保育園の防災備蓄はどこに置く?保管場所と分散配置の考え方

保育園の防災備蓄では、必要な数量を用意することがまず第一に大切なことです。

そして、それだけにとどまらず、災害が起きたときに職員が取り出し、子どもを守りながら安全に運び、実際に使える場所へ置いておくことも重要です。

水や非常食を用意していても、

  • 倉庫の奥に積み重なっている
  • 鍵を持つ職員が不在だった
  • 地震で棚が倒れ、扉を開けられなかった
  • 1階の倉庫が浸水した
  • 避難経路から遠く、持ち出せなかった
  • 箱が重く、子どもを誘導しながら運べなかった

という状態では、せっかくの備蓄を災害時に活用できません。

元消防士として現場を考えるとき、私は「備蓄品があるか」はもちろん、「発災直後に誰が取り出し、どこへ運び、どのように使うのか」まで一緒に確認します。

また、保育所の指導監査等では、非常災害に必要な設備として、備蓄食品が準備されているか確認される場合があります。こども家庭庁の令和8年度保育所監査調書でも、備蓄食品の準備が着眼点として示されています。

監査のためだけに備蓄を整えるわけではありません。

日頃から保管場所、数量、取出方法を職員で共有し、災害時に使える状態を作っておけば、指導監査等の際にも園の取組を説明しやすくなります。

この記事では、保育園・認定こども園の防災備蓄について、

  • 園内のどこに置くか
  • 一か所へまとめるか、分散するか
  • 地震や水害に備えて何を確認するか
  • 鍵や表示をどうするか
  • 実際に持ち出せる重量か
  • 配置状況をどのように記録するか

を具体的に解説します。

水、食料、簡易トイレ、おむつなどの必要量については、先に次の記事で確認してください。

保育園の防災備蓄は何がどれくらい必要?園児・職員の必要量と計算方法

目次

防災備蓄の保管場所で確認したい5つの視点

備蓄品の置き場所は、空いているスペースだけで決めるものではありません。

次の5つを一緒に確認します。

確認する視点主な確認内容
使用する場面発災直後、避難中、園内待機、引き渡しのどこで使うか
災害リスク地震、浸水、火災、停電の影響を受けないか
取り出しやすさ鍵、棚、扉、通路に問題がないか
運びやすさ実際の職員体制で持ち出せる重量か
共有と記録誰が場所を知り、どの資料に記録しているか

倉庫に整理して保管することはもちろん大切です。

そして、倉庫が使えなくなった場合にも、最低限必要な物を別の場所から取り出せる状態にしておくことも大切です。

備蓄品を一か所にまとめる場合の注意点

備蓄品を一つの倉庫にまとめると、

  • 数量を確認しやすい
  • 期限を管理しやすい
  • 点検担当者が確認しやすい
  • 園内が整理しやすい

というメリットがあります。

日々の忙しい中で、管理のしやすさは非常に重要ですが、ただ目的は災害時に使えることなので、災害時にその場所に近づけない場合も想定しておく必要があります。

例えば、次のような状況です。

  • 地震で棚や荷物が倒れている
  • 倉庫の扉が変形して開かない
  • 倉庫までの通路に物が落下している
  • 火元や煙のため近づけない
  • 浸水により1階へ降りられない
  • 停電で暗く、鍵や備蓄品を確認できない
  • 鍵を管理する職員が不在

すべてを細かく分散すると、数量や期限を管理しにくくなりますし、置く場所がないという事もにもなりがちです。

そのため、

全体を管理する中心的な保管場所を決め、発災直後や避難時に必要な物を各場所へ分散する

という考え方が現実的です。

「使う時間」と「使う場所」で備蓄を分ける

防災備蓄は、すべて同じタイミングで使うわけではありません。

発災直後に必要な物と、数時間後の園内待機で必要な物を分けて考えます。

使用する場面主な備蓄品
発災直後ライト、ホイッスル、救急用品、職員用手袋
避難時名簿、誘導ロープ、ヘルメット、雨具、持出袋
園内待機水、食料、簡易トイレ、毛布、衛生用品
乳児対応ミルク、調乳用水、離乳食、おむつ、おしりふき
引き渡し園児名簿、引き渡しカード、筆記具、充電用品
汚物処理手袋、処理袋、凝固剤、消毒用品、消臭用品

発災直後に必要なライトや名簿は取り出しやすく、すぐ使えるようにしておく必要がありますし、水や食料は各保育室へ大量に置くと、日常保育や避難経路へ影響する可能性があります。

