保育園の地震対策というと、家具固定や避難経路の確認を思い浮かべる方が多いかもしれません。
もちろん、それらは大切な基本です。
ただ、乳幼児を守るためには、それだけでは足りません。
乳児は自分で身を守ることができず、幼児も突然の揺れの中で落ち着いて判断し、指示どおりに動くことはできません。
だからこそ、保育園の地震対策では、子どもの発達段階や生活場面を前提に、保育士の動き、職員間の役割分担、訓練後の振り返りまで含めて考えることが重要です。
この記事では、乳幼児を守るための保育園の地震対策の基本ポイントを整理します。
保育園の地震対策は「乳幼児の特性」を前提に考える
保育園では、年齢や発達段階によって、地震発生時にできる行動が大きく異なります。
大人の指示を理解できる子もいれば、揺れや音に驚いて泣く、動けなくなる、集まれない子もいます。
乳児は自分で身を守れない
乳児クラスでは、地震発生時に子ども自身が机の下に入ったり、安全な場所へ移動したりすることはできません。
保育士が、子どもの身体を守りながら、周囲の落下物や転倒物を避ける動きが必要になります。
確認したいポイントは次のとおりです。
- ベビーベッドや布団の周囲に、物がないか
- 棚、ロッカー、収納用品が倒れないよう固定されているか
- 危険な物の近くで午睡していないか
- 乳児を抱える、移動する、待機させる場所が職員間で共有されているか
- おんぶ紐や避難車を、すぐ使える場所に置いているか
「泣く」「抱っこを求める」「動けない」という反応は、乳児にとって自然なことです。
その前提で、職員がどう動くかを決めておく、そして物をなるべく置かないことが大切です。
大きな地震の時には物が飛んできます。なので固定をしていないことも危険です。
幼児も突然の揺れでは落ち着いて行動できない
幼児クラスでは、日頃の訓練で「先生の話を聞く」「集まる」「避難する」ことを経験していても、実際の揺れの中ではいつも通りに動けないことがあります。
特に、遊びに集中しているとき、食事中、トイレ中、戸外活動中などは、子どもがばらばらに動きやすくなります。
幼児クラスで確認したいことは、次のような内容です。
- 揺れたときに、まずどこで身を守るかを職員が把握しているか
- 子どもが集まれない場合の声かけや職員配置を決めているか
- トイレ、廊下、園庭など、保育室以外の場面も想定しているか
- 靴、帽子、防寒具など、避難時に必要な物の扱いを確認しているか
- 配慮が必要な子への支援方法を職員間で共有しているか
子どもに「できるはず」と期待しすぎず、できない場面も含めて備えることが、乳幼児を守る地震対策につながります。

地震発生時に確認したい保育園の基本対応
地震発生時は、まず子どもと職員の安全確保を優先します。
そのうえで、室内環境、避難経路、連絡手段などを確認し、避難するか、その場で待機するかを判断していきます。
揺れている間は子どもと職員の安全を守る
揺れている最中に無理に移動すると、転倒や落下物によるけがにつながることがあります。
保育室、午睡室、廊下、園庭など、場所ごとに「まず身を守る場所」を確認しておきましょう。
基本対応の例です。
- 乳児は保育士が身体を守り、落下物や窓から離れる
- 幼児は机の下や安全な壁際など、園で決めた場所へ誘導する
- 窓ガラス、棚、ピアノ、大型遊具などの近くから離れる
- 職員自身も無理な姿勢や危険な場所に入らない
子どもを守るためには、保育士自身がけがをしないことも大切です。
職員が動けなくなると、子どもの安全確保や避難誘導にも影響します。
訓練では本当に揺れることがないので、イメージをしにくい部分ですが、保育士だってケガする可能性があることは忘れてはいけません。
揺れがおさまった後は状況確認を分担する
揺れがおさまったら、子どもの人数、けがの有無、室内外の危険箇所、避難経路を確認します。
全員が同じことを確認するのではなく、役割を分けて動けるようにしておくことが重要です。
混乱しているので決めていないと動けなくなります。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 子どもの人数 | 名簿や出席状況と確認し、室内外に逃げ遅れがないか確認する |
| けが・体調 | 子どもだけでなく、職員のけがや体調も確認する |
| 室内の安全 | 棚、ロッカー、ピアノ、窓ガラス、照明、床の散乱物を確認する |
| 避難経路 | 出入口、廊下、階段、門、園庭までの経路が通れるか確認する |
| 連絡手段 | 園内連絡、保護者連絡、行政・消防等への連絡方法を確認する |
