2026年5月27日(水)、日本保育協会横浜支部様にて、理事長・園長等の皆様を対象に「保育所における災害時への対策と備え」をテーマとした講座を実施させていただきました。
当日は16時から17時までの1時間、元消防士としての現場経験と、保育園での避難訓練指導の経験をもとに、保育現場で本当に命を守るために必要な備えについてお話ししました。
保育所・保育園の防災では、園児を守ることが最優先です。
しかし、園児を守るためには、保育士をはじめとした職員の命と安全も守らなければなりません。
今回の講座では、「今、災害が起きた時に、園児も保育士も命を守れるか」という問いから、避難訓練の見直し、備蓄管理、職員のケア、保護者や地域との連携についてお伝えしました。
イベント概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 講座名 | 保育所における災害時への対策と備え |
| 開催日 | 2026年5月27日(水) |
| 時間 | 16:00〜17:00 |
| 主催 | 日本保育協会横浜支部 |
| 対象 | 理事長・園長等 |
| 講師 | ファーストレスキュー株式会社 代表取締役 東山幸史 |
講座内容
今回の講座では、主に次の2つのテーマでお話ししました。
- 避難訓練の必要性
- 保育園における備蓄
保育現場では、日々の保育業務、職員体制、保護者対応、行事、事務作業など、やるべきことが多くあります。
その中で防災対策を進めるには、完璧を一気に目指すのではなく、現場で続けられる形にしていくことが重要です。
園児だけでなく、職員の命も守る
講座の冒頭では、「園児はもちろん、職員の命も守ること」の大切さをお伝えしました。
災害時、保育士は子どもを守る立場になります。
しかし、保育士も一人の人間です。
突然の地震、火災、停電、浸水、保護者と連絡が取れない状況などに直面すれば、焦りや不安、パニックが起こる可能性があります。
訓練の時だけ子どもを守れても、実際の災害時に職員が動けなければ、園全体の安全は守れません。
だからこそ、避難訓練は「園児を動かす練習」だけではなく、「職員が判断し、声をかけ合い、子どもと自分自身を守るための訓練」である必要があります。
防災対策は、現実的に続けられる形にする
防災対策では、理想を挙げればきりがありません。
すべての災害を想定し、すべての備蓄をそろえ、すべての職員が完璧に動ける状態を作ることができれば理想です。
しかし、現実の保育現場には、時間、人員、予算、保管場所、職員の負担といった制約があります。
そのため、講座では防災対策の基本姿勢として、次の3つをお伝えしました。
現実的な目標を設定すること。
継続できる体制を作ること。
日常業務と統合すること。
防災だけを特別なものとして扱うと、どうしても後回しになりがちです。
日々の安全確認、保護者との信頼関係づくり、職員間の声かけ、園内の整理整頓、ヒヤリハットの共有など、普段の業務と結びつけることで、防災は続けやすくなります。
避難訓練は、最初から完璧を目指さない
避難訓練は、最初から完璧を目指す必要はありません。
むしろ大切なのは、訓練を通して「何ができなかったのか」「どこで迷ったのか」「次に何を改善するのか」を見つけることです。
訓練は、うまく見せるためのものではありません。
本当に命を守れる訓練にしていくためには、マンネリ化させず、改善を続けていくことが重要です。
講座では、訓練後に必ず振り返りを行い、改善点を記録し、次回の訓練に反映し、職員全員で共有する流れをお伝えしました。
訓練で見つかった失敗は、責めるものではありません。
災害時の被害を減らすための貴重な情報です。
失敗の根本を見つけ、原因を正しく理解し、改善していくことが、園の防災力を高めていきます。
必要な訓練の種類
基本訓練を続けることは大切です。
しかし、基本訓練だけで終わらせず、段階的に次のステップへ進めていくことも必要です。
講座では、保育園で検討したい訓練として、次のような内容をお伝えしました。
アクシデント訓練。
避難経路が使えない、職員が負傷する、設備が故障する、通信手段が使えないなど、想定外の事態を組み込む訓練です。
ブラインド訓練。
