2026年6月19日、東京都北区立滝野川第三小学校で火災が発生しました。
児童や教職員にけが人が出た火災で、その後の北区の発表では、消防設備の定期点検や避難訓練は実施されていた一方、人事異動に伴う防火管理者の選任・解任届や消防計画に関する手続きに、不十分な点があったことが明らかになりました。
報道では、消防署へ届け出ていた学校の防火管理者が、3年前に異動した前任の副校長名のままになっていたとされています。
この報道を見て、
「なぜ変更していなかったのか」
「学校の管理はどうなっていたのか」
と感じた方もいると思います。
もちろん、防火管理者が変わったときには、必要な手続きを行わなければいけません。
消防計画や教職員の役割分担も、現在の学校の体制に合わせて見直す必要があります。
ただ、私は今回の問題を、先生個人や学校の確認不足だけで終わらせてはいけないと思っています。
学校では、授業、行事、保護者対応、児童・生徒への対応、会議、書類作成など、先生方が多くの業務を抱えています。
防火管理者になったからといって、防火管理だけに時間を使えるわけではありません。
だからこそ考えたいのは、
「誰が手続きを忘れたのか」
だけではなく、
「人事異動があっても、防火管理が止まらない仕組みになっているか」
ということです。
この記事では、防火管理者の役割と、忙しい学校現場だけで防火管理を抱え込まないための方法について考えます。
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防火管理者が前任者のままなのは、名前だけの問題ではない

防火管理者を選任または解任した場合は、管轄消防署への届出が必要です。
また、防火管理者は、学校の実態に合わせた消防計画を作成し、その計画に基づいて防火管理上必要な業務を行います。
そのため、人事異動で防火管理者が変わったときは、主に次のような内容を確認する必要があります。
- 前任の防火管理者の解任
- 新しい防火管理者の選任
- 防火管理者選任・解任届の提出
- 消防計画に記載された氏名や体制の変更
- 教職員の役割分担や連絡体制の見直し
- 避難訓練や防火教育の年間予定
- 消防設備点検や訓練記録の引き継ぎ
防火管理者の名前が前任者のままだったからといって、それが今回の出火原因だったということではありません。
火災の原因と、防火管理者の届出が更新されていなかった問題は、分けて考える必要があります。
ただ、現在学校にいない人が防火管理者として届け出られていたということは、少なくとも書類上の責任体制が、現在の学校の体制と合っていなかったということです。
誰が消防計画を確認するのか。
誰が避難訓練を計画するのか。
誰が日常の火気管理や避難経路を確認するのか。
誰が消防設備点検の結果を確認し、必要な改善につなげるのか。
防火管理者の変更は、名前を書き換えるだけではありません。
こうした業務が、新しい担当者へ引き継がれているかを確認することが大切です。
防火管理者は、資格を持っているだけでは終わらない
防火管理者というと、
「講習を受けて資格を取る人」
「消防署に名前を届け出る人」
というイメージがあるかもしれません。
もちろん、資格や届出は必要です。
ただ、防火管理者の本来の役割は、名前を届け出ることではありません。
消防計画を作成する。
火気の使用状況を確認する。
避難経路や防火設備の状態を確認する。
消防設備の点検結果を確認する。
避難訓練や消火訓練を計画する。
教職員へ防火管理に必要な内容を共有する。
訓練や点検で見つかった課題を、次の改善につなげる。
こうした防火管理上必要な業務を、学校の中で動かしていく役割です。
防火管理者が一人ですべての作業をするということではありません。
校長、副校長、教職員、事務職員、火元責任者などが、それぞれの役割を持って動けるようにすることも、防火管理者の大切な仕事です。
そのため、防火管理者だけが内容を知っている状態では十分ではありません。
防火管理者や管理職が学校にいないときでも、火災は起こる可能性があります。
授業中、休み時間、給食中、放課後では、学校にいる職員の数も、児童・生徒の居場所も変わります。
誰がいる時間に火災が起きても、最低限の初動対応ができる体制にしておく必要があります。

