる
例えば、門扉の施錠に関するヒヤリハットが続いたとします。
ヒヤリハットを職員会議で共有するだけで終わらせず、
- 施錠方法を確認する
- 誰が最終確認するか決める
- 安全点検の項目へ追加する
- 一定期間後に改善できたか確認する
ところまでつなげるようにしましょう。
避難訓練をマニュアルと次の訓練へつなげる
避難訓練で、園児と職員の人数確認に時間がかかった場合は、
- 報告先や集計方法を見直す
- 避難時の役割表やマニュアルを修正する
- 職員へ変更内容を共有する
- 次回の訓練で新しい方法を確かめる
という流れにしてください。
避難訓練は、実施して記録を残すだけでは十分ではありません。
訓練記録から次の訓練へつなげる考え方については、次の記事でも詳しく解説しています。
職員研修を日常の保育へつなげる
誤嚥や救命処置について職員研修を行っても、受講記録を残すだけでは、現場が変わったか分かりません。
研修後に、
- 食事中の職員配置は適切か
- 緊急時の連絡方法は共有されているか
- 必要な資機材をすぐに使えるか
- 非常勤職員にも内容が伝わっているか
を確認するようにしてください。。
知識を得たことと、実際に対応できることは同じではありません。
研修内容を日常の配置、手順、点検、訓練へ戻す必要があります。


すべてを一度に完璧にする必要はない
安全計画には多くの項目があります。
そのすべてを、同じ時期に、同じ深さで見直そうとすると、現場の負担が大きくなります。
安全計画を実際に動かすためには、優先順位を決めることが重要です。
まずは、次のような項目から確認してみてください。
- 最近、事故やヒヤリハットがあったこと
- 避難訓練で課題が見つかったこと
- 職員から不安の声が出ていること
- 園児や職員の状況が変わったこと
- 季節的に事故が起きやすいこと
- 園舎や周辺環境が変わったこと
例えば、同じ場所で転倒に関するヒヤリハットが続いているのであれば、全マニュアルを見直す前に、その場所の環境や動線を改善していきましょう。
避難訓練で人数確認が課題になったのであれば、まず報告方法と役割分担を直しましょう。
水遊びの時期が近いのであれば、水遊びに関する手順と職員配置を優先してください。



すべてを一度に整えるが理想ですが、今見えている危険を一つずつ減らし、継続する方が、子どもの安全につながります。
記録を増やすのではなく、必要なことを残す
安全計画を運用すると、点検記録、研修記録、避難訓練記録、ヒヤリハットなど、さまざまな記録が関係します。
しかし、同じ内容を複数の書類へ転記する必要はありません。
既存の記録を活かしながら、少なくとも次の4点が確認できる状態にしていきましょう。
1.何を実施したか
点検、研修、訓練、保護者への周知など、計画した取組を実施したか確認てください。
2.何が分かったか
実施したことで見つかった課題や、想定との違いを残すようにしましょう。
3.何を変えるか
「今後注意する」だけで終わらず、環境、手順、配置、役割、マニュアルなど、具体的に変える内容を決めてください。
4.改善できたか
対応を決めた後、本当に改善されたかを確認しましょう。
安全計画へ新しい記録欄を次々に追加するのではなく、既存の記録を参照しながら、改善状況が分かる形にすることに意味があります。


年間で回すための、無理のない確認方法
安全計画を年度初めと年度末だけに確認すると、日々の取組と離れやすくなります。
一方で、毎月安全計画全体を細かく見直すのも現実的ではありません。
次のような短い確認を、既存の職員会議や園内会議へ組み込む方法があります。
月初または実施前
その月に予定している点検、研修、訓練を確認してください。
- 今月は何を行うか
- 誰が担当するか
- 特に何を確認するか
を共有しましょう。
実施後
長い報告書を新たに作るのではなく、
- 何が分かったか
- 何を変えるか
- 誰が対応するか
を短く整理してください。
月末または職員会議
改善事項が止まっていないかを確認するようにしてください。
すべての記録を読み直す必要はありません。
対応が必要なものだけを取り上げてください。
数か月ごと
同じようなヒヤリハットが続いていないか、同じ訓練課題が繰り返されていないかを確認てください。
個別の出来事だけでなく、園全体の傾向を見ることが大切です。
年度末
一年間の取組を振り返り、翌年度の安全計画へ反映してください。
- 継続すること
- 変更すること
- 優先して確認すること
- 新たに加えること
- 不要になったこと
を整理していきましょう。