実施日時を一般職員に知らせず、実際の災害に近い状況で対応力を確認する訓練です。
保護者理解訓練。
保護者に訓練の様子を見てもらう、引き渡し訓練を行う、防災対策を説明するなど、保護者との信頼関係と協力体制を作る訓練です。
いきなり高度な訓練を行う必要はありません。
まずは基本訓練を意味あるものにし、園の状況に合わせて少しずつレベルを上げていくことが大切です。
職員自身の身を守る体制も必要
保育園の防災では、地震や火災、風水害だけでなく、職員自身の安全を守る視点も必要です。
保育園は女性職員が多い職場でもあります。
災害時や混乱時には、普段とは違うリスクが発生する可能性もあります。
そのため、防災だけでなく、防犯意識、施錠、見回り、複数人での行動、防犯ブザーの携行など、職員を守る体制も大切です。
園児を守るためには、職員が安全に動ける環境が必要です。
職員が安心して働ける体制は、結果として園児の安全にもつながります。
防災情報は、園の環境に合うかを見極める
防災対策では、知識を取り入れることも大切です。
しかし、情報が多い時代だからこそ、誤情報の見極めも必要です。
防災の専門家が言っていることでも、すべての園にそのまま当てはまるとは限りません。
建物の構造、園児数、0歳児の人数、職員配置、地域の災害リスク、保護者の就労状況、避難先までの距離など、園によって条件は異なります。
大切なのは、情報を盲目的に信じることではなく、「自園の環境に合っているか」を見極めることです。
職員のメンタルケアも防災の一部
災害時には、園児の安全確保だけでなく、職員のメンタルケアも重要です。
「災害時だから泣き言を言ってはいけない」
「子どもを守る立場だから弱音を吐いてはいけない」
このような根性論は、災害時には危険です。
職員も疲れます。
不安になります。
判断力も落ちます。
そのため、休憩場所を確保すること、交代で休める体制を作ること、飲み物や食べ物を用意することは、単なる福利厚生ではなく、災害時の安全対策です。
人によってストレスの感じ方は違います。
一律の基準は必要ですが、柔軟性がなければ、職員が倒れてしまい、結果として園全体が回らなくなる可能性があります。
保育園における備蓄は「72時間」が一つの基準
講座の後半では、保育園における備蓄についてお話ししました。
大規模災害時には、保護者がすぐに迎えに来られない可能性があります。
行政もすぐには来られない可能性があります。
物流も止まる可能性があります。
この「3つの来ない」を前提に、自園で子どもと職員を守る備えが必要です。
講座では、園児全員と職員全員が3日間、可能であれば5日間耐えられる備蓄を目安としてお伝えしました。
水、非常食、液体ミルク、使い捨て哺乳瓶、簡易トイレ、非常用電源、懐中電灯・ランタン、毛布・ブランケットなど、災害時に必要なものは多岐にわたります。
また、備蓄は一か所にまとめて置くだけではなく、可能であれば分散して保管することも大切です。
建物の一部が使えない、倉庫が開かない、水が入る、棚が倒れる。
そうした事態も想定しておく必要があります。
0歳児向け備蓄は最重要
保育園の備蓄で特に重要なのが、0歳児向けの備蓄です。
0歳児は、大人用の備蓄では対応できません。
液体ミルク、使い捨て哺乳瓶、紙おむつ、おしりふき、離乳食、使い捨てのスプーンや食器など、月齢や発達に応じた備えが必要です。
特に液体ミルクは、災害時に大きな役割を果たします。
断水や停電、衛生環境の悪化がある中で、粉ミルクを安全に作ることが難しい場合もあります。
だからこそ、0歳児を預かる園では、液体ミルクや使い捨て哺乳瓶など、実際に使える備えを検討しておくことが重要です。
防災にかける時間がない現実
保育園では、防災の重要性は理解していても、実際にはなかなか時間を確保できない現実があります。
日々の保育業務で忙しい。
事務作業や保護者対応、会議がある。
何から始めればよいか分からない。
マニュアル作成や訓練準備、備蓄管理に時間がかかる。
訓練をしても、効果や改善点が見えにくい。
こうした制約があるからこそ、現実的な対策を考える必要があります。
防災は、特別な時間を大きく確保しなければ始められないものではありません。
年間計画に組み込む。
担当者を決める。
複数人で分担する。
定期的に振り返る。