災害はいつ起こるか分からない、状況も違う、そんな中で特定の人しか知らないではいざという時に動くのは非常に難しいです。


人事異動のときに確認したい3つのこと
人事異動があったとき、防火管理者の名前だけを変更して終わりではありません。
まずは、次の3つを一緒に確認します。
1.届出が現在の体制と合っているか
現在、消防署へ届け出ている防火管理者が誰なのかを確認します。
届出書の控えや消防計画が見つからない場合は、管轄消防署へ確認することも必要です。
前任者が異動または退職している場合は、新しい防火管理者の資格と、選任・解任の手続きを確認します。
届出を行った後は、提出した書類の控えを、次の担当者が分かる場所に保管しておくことも大切です。
2.消防計画が現在の学校に合っているか
防火管理者の氏名だけでなく、消防計画に記載されている役割分担や連絡体制も確認します。
教職員の名前が古いままになっていないか。
管理職が不在の場合の指揮命令系統が決まっているか。
非常勤職員、支援員、事務職員の役割も整理されているか。
避難場所や避難経路が、現在の校舎の使い方と合っているか。
教室の配置や使用方法、児童・生徒数、教職員の体制が変われば、学校の防火管理体制も変わります。
前年度の消防計画をそのまま使用するのではなく、現在の学校で実際に使える内容になっているかを確認する必要があります。
3.実際の業務が引き継がれているか
書類を渡すだけでは、引き継ぎが終わったとは言えません。
- 消防設備点検で指摘された事項はあるか
- 指摘事項はすでに改善されているか
- 次の避難訓練はいつ行うのか
- 消防署へ提出する予定の書類はあるか
- 火気を使用する場所はどこか
- 特に注意が必要な教室や準備室はどこか
- 前回の避難訓練で出た課題は何か
- 次の訓練で確認することは何か
こうした実際の業務まで、次の担当者へ引き継ぐ必要があります。
消防計画や訓練記録が保管されていても、その中身や現在の課題が共有されていなければ、次の担当者がまた最初から確認しなければなりません。
届出、消防計画、実際の業務。
この3つをまとめて確認することが、人が変わっても防火管理を止めないために大切です。


専門家としての理想と、学校現場の現実
元消防士で防災を専門にする立場から言えば、確認したほうがよいことは山ほどあります。
- 防火管理者の届出
- 消防計画
- 火気を使用する場所
- 消防設備点検の結果
- 避難経路
- 防火扉や防火シャッター
- 救助袋などの避難器具
- 教職員の役割分担
- 避難訓練
- 訓練後の記録と改善
どれも、児童・生徒の命を守るために大切です。
「すべて確実に行ってください」と言うのは簡単です。
私自身、命を守るための備えは、できる限り徹底するべきだと思っています。
ただ、学校では授業があり、行事があり、保護者対応があり、生徒指導があり、会議があり、書類作成があります。
先生方は、すでに手いっぱいです。
特に年度替わりには、教職員の異動、学級編成、校務分掌、年間行事、保護者への対応など、短期間に多くの業務が重なります。
その中で、防火管理者の変更、消防計画の修正、消防署への届出、訓練計画の引き継ぎまで、担当者個人の記憶だけに任せるのは無理があります。
防火管理が大切ではないと思っているから、手続きが抜けるわけではありません。
大切だと分かっていても、目の前の業務が優先される中で、発生頻度の低い火災への備えや手続きの確認が後回しになることがあります。
引き継ぎ資料はあるけれど、どこまで確認すればよいか分からない。
消防計画はあるけれど、現在の学校の体制に合っているか判断できない。
避難訓練は実施しているけれど、前回の課題が次の訓練に反映されていない。
このようなことは、どの学校でも起こる可能性があります。
だからこそ、個人の注意力や頑張りだけに頼らず、人が変わっても確認できる仕組みが必要です。
防火管理者だけに任せきりにしない仕組みが必要
防火管理者になった先生が、責任を持って取り組むことは大切です。
ただ、その人しか分からない状態になると、異動や退職の際に防火管理が止まってしまいます。
- 消防計画のファイルがどこにあるか分からない。
- 消防署へ何を提出したか分からない。
- 前回の避難訓練で何が問題になったか分からない。
- 消防設備点検で指摘された内容が、改善されたか分からない。
これでは、担当者が変わるたびに、次の担当者が最初から確認しなければなりません。
必要なのは、何でも一人でできる完璧な防火管理者をつくることではありません。
人が変わっても、確認すべきことが分かる。
管理職が不在でも、教職員が最低限の役割を判断できる。
訓練で見つかった課題が記録され、次の訓練や消防計画の見直しにつながっている。
そのような仕組みにすることが大切です。
例えば、次のような方法が考えられます。
- 年度替わりに確認する項目を決めておく
- 防火管理者を補助する担当者を決める
- 消防計画や届出書類の保管場所を共有する
- 消防設備点検の結果を関係する教職員と共有する
- 避難訓練後の課題を記録する
- 訓練記録や改善事項を次年度へ引き継ぐ
- 年間の防火管理業務を一覧にする
- 必要に応じて、第三者の視点から防火管理体制を確認する
外部の専門家へ相談する場合も、防火管理者の責任を外へ移すということではありません。
防火管理者は原則として、防火管理上必要な業務を適切に遂行できる、学校内の管理的または監督的な立場にある資格者から選任します。
「先生方が忙しいから、防火管理者そのものを外部へ任せればよい」というものではありません。
そのうえで、
- 消防計画が現在の学校に合っているか確認する
- 避難訓練の内容を見直す
- 教職員向けの研修を行う
- 役割分担を整理する
- 届出に必要な内容を確認する
- 訓練後の課題を整理する
といった専門的な部分について、外部の支援を受ける方法があります。
災害対応や防火管理の知識を持つ第三者が加わることで、学校内部だけでは気づきにくい課題や、火災時に判断が迷いやすい部分を整理しやすくなります。
すべてを外部へ任せるのではありません。
学校が行うことと、外部へ相談できることを分けて整理し、学校の中で防火管理を続けるために、必要な部分だけ外部の力を借りる。
これも、忙しい学校現場で防火管理を続けるための一つの方法です。