確認した内容は、園長・主任・各クラスで共有します。
災害時はいろんな情報が入ってきます。
口頭だけに頼ると抜けるので、役割表やチェックリストを用意しておく必要があります。
乳幼児を守るために日頃から整えたい対策
地震対策は、発生時の対応だけでなく、日頃の環境整備によって大きく変わります。
特に保育園では、子どもが床に座る、午睡する、遊具や棚の近くで遊ぶなど、生活の中で地震の影響を受けやすい場面があります。
家具・設備・避難経路の安全確認
園内を見直すときは、単に「固定しているか」だけでなく、「子どもの生活位置から見て危険がないか」を確認します。
- 棚、ロッカー、収納家具が固定されているか
- ピアノや大型備品が転倒・移動しないよう対策されているか
- 窓ガラスに飛散防止対策がされているか
- 高い場所に物を置いていないか
- 避難経路や出入口の前に物を置いていないか
- 園庭や玄関周辺に、倒れやすい物や落下しやすい物がないか
- 避難車を通す経路に段差、荷物、施錠の問題がないか
午睡中の布団の位置、食事中のテーブル配置、製作活動中のはさみや道具の扱いなど、日常場面ごとの確認も必要です。
地震対策としてだけでなく、子どものケガを減らすという意味でも大切なことです。
避難に必要な物をすぐ使える状態にする
地震後に避難が必要になった場合、乳幼児を連れて移動するには時間と人手がかかります。
必要な物が「ある」だけでなく、「すぐ使える」「誰が持つか分かる」状態にしておくことが大切です。
災害時は焦って行動するので、いつもなら使えるものが使えないようなこともあります。さらにいつもと違うと焦りはより大きくなってしまいます。
確認したい物品の例です。
- 避難車
- おんぶ紐、抱っこ紐
- 子どもの靴、帽子、防寒具
- クラス名簿、緊急連絡先
- 園内外の連絡手段
- 応急手当用品
- 子ども用の水、食料、ミルク、紙おむつ、着替え
- 保育士用の水、食料、衛生用品、休憩に必要な物
子ども用備蓄だけでなく、保育士用の備蓄も確認しましょう。
災害時には、保育士が長時間子どもを見守り続ける可能性があります。
休憩や交代の考え方を含めて備えることが、子どもを守る体制づくりにつながります。

避難先と引き渡しのルールを事前に決めておく
地震の規模によっては、園内にとどまれず、近隣の公園や学校など園外へ避難することもあります。
また、保護者がいつ迎えに来られるかも当日まで分かりません。
だからこそ、最終的な避難場所と保護者への引き渡し場所をあらかじめ決め、保護者にも周知しておくことが大切です。
これは国の通知でも、保育所に求められている事項です。
- 一次避難場所(園庭など)と、園外への二次・最終避難場所を決めているか
- 保護者への引き渡し場所と、そこまでの移動経路を職員・保護者で共有しているか
- 誰に・どの順で・何を確認して引き渡すか(引き渡しカード等)を決めているか
- 災害時は通常と異なる経路・場所になる可能性を、平時から保護者へ伝えているか
電話やメールがつながらない状況も起こり得ます。
「ここに来れば子どもと会える」という場所を事前に共有しておくことが、当日の混乱や引き渡しトラブルを減らします。
場面別に「そのときの動き」を決める
保育園の地震対策では、時間帯や活動内容によって対応が変わります。いつも保育室に全員がいるとは限らないため、生活場面別に考えておくことが重要です。
| 場面 | 確認したい対応 |
|---|---|
| 午睡中 | 布団の周囲の落下物、起きられない子への対応、静かな声かけ、人数確認 |
| 食事中 | 食器や配膳台、熱い物、椅子からの転倒、口に食べ物がある子への対応 |
| 戸外活動中 | 園庭の遊具、塀、門、近隣建物、子どもの集合場所 |
| トイレ・着替え中 | 少人数で分かれている子の確認、廊下やトイレ内の安全確保 |
| 登降園時間 | 保護者対応、出欠確認、玄関周辺の安全、引き渡し判断 |
場面別の対応を決めるときは、「理想的に動ける場合」だけでなく、「泣く」「集まらない」「動けない」「職員が少ない」など、実際に起こりやすい状況も想定しておきましょう。
地震訓練を実際の災害に近づけるポイント
保育園では、避難及び消火に対する訓練を少なくとも毎月一回行う必要があります。
毎月行う避難訓練だからこそ、同じ時間、同じ想定、同じ動きだけで終わらせず、園の実情に合わせて少しずつ見直していくことが大切です。
いつも同じ時間・同じ想定だけにしない
地震は、午睡中、食事中、戸外活動中、登降園時間など、さまざまな場面で起こる可能性があります。
