防災レベルを見極める〜「やっている防災」から「動ける防災」へ進める考え方〜

防災講座や避難訓練、備蓄の見直しをしていても、「これで本当に災害時に動けるのだろうか」と感じることがあります。

防災訓練はしている。
備蓄品も置いている。
マニュアルも作っている。

それでも、いざという時に誰がどう動くのか、どこで判断するのか、対象者に合った内容になっているのかが曖昧なままになっていることがあります。

防災がうまく進まない理由の一つは、今の段階を見極めないまま取り組みを始めてしまうことです。

防災にまだ関心が薄い人に、いきなり細かい行動ルールを伝えても届きにくい。
逆に、すでに訓練や備蓄に取り組んでいる人に、毎回同じ基礎的な内容だけを伝えて同じことを繰り返し、次の段階に進めない。

防災は、「やっているかどうか」だけでは見えません。

今どの段階にいるのか。
誰の防災レベルを上げたいのか。
次に何をできるようにしたいのか。

ここを整理することで、防災講座や避難訓練、備蓄の見直しが、より意味のあるものになります。

この記事では、防災の現在地を3段階で整理し、「やっている防災」から「動ける防災」へ進める考え方を紹介します。

目次

防災は「やっているかどうか」だけでは見えない

防災では、よく次のような確認がされています。

  • 避難訓練をしているか
  • 備蓄品を用意しているか
  • マニュアルを作っているか
  • 防災講座を受けたことがあるか
  • 避難場所を知っているか

もちろん、どれも大切です。

何もしていない状態より、訓練や備蓄、マニュアルがある状態の方が前に進んでいます。

ただし、そこで止まってしまうと、「防災をやっている」という状態で満足してしまうことがあります。

大切なのは、その取り組みが実際に命を守る動き・備えにつながっているかです。

たとえば、避難訓練を毎年していても、毎回同じ流れを確認するだけで終わっている。
備蓄品はあるけれど、誰が持ち出すのか決まっていない。
マニュアルはあるけれど、作っただけで読んだことがない。
防災講座は受けたけれど、その後の行動につながっていない。

こうした状態では、防災を「実施している」とは言えても、災害時に「命を守れる」とは言い切れません。

だからこそ、防災は「やっている・やっていない」だけでなく、今どのレベルにいるのかを見ることが大切です。

防災レベルは3段階で考えると分かりやすい

ここでいう防災レベルとは、災害時の行政の「警戒レベル」とは違います。

日頃の防災や避難訓練、備蓄、判断、運用が、今どの段階にあるのかを見極めるための考え方です。

防災レベルは、まず次の3段階で考えると整理しやすくなります。

防災レベル状態よくある状況次に必要なこと
レベル1まず知る段階防災に関心が薄い、訓練や備蓄が十分でない興味を持ってもらい、最低限の備えを始める
レベル2実施している段階訓練や備蓄はあるが、形だけになりやすい目的・対象・場面を決めて、実際に使える形にする
レベル3状況に合わせて動ける段階訓練・備蓄・役割・判断がつながっている想定外にも対応できるよう、振り返りと改善を続ける

大切なのは、どのレベルが良い・悪いという話ではありません。

まず、今どの段階にいるかを知ること。
そして、その段階に合った取り組みを選ぶこと。

これが、防災を次の段階へ進めるための第一歩です。

レベル1:まず知る段階

レベル1は、防災にまだ十分な関心が向いていない段階です。

この段階では、いきなり細かいマニュアルや高度な訓練をしても、なかなか伝わりません。

よくある状態としては、次のようなものがあります。

  • 防災に関心が薄い
  • 避難場所や備蓄をよく知らない
  • 訓練に参加しても受け身になりやすい
  • 災害時に何が起きるかイメージできていない
  • 「自分は大丈夫」と感じている
  • 防災は大事だと思うが、何から始めればよいか分からない

この段階で必要なのは、いきなり難しいことを求めることではありません。

まずは、防災を自分ごとにしてもらうことです。

たとえば、身近な災害の話を聞く。
自宅や職場、園、地域の危険を確認する。
備蓄品を実際に見てみる。
避難場所まで歩いてみる。
炊き出しを食べてみる
家族や職員、地域の人と「もし今起きたらどうするか」を話してみる。