使用する時期と場所に合わせて、中心保管と分散配置を組み合わせます。

保育園内の場所別・分散配置例

園舎の構造や災害リスクによって配置は変わりますが、次のように考えられます。

保管場所配置する物の例確認したいこと
職員室全体名簿、連絡用品、ラジオ、予備電源園長不在時にも取り出せるか
各保育室クラス名簿、持出袋、ライト、最低限の衛生用品担任以外も場所を知っているか
乳児室ミルク、離乳食、おむつ、哺乳用品対象児・サイズが現在の状況に合っているか
給食室周辺水、食料、紙皿、調理用品調理設備が使えない場合も取り出せるか
避難口付近ヘルメット、誘導ロープ、雨具、運搬用品避難経路を塞いでいないか
上階水、食料、簡易トイレ、乳幼児用品浸水時の垂直避難後に使用できるか
屋外倉庫大型用品、予備資機材転倒・浸水・高温多湿への対策があるか

これは一例です。

「この場所に置けば正解」というものではありません。

自園の避難計画、園舎の構造、ハザードマップ、職員配置を重ねて決めてください。

水害リスクがある園は上階備蓄も確認する

洪水や内水氾濫、高潮、津波などの危険がある園では、備蓄品を1階だけに集中させないことが大切です。

まずハザードマップを確認し、

  • 想定される浸水深
  • 垂直避難を行う階
  • 園外避難と園内避難の判断
  • 浸水前に持ち上げられる時間があるか
  • エレベーターが使用できない場合の運搬方法

を整理します。

上階に置いておきたい物の例は、次のとおりです。

  • 飲料水
  • 非常食
  • 簡易トイレ
  • おむつ・おしりふき
  • ミルク・離乳食
  • アレルギー対応食
  • ライト
  • 衛生用品
  • 園児名簿・引き渡し関係資料

大量の備蓄を災害発生後に階段で運ぶことは簡単ではありません。

垂直避難を行う可能性がある園では、必要量の一部をあらかじめ上階へ分散しておくか、2階に置き場所が普段はない園であれば、非常時には2階に早めに持って上がる取り決めをしておくことが重要です。

地震時に取り出せる保管方法にする

地震対策として、備蓄品そのものが職員や子どもに危険を与えないことも大切です。

次の点を確認します。

  • 棚や保管庫を固定しているか
  • 重い物を高い位置へ置いていないか
  • 扉や引き出しが揺れで開かないか
  • 段ボール箱が通路へ落下しないか
  • ガラス窓や倒れやすい家具の近くではないか
  • 備蓄品が避難口や廊下を塞いでいないか
  • 消火器や消防設備の操作を妨げていないか
  • 地震後も扉を開けられる余裕があるか

大量の水を高い棚に置くと、落下した場合に危険です。

床へ直接置く場合も、浸水や清掃時の水濡れを考え、すのこや棚などを活用します。

特にオムツは水に弱いですし、他のものも大人以上に衛生面を気をつける必要があります。

製品に表示された保管条件を確認し、高温多湿や直射日光を避けるようにしてください。

鍵を開けられる職員を一人にしない

備蓄倉庫を施錠することは、防犯や誤使用を防ぐために必要な場合があります。
施錠することはもちろん大切です。

それと同時に、園長や担当者が不在でも開けられる仕組みも必要です。

確認したいのは次の点です。

  • 合鍵があるか
  • 鍵の保管場所を複数の職員が知っているか
  • 非常勤職員だけの時間帯でも取り出せるか
  • 早朝・延長保育時に対応できるか
  • 暗い場所でも鍵を確認できるか
  • 電子錠が停電した場合に開けられるか