訓練も、毎回同じ条件に固定せず、少しずつ想定を変えてみましょう。
これは園の工夫にとどまる話ではありません。
国の通知でも、避難・消火訓練の計画にあたっては、実際の保育士人数や設置階を踏まえること、そして早朝・夜間・お昼寝の時間など、人員体制が手薄で避難に時間がかかりやすい時間帯に災害が起きた場合も想定することが求められています。
つまり、「手薄な場面を想定した訓練」は、望ましい工夫であると同時に、本来期待されている取り組みでもあります。
見直しの例です。
- 午睡中に揺れた想定で、起きられない子への対応を確認する
- 食事中に揺れた想定で、配膳台や食器、子どもの口の中の確認を入れる
- 園庭活動中に揺れた想定で、遊具や門、集合場所を確認する
- 職員が少ない時間帯(早朝・夕方など)を想定し、役割分担を確認する
- 避難車がすぐ出せない場合の代替手順を確認する
難しくしすぎる必要はありません。
毎月の訓練の中で、ひとつずつ場面を変えるだけでも、実際の災害に近い気づきが得られます。
「うまくできたか」より「何を改善するか」を見る
訓練後の振り返りでは、できなかったことを責めるのではなく、次に何を改善するかを整理します。
振り返りで確認したい項目です。
- 子どもの人数確認に時間がかかった場面はなかったか
- 泣いて動けない子、集まれない子への対応はどうだったか
- 職員間の声かけや役割分担に迷いはなかったか
- 避難車、おんぶ紐、名簿、連絡手段をすぐ使えたか
- 保育士自身の安全確保や交代の視点が抜けていなかったか
- 次回の訓練で試したい改善点は何か
振り返りを記録しておくと、次回の訓練で確認しやすくなります。実施して終わりではなく、記録、共有、改善までをつなげることで、園の地震対策は少しずつ実務に合ったものになります。
まとめ
保育園の地震対策は、家具固定や避難経路の確認だけでなく、乳幼児の発達段階や生活場面を前提に考えることが重要です。
乳児は自分で身を守れず、幼児も突然の揺れの中では落ち着いて行動できないことがあります。だからこそ、午睡中、食事中、戸外活動中などの場面別対応、職員間の役割分担、避難に必要な物品、避難先と引き渡しのルール、そして保育士自身を守る備えまで、園の実情に合わせて確認していきましょう。
毎月の避難訓練は、実施して終わりにせず、実際の災害に近い想定と振り返りを取り入れることで、次の改善につながります。
防災対策は
ファーストレスキューにおまかせください
ここでは伝えきれない、施設・対象者に合わせた防災対策があります。
防災対策は、建物のつくり、年齢、体制、地域の災害リスクによって必要な対策・備えが変わります。
ファーストレスキューでは、それぞれの状況に合わせて、地震・火災・水害などに備える防災講座や、実際の災害に即した避難訓練支援を行っています。
その対象に合った講座内容のご提案、避難訓練後の講評、改善点の整理まで含めて支援します。
対象に合った防災対策を、負担を抑えながら具体的に進めたい方へ。
よくある質問
保育園の地震対策で最初に見直すべきことは何ですか?
まずは、子どもが過ごす場所を基準に、家具固定、落下物、窓ガラス、避難経路を確認します。そのうえで、乳児・幼児それぞれの動きに合わせて、保育士の役割分担や避難に必要な物品を見直すと実務につながりやすくなります。
乳児クラスの地震対策では何を重視すればよいですか?
乳児は自分で身を守れないため、保育士が安全な場所へ誘導する、身体を守る、避難車やおんぶ紐を使うなどの対応が中心になります。午睡中の布団の位置、落下物、職員配置も重要な確認ポイントです。
避難訓練は毎回同じ流れでもよいですか?
保育園では、避難及び消火に対する訓練を少なくとも毎月一回行う必要があります。毎月行う訓練だからこそ、いつも同じ時間・同じ想定だけにせず、午睡中、食事中、戸外活動中など、園の生活場面に合わせて見直すことが大切です。国の通知でも、人員体制が手薄な時間帯を想定した訓練が求められています。
災害時の引き渡し場所は決めておく必要がありますか?
はい。地震では園外へ避難したり、通常と異なる経路を使ったりする可能性があります。最終避難場所と保護者への引き渡し場所をあらかじめ決め、平時から保護者へ周知しておくことが、当日の混乱を防ぐうえで重要です。
保育士用の備蓄も必要ですか?
子ども用の水や食料、ミルク、おむつなどに加えて、保育士用の水、食料、衛生用品も確認しておくと安心です。災害時には職員が長時間対応する可能性があるため、休憩や交代の考え方も含めて備えることが大切です。