このような小さなきっかけが、防災レベルを上げる入口になります。

レベル1では、まず関心を持ち、自分に関係があることだと感じてもらうことが大切です。防災だからって固くせず、楽しんでもらうでも構いません。大切なのは知ろうとしてもらうことです。

レベル2:実施している段階

レベル2は、防災訓練や備蓄、マニュアル作成などに取り組んでいる段階です。

多くの施設、企業、地域は、このレベルに当てはまりやすいと思います。

訓練はしている。
備蓄もある。
防災担当者もいる。
マニュアルも用意している。

これは大切なことです。

ただし、ここで確認したいのは、その取り組みが実際の場面につながっているかどうかです。

たとえば、次のような状態になっていないでしょうか。

  • 毎年同じ避難訓練をしている
  • 備蓄品を置いているが、使ったことがない
  • マニュアルはあるが、現場で確認されていない
  • 防災担当者だけが内容を把握している
  • 訓練後の振り返りが十分にできていない
  • 誰を対象にした訓練なのかが曖昧になっている

「やっている」ことと「使える」ことは違います。
せっかく貴重な時間を使っての訓練がマンネリして、意味ないなと思いながらするのはもったいないです。
災害時のことを想像する土台を作っていくことが大切で、レベル2では、訓練や備蓄を、実際の場面に近づけていくことが重要です。

誰を守るための訓練なのか。
どの災害を想定しているのか。
誰が何を持ち出すのか。
どこで判断が必要になるのか。
訓練後に何を改善するのか。

ここを少しずつ整理することで、防災は「実施している」段階から「動ける」段階へ進みやすくなります。

レベル3:状況に合わせて動ける段階

レベル3は、訓練や備蓄、役割、判断がつながっている段階です。

ただし、これは「決めたとおりに完璧に動ける」という意味ではありません。

はっきりいっておきますが、実際の災害では、訓練どおりに進無なんてことはほぼありません。

予定していた避難経路が使えない。
担当者がその場にいない。
備蓄品の場所が分からない。
通信がつながらない。
訓練に参加していない人がその場にいる。
不安で動けない人がいる。
逆に、指示を待たずに動いてしまう人もいる。

災害時は、物や建物だけでなく、人の動きも想定どおりにはいきません。

消防の現場でも、災害時に人が思ったとおりに動くなんてことはほぼありません。
落ち着いて行動できる人もいれば、不安で立ち止まる人、家族を探しに戻ろうとする人、強く訴える人、指示が届かない人もいます。

だからこそ、防災レベル3で大切なのは、訓練どおりに動くことだけではありません。

想定どおりにいかない時に、優先順位を決め直し、その場で動きを修正できることです。

たとえば、次のような状態に近づいているかを確認します。

  • 訓練の目的が明確になっている
  • 対象者に合わせて内容を変えている
  • 備蓄品を実際に使って確認している
  • 役割分担が一部の人だけに偏っていない
  • 担当者が不在でも代わりに動ける人がいる
  • 判断が必要な場面を想定している
  • 予定どおりに進まなかった時の代替行動を考えている
  • 訓練後に振り返り、次回へ改善している

レベル3は、完璧な状態ではありません。

災害時に起こる恐怖や混乱を前提にして、今できる最善の行動を選び、必要に応じて動きを変えられる状態です。

避難訓練をした後に、「避難できたかどうか」だけで終わらせない。
移動に時間がかかった理由を確認する。
点呼の方法を見直す。
備蓄品の置き場所を変える。
役割分担を修正する。
訓練に参加していない人がいた場合の対応も考える。
次回は違う時間帯や違う災害想定で試してみる。