鍵の場所を誰でも見える場所へ掲示する必要はありませんが、もしもの時のために、管理方法を決め、必要な職員へ周知しておきましょう。

箱や棚には中身・数量・期限を表示する

段ボール箱を開けなければ中身が分からない状態では、災害時の確認に時間がかかりますし、管理も難しくなります。
箱や棚には、次の内容を表示します。

  • 品目名
  • 数量
  • 対象クラス・対象児
  • 使用期限
  • 持出先
  • 持出担当
  • 開封時の注意
  • 個別対応の有無

乳児用品やアレルギー対応食は、誤配布を防げる表示と保管方法にします。

段ボール箱の外側だけでなく、備蓄管理表にも同じ情報を記録しておくと確認しやすくなります。

期限、数量、更新履歴の管理については、次の記事で詳しく解説します。

保育園の防災備蓄をどう管理する?期限・数量・更新・監査対応のポイント

実際の職員体制で運べる重量に分ける

必要量を確保しておくことは大前提ですが、その量を実際の勤務体制で安全に運べるように分けることも大切です。

当然ですが、必要量が多くなるほど重くなります。

次の点を確認します。

  • 一箱を一人で安全に持てるか
  • 子どもを誘導しながら持てるか
  • 階段を使って運べるか
  • 台車が使えない場合にも対応できるか
  • 雨天時や停電時にも運べるか
  • 複数の職員で分担できるか
  • 運搬担当が別の重要な役割と重なっていないか

大きな箱へまとめるのではなく、小分けして保管する方法もあります。

台車を使用する場合は、

  • 保管場所からすぐ出せるか
  • 段差を通れるか
  • 地震で台車自体が動かないよう固定されているか
  • 避難車と同じ経路で使用できるか

を確認します。

特に1階から2階に持っていく可能性があるものや、水は重さを考えておかないと持って上がることができなくなるなんてこともあります。

備蓄配置図を作って職員で共有する

備蓄品の場所は、担当者の記憶だけに頼らないようにします。
なぜなら通常のもの違って担当の人以外は目にする機会が少ないからです。

園内の平面図へ、次の内容を記載した備蓄配置図を作成します。

  • 保管場所
  • 主な品目
  • 鍵の有無
  • 持出担当
  • 使用する場面
  • 運搬先
  • 上階備蓄
  • 使用済み便袋・おむつの一時保管場所

配置図と一緒に、保管場所の写真を残しておく方法もあります。
職員会議や年度初めの研修で確認し、新任職員や非常勤職員にも共有します。
覚えておくのが理想ですが、災害時にすぐ使うもの以外は、まずこれを見て確認するというところまではやっておくほうがいいでしょう。

指導監査等でも説明できる保管状態にする

こども家庭庁の保育所監査調書では、備蓄食品が準備されているかが非常災害対策の着眼点に含まれています。

自治体の指導監査結果では、備蓄品の保存量が不足していることや、管理が適切でないことが指導事項として公表された例もあります。

ただし、全国のすべての園に、同じ配置図や同じ保管方法が一律に求められるという意味ではありません。

自治体によって確認方法や提出資料は異なります。

園として次の内容を説明できるようにしておくと、園内共有と指導監査等の両方に役立ちます。

残しておきたい資料確認できること
備蓄配置図どこに何があるか
保管場所別一覧場所ごとの品目・数量
写真実際の保管状態
鍵の管理方法誰がどのように開けるか
持出担当表誰が何を運ぶか
訓練記録実際に取り出し、運べたか
改善記録問題をどのように修正したか

監査の直前だけ倉庫を整理するのではなく、日頃から職員が把握し、訓練で確認できる状態にしておくことが大切です。

避難訓練で実際に取り出してみる

備蓄品の場所を職員会議で確認することはもちろん大切ですが、実際に取り出し、運び、開封してみる、そして使ってみることも大事です。

園児と一緒に使ってみるまでできるのが理想ですが、まずは持ってきて使える状態までできるかから試してください。

園児を見ながら、備蓄の移動が難しいということを体験してください。

訓練では、次の動作を確認します。

  1. 保管場所まで移動する
  2. 鍵や扉を開ける
  3. 必要な箱を見つける
  4. 箱や備蓄品を運ぶ
  5. 避難先で開封・設置する
  6. 使用後に元の状態へ戻す
  7. 問題点を記録する

実際に動くことで、

  • 鍵の場所を知らない
  • 箱の中身が分からない
  • 重くて運べない
  • 台車が段差を通れない
  • 避難車と備蓄品を同時に運べない
  • 上階の備蓄が不足している
  • 開封方法が分からない

といった課題に気づけます。

避難訓練は、うまく終わらせることが目的ではありません。
現在の配置や職員体制では難しいことに気づき、次の改善につなげることが大切です。

ファーストレスキューでは、備蓄品の持ち出しや園内配置も含めた避難訓練の見直しを行っています。
元消防士による保育園の避難訓練サポートを見る

保管場所が決まったら、期限・数量を管理する

備蓄品を災害時に取り出せる場所へ配置するに加え、その場所に現在どれだけあり、いつまで使えるかを継続して管理することも大切です。

年度が変わると、園児数、職員数、おむつのサイズ、ミルクやアレルギー対応の対象児も変わります。
食品の賞味期限、電池、モバイルバッテリー、救急・衛生用品の交換時期も確認しなければなりません。