年間予算に防災費を入れる。
職員全員で取り組む。
小さく始めて、計画的に継続していくことが何より重要です。
防災対策は、紙の上だけでは完成しない
講座の中で、元消防士として特にお伝えしたかったことは、防災対策は紙の上だけでは完成しないということです。
マニュアルは、読んだだけでは使えません。
備蓄は、置いただけでは意味がありません。
連絡手段は、試さなければ分かりません。
課題は、訓練して初めて見えてきます。
どれだけ立派なマニュアルがあっても、職員が内容を知らなければ動けません。
どれだけ多くの備蓄があっても、どこにあるか分からなければ使えません。
どれだけ連絡網を作っていても、災害時に本当に連絡が取れるか試していなければ不安が残ります。
だからこそ、防災対策は、作って終わりではなく、使い、試し、見直し続けることが必要です。
保護者・地域を巻き込む取り組み
保育園の防災は、園内だけで完結するものではありません。
保護者や地域を巻き込むことで、災害時の協力体制が作られます。
講座では、次のような取り組みもお伝えしました。
防災説明会を開催する。
引き渡し訓練を実施する。
園の防災情報を定期的に発信する。
災害時の保護者協力について事前に合意しておく。
地域と連携する。
保護者の不安に丁寧に答える。
保護者に園の防災対策を伝えることは、単なる説明ではありません。
保護者の安心につながり、地域からの信頼につながり、他園や関係機関との連携にもつながります。
命を守る取り組みは、発信することで信頼にもつながります。
一つの園の実践が、地域全体の防災力を高めるきっかけになることもあります。
防災対策は園運営の安定にもつながる
防災対策は、災害時だけのためではありません。
日常の安全確認が、園児のケガや事故予防につながります。
役割分担の明確化が、職員の負担軽減につながります。
保護者への説明が、園への信頼につながります。
職員が安心して働ける環境づくりが、園運営の安定につながります。
防災は、園児の安全、保護者の信頼、職員の安心、園運営の安定を支える取り組みです。
だからこそ、後回しにするのではなく、できることから少しずつ始めることが大切です。
まとめ
今回の日本保育協会横浜支部様での講座では、理事長・園長等の皆様に向けて、保育所における災害時への対策と備えについてお伝えしました。
消防士として、たくさんの命が失われる現場を見てきました。
同時に、理想の防災を作り上げる難しさも知っています。
だからこそ、現場の制約を理解し、予算の限界を知り、職員の忙しさを分かった上で、「それでも、できることがある」と伝えたいと考えています。
何も起こらないのが理想です。
しかし、もしもの時に後悔しないために、今できる備えがあります。
今回の講座が、参加された皆様にとって、自園の避難訓練や備蓄、職員体制、保護者連携を見直すきっかけになれば幸いです。
このたびは貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました。
「本当に命を守る防災」を、それぞれの現場で続く形へ
ファーストレスキュー株式会社では、保育園・こども園・学校・自治体・地域団体・企業など、それぞれの現場に合わせた防火防災講座・安全講座・避難訓練支援を行っています。
災害時に本当に命を守るためには、知識を学ぶだけでは十分ではありません。
その場所で起こり得るリスクを知り、実際に働く人・過ごす人・子どもを守る職員が、自分ごととして考え、無理なく続けられる形に落とし込むことが大切です。
ファーストレスキューでは、元消防士としての現場経験をもとに、マニュアルや設備だけでは補いきれない「判断」「声かけ」「行動」につながる防災をお伝えしています。
防災は、一度学んで終わりではありません。
それぞれの現場で続けられてこそ、災害時に命を守る力になります。
保育園での出前講座承ります
- 元消防局長監修の本格的な防災教育
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ファーストレスキュー株式会社
【本当に命を守る防災】をそれぞれの場所で続く形へ
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