こうした積み重ねによって、防災レベルは少しずつ上がっていきます。

レベル3は、特別なことを一度やれば到達するものではありません。
訓練して、崩れた部分に気づき、見直して、また試すことで近づいていく段階です。

対象者のレベルに合わない防災は伝わりにくい

防災講座や避難訓練がうまく伝わらない理由の一つに、対象者のレベルと内容が合っていないことがあります。

防災にまだ関心が薄い人に、いきなり細かい避難行動や備蓄管理の話をしても、難しく感じられるかもしれません。

一方で、すでに防災に関心がある人や、毎年訓練に参加している人に、毎回同じ基礎的な話だけをしても、次の段階には進みにくくなります。

大切なのは、誰に、どの段階まで進んでもらいたいのかを決めることです。

目的合う内容
興味を持ってもらう身近な話、体験、クイズ、簡単な備え
参加してもらう避難経路確認、備蓄品を見てみる、簡単な訓練
動けるようにする役割分担、判断訓練、備蓄使用、振り返り
改善する訓練後の課題整理、マニュアル・備蓄・役割の見直し

防災に興味を持ってもらいたいのか。
防災に参加してもらいたいのか。
実際に動けるようになってもらいたいのか。
すでに取り組んでいる人のレベルを上げたいのか。

ここが曖昧なままだと、講座や訓練の内容も曖昧になります。

防災レベルを見極めることは、点数をつけることではありません。
相手に合った伝え方や訓練内容を選ぶための考え方です。

子どもの頃の勉強を思い出して欲しいのですが、分からないはつまらないになりがちです。
ただ防災は点数をつけるものではありません。1人でも多くの人を守るためになので、勉強のようになってしまわないことも非常に重要です。

同じ講座や訓練でも、目的が違えば内容は変わる

防災講座や避難訓練は、同じ内容を毎回行えばよいわけではありません。

目的が変われば、内容も変わります。

たとえば、防災に関心を持ってもらうことが目的なら、難しい専門用語よりも、身近な災害や日常でできる備えを伝える方が合っています。

参加してもらうことが目的なら、聞くだけの講座よりも、実際に備蓄品を見たり、避難経路を歩いたりする方が伝わりやすくなります。

動けるようにすることが目的なら、単に避難するだけではなく、役割分担、判断、声かけ、備蓄品の持ち出し、訓練後の振り返りまで含める必要があります。

つまり、防災の内容を考えるときは、最初に「何を伝えるか」ではなく、誰をどの段階に進めたいのかを考えることが大切です。

なので対象者によっても内容を変える必要もあります。

年齢によってどの段階に進めるかも重要だからです。

保育園・企業・地域で見るべき防災レベルは違う

防災レベルは、すべての場所で同じ見方をすればよいわけではありません。

保育園、企業、地域では、守る対象も、災害時に必要な行動も違います。

保育園の場合

保育園では、子どもはもちろん保育士も守る視点が必要です。

見るポイントは、たとえば次のようなものです。

  • 避難訓練が毎回同じ流れになっていないか
  • 子どもだけでなく、保育士の判断や役割も確認しているか
  • 乳児、低年齢児、支援が必要な子への対応を考えているか
  • 引き渡し、備蓄、保護者連絡までつながっているか
  • 泣いて動けない子、戻ろうとする子がいた場合も想定しているか

保育園の防災レベルは、子どもが避難できるかだけでなく、保育士が状況に合わせて動けるかまで見る必要があります。

企業の場合

企業では、従業員はもちろん、来客や外部業者も考える必要があります。
そして被災後の営業までも考えなければいけません。

見るポイントは、たとえば次のようなものです。

  • 従業員分だけでなく、来客や外部業者も想定しているか
  • 備蓄、帰宅判断、BCPがつながっているか
  • 総務や担当者だけでなく、現場が動けるか
  • 施設内待機や一斉帰宅抑制まで考えているか
  • 予定外の来客や、勝手に帰ろうとする人への対応を考えているか

企業の防災レベルは、防災用品があるかだけでなく、災害時に事業所として判断し、従業員や来客を守れるかまで見る必要があります。

地域の場合

自治会や町内会では、役員だけが頑張る防災になっていないかを見ることが大切です。
少数の人に頼る防災は継続することができません。

見るポイントは、たとえば次のようなものです。

  • 防災に興味がない人をどう巻き込むか
  • すでに参加している人のレベルをどう上げるか
  • 安否確認や防災倉庫の使い方を確認しているか
  • 要配慮者支援や支援の優先順位まで考えているか
  • 訓練に参加していない住民が多い前提でも動けるか
  • 防災倉庫の鍵や資機材を、限られた人だけが把握する状態になっていないか