年度途中でも安全計画を見直してよい
安全計画は、年度開始前に年間の取組を整理するものです。
しかし、年度当初に決めた内容を、一年間そのまま変更してはいけないわけではありません。
安全計画は、定期的に見直し、必要に応じて変更することが求められています。
例えば、
- 散歩経路の近くで工事が始まった
- 職員配置が変わった
- 新しい園児への配慮が必要になった
- 避難訓練で通常経路が使いにくいと分かった
- 同じヒヤリハットが続いた
- 新しい遊具や設備を導入した
- 災害時の避難場所が変更された
場合は、年度末まで待たずに見直したほうがいいです。
計画どおりに実施することは大切です。
しかし、当初の計画を守ることが目的になり、現在の園の状況に合わなくなっては意味がありません。
安全計画は、園を計画へ合わせるためのものではなく、園の状況に合わせて安全対策を整理するためのものです。
園内だけでは難しい部分に、外部支援を使う方法もある
園内で点検、研修、訓練、記録、改善を継続できているのであれば、すべてを外部へ依頼する必要はありません。
一方で、運用が止まっている部分によっては、外部の専門家やツールを利用する方法もあります。
例えば、
- 職員への防災知識の共有が難しい
- 避難訓練が毎回同じ内容になっている
- 園長や主任も訓練参加者となり、全体を評価できない
- ヒヤリハット、点検、訓練記録が分散している
- 課題を見つけても改善状況を確認できない
- 園内だけでは定期的な見直しが止まる
といった場合です。
ファーストレスキューでは、安全計画全体のあらゆる専門分野を一括して扱うのではなく、安全計画を作って終わらせず、防災研修、避難訓練、日々の記録、振り返りへつなげる部分を中心に支援しています。
現在の課題に応じて、防災講座、避難訓練サポート、ほいくレスキュー、年間サポートなどから必要な部分を選べます。
すべての支援を利用することを前提にする必要はありません。
園内でできている部分はそのまま続け、負担が大きい部分や、専門的・客観的な確認が必要な部分だけを補うという考え方で十分です。
安全計画を、子どもの命を守るために使う
安全計画は、新しい仕事や記録を増やすこと自体が目的ではありません。
園ですでに行っている、
- 安全点検
- 職員研修
- 避難訓練
- ヒヤリハット
- マニュアルの確認
- 園児や保護者への周知
を年間で整理し、それぞれを次の改善へつなげるためのものです。
運用するときは、
- 今行っている取組を整理する
- 最近の事故やヒヤリハット、訓練課題から優先順位を決める
- 点検、研修、訓練を実施する
- 何が分かり、何を変えるかを残す
- 改善できたかを確かめる
- 必要に応じて安全計画やマニュアルを見直す
という流れをつくります。
すべてを一度に完璧にする必要はありません。
記録や様式を増やしすぎれば、職員が本当に考えるべき安全確認や振り返りへ使える時間が減ってしまいます。
保育現場の忙しさを無視して、安全対策を増やすだけでは継続できません。
だからこそ、今ある取組を整理し、重複する作業を減らしながら、見つかった危険を一つずつ改善することが大切です。



命を守るためにしていることがいつしか負担になり、形骸化してしまっては意味がありません。義務として安全計画を作るだけで終わらせず、すでに行っている点検や訓練を、子どもの命を守る次の改善へつなげる。それが、安全計画を運用する意味です。
ファーストレスキューでは、保育園・こども園の安全計画のうち、防災研修、避難訓練、日々の記録、振り返りを実際に動かす部分について相談を受けています。