まずは今の防火管理体制を確認するところから
全部を一度に見直そうとすると、学校側の負担も大きくなります。
まずは、次の内容から確認してみてください。
- 消防署へ届け出ている防火管理者は、現在も学校に在籍しているか
- 防火管理者本人が、年間に行う業務を把握しているか
- 消防計画の役割分担は、現在の教職員体制と合っているか
- 避難訓練で、消防計画に定めた役割や動きを確認しているか
- 消防設備点検の指摘事項が、改善されているか
- 前回の避難訓練で見つかった課題が、記録されているか
- 年度替わりに、防火管理体制を確認する仕組みがあるか
全部を一度に完璧にするのが理想ですが、
とにかくまずは、現在の防火管理者が誰なのか。
消防計画が、今の学校の体制に合っているのか。
前回の訓練で見つかった課題が、そのまま残っていないか。
そこから確認するだけでも、次に行うことが見えてきます。
人が変わっても、防火管理が止まらない学校へ
今回の報道を受けて、
「防火管理者の変更届を忘れないようにしましょう」
と伝えるだけでは、十分ではないと思います。
もちろん、届出は必要です。
ただ、本当に見直すべきなのは、なぜ前任者の名前が残ったままになっていたのかということです。
人事異動のときに、確認する項目が決まっていたか。
消防計画や訓練記録が、次の担当者へ引き継がれていたか。
防火管理者だけが業務を抱えていなかったか。
現在の教職員体制に合わせて、役割分担を見直していたか。
こうした点まで確認しなければ、担当者が変わるたびに同じ問題が起こる可能性があります。
防火管理は、誰か一人の注意力や頑張りだけで続けるものではありません。
人が変わっても確認できる。
担当者が不在でも、教職員が最低限の役割を把握している。
訓練で見つかった課題が記録され、次の改善につながっている。
そのような仕組みをつくることが大切です。
学校の先生方は忙しく、防火管理だけに時間を使うことはできません。
だからこそ、確認事項を増やすだけではなく、限られた時間の中でも続けられる方法を考える必要があります。
先生方を責めるのではなく、先生方が児童・生徒を守る行動に集中できる体制をつくる。
今回の火災を、手続き上の不備だけの問題として終わらせてはいけません。
けが人が出た以上、「最悪の結果ではなかったから」と安心して終わるのではなく、なぜ火災が起きたのか、なぜ管理体制の不備が残っていたのかを検証する必要があります。
- 日常の火気管理
- 教職員間の情報共有
- 人事異動時の引き継ぎ
- 消防計画と実際の体制の確認
- 避難訓練で見つかった課題の改善
手続き上の問題だけに論点を狭めず、こうした部分まで含めて、火災による被害を最小限に抑える体制へつなげる必要があります。
一つの学校だけの問題として終わらせず、それぞれの学校で、現在の防火管理体制を確認する機会にしてほしいと思います。す。
学校の防火管理・避難訓練に関するご相談
ファーストレスキューでは、学校・教育機関を対象に、次のような防災支援を行っています。
- 教職員向けの防災・危機管理研修
- 避難訓練の内容や役割分担の見直し
- 避難訓練当日の立会いと講評
- 危機管理マニュアルと避難訓練の実効性確認
- 防火管理体制や年度替わりの引き継ぎ内容の整理
現在ある消防計画や危機管理マニュアル、避難訓練を生かしながら、学校の実情に合わせて必要な部分を整理します。
防火管理者選任・解任届や消防計画の作成・変更など、消防署への手続きが必要な場合には、東山行政書士事務所と連携して対応することも可能です。
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