地域の防災レベルは、備蓄品の量だけではなく、住民がどこまで参加し、地域として動ける状態になっているかで見る必要があります。

防災レベルを上げるには、訓練後の振り返りが必要

防災レベルは、一度の講座や訓練で一気に上がるものではありません。

訓練して、気づいて、見直して、また試す。
この繰り返しで少しずつ上がっていきます。

避難訓練をした後に、ただ「無事に終わった」で終わらせるのではなく、次のような点を確認してみてください。

  • 何ができたか
  • 興味を持ってもらえたか
  • 次も参加しようと思ってもらえたか
  • 何に時間がかかったか
  • 誰が迷ったか
  • どこで判断が必要だったか
  • 想定どおりにいかなかったことは何か
  • 訓練に参加していない人がいた場合でも対応できるか
  • 備蓄品は使える状態だったか
  • 役割分担は機能したか
  • 次回は何を変えるか

振り返りをすると、次に上げるべき防災レベルが見えてきます。

意味を理解していない人がいれば、災害について知ってもらう。
避難に時間がかかったなら、動線や役割分担を見直す。
備蓄品を使えなかったなら、置き場所や管理方法を見直す。
判断に迷ったなら、想定場面を変えて次の訓練に入れる。
人の動きが想定と違ったなら、声かけや誘導の方法を見直す。

このように、訓練後の気づきを次の改善につなげることで、防災は少しずつ「動ける備え」に近づいていきます。

まとめ

防災は、災害経験のない人からするとやっていることのレベルが見えません。

まず知る段階なのか。
実施している段階なのか。
状況に合わせて動ける段階なのか。

今の防災レベルを見極めることで、必要な取り組みが見えやすくなります。

防災に興味を持ってもらう段階と、すでに取り組んでいる人のレベルを上げる段階では、必要な内容が違います。

また、実際の災害では、訓練どおりに進まないことがほとんどです。

物が使えない。
人が思ったように動かない。
担当者がいない。
想定していない人がその場にいる。
不安や混乱で判断が遅れる。

そうしたズレを前提にして、今できる最善の行動を選び、必要に応じて動きを変えられることが、レベル3の「状況に合わせて動ける段階」です。

保育園、企業、地域でも、見るべきポイントは変わります。

大切なのは、毎年同じことを繰り返すことではなく、今の状態に合わせて、少しずつ「動ける備え」に近づけていくことです。

防災レベルを見極めることは、点数をつけることではありません。

今の現在地を知り、次に何を上げるべきかを考えるためのものです。

防災対策は
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ここでは伝えきれない、施設・対象者に合わせた防災対策があります。

防災対策は、建物のつくり、年齢、体制、地域の災害リスクによって必要な対策・備えが変わります。

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よくあるご質問

Q. 防災レベルとは何ですか?

A. ここでいう防災レベルとは、災害時の警戒レベルではなく、日頃の防災や訓練、備蓄、判断、運用が今どの段階にあるかを見極めるための考え方です。

Q. 防災訓練をしていれば、レベルは高いと言えますか?

A. 訓練をしていることは大切ですが、それだけでレベルが高いとは限りません。訓練の目的が明確か、実際の場面に近いか、想定どおりにいかない場合も考えているか、訓練後に振り返りと改善ができているかを見る必要があります。

Q. 防災に興味がない人には何から始めればよいですか?

A. いきなり高度な訓練をするより、身近な話、簡単な体験、避難場所の確認、備蓄品を見てみることなどから始めると入りやすくなります。ちょっとはやってみようかなで最初はかまいません。

Q. 防災レベルを上げるには何が必要ですか?

A. 訓練や講座を一度で終わらせず、振り返りをして次の改善につなげることが大切です。訓練、備蓄、役割分担、判断がつながると、防災レベルは上がりやすくなります。

Q. 保育園・企業・地域で防災レベルの見方は違いますか?

A. 違います。保育園では子どもと保育士、企業では従業員と来客、地域では住民参加や要配慮者支援など、見るべきポイントが変わります。対象に合わせて防災レベルを見極めることが大切です。

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