管理表の作り方、点検時期、ローリングストック、更新記録、監査時に確認したい資料については、次の記事で詳しく解説します。

保育園の防災備蓄をどう管理する?期限・数量・更新・監査対応のポイント

防災備蓄の保管場所チェックリスト


□ 発災直後に必要な物をすぐ取り出せる
□ 備蓄品を一か所だけに集中させていない
□ 園のハザードマップを確認した
□ 浸水時にも使用できる上階備蓄がある
□ 棚や保管庫を固定している
□ 重い物を高い位置へ置いていない
□ 備蓄品が避難経路を塞いでいない
□ 消防設備の操作を妨げていない
□ 園長不在時にも鍵を開けられる
□ 非常勤職員も備蓄場所を把握している
□ 箱や棚に品目・数量・期限を表示している
□ 個別対応品を誤配布しない表示がある
□ 実際の職員体制で運べる重量に分けている
□ 台車や運搬用品をすぐ使用できる
□ 使用済み便袋・おむつの保管場所を決めている
□ 備蓄配置図を作成している
□ 保管場所の写真を残している
□ 持出担当を決めている
□ 避難訓練で実際に取り出している
□ 訓練後の改善内容を記録している

園の備蓄配置と持ち出し方法を確認したい方へ

ファーストレスキューでは、保育園・認定こども園の建物、園児の年齢、職員体制、避難経路、地域の災害リスクを確認し、防災上の課題を整理しています。

例えば、次のような内容をご相談いただけます。

  • 備蓄品を園内のどこへ配置するか
  • 一か所管理と分散配置をどう組み合わせるか
  • 浸水時に上階へ何を置くか
  • 乳児室や各保育室に何を置くか
  • 実際に運べる重量へどう分けるか
  • 備蓄配置図をどう作るか
  • 避難訓練で何を確認するか
  • 施設機能強化推進費加算を使う場合の研修・訓練内容

防災用品の販売を前提とするのではなく、現在の園舎と職員体制で、災害時に実際に使える配置を一緒に考えます。

備蓄配置を含めた避難訓練を確認したい方
元消防士による保育園の避難訓練サポートを見る

園の備蓄配置や防災対策を相談したい方
園の備蓄配置と防災対策を相談する

よくある質問

防災備蓄は一か所にまとめた方がよいですか?

全体の数量や期限を管理する場所を決めると管理はしやすいです。
ただ、発災直後に必要な物や、倉庫が使えない場合にも必要な物は、職員室、各保育室、乳児室、上階などへ分散しておかないと万が一取り出せない状況になってしまった場合に困ります。
園の構造と災害リスクに合わせて組み合わせてください。

すべての保育室へ水や食料を置く必要がありますか?

必ずしも全量を各保育室へ置く必要はありません。
各保育室には発災直後や避難時に必要な最低限の物を置き、全体量は中心となる保管場所や上階等へ配置する方法があります。

水害リスクがある場合はどこへ置きますか?

想定浸水深と垂直避難先を確認し、水、食料、簡易トイレ、乳幼児用品などの一部を浸水しにくい上階へ配置する。または2階に持っていくものをまとめておき、早めに移動させられるようにしておきましょう。
災害発生後に大量の備蓄を階段で運ぶ計画にしないことが大切です。

備蓄倉庫は施錠してもよいですか?

施錠が必要な場合もありますので、園長や担当者が不在でも、必要な職員が開けられる仕組みを決めてください。停電時や早朝・延長保育時の対応も確認します。

備蓄品の箱には何を表示しますか?

品目、数量、対象クラス、使用期限、持出先、持出担当、個別対応の有無などを表示しておきましょう。
管理表にも同じ情報を記録しておくと、点検や引継ぎを行いやすくなります。

保管場所は指導監査で確認されますか?

国の保育所監査調書では、備蓄食品が準備されているかが確認の着眼点に含まれています。
具体的な確認方法や必要資料は自治体によって異なります。備蓄配置図、保管場所別一覧、写真、点検・訓練記録などを整理しておくと、園内共有と監査時の説明に活用できます。

まとめ

保育園の防災備蓄は、必要な数量を用意することは大切です。そして、その備蓄品を災害時に取り出し、子どもを守りながら安全に運び、実際に使える場所へ置いておくことも大切です。

保管場所を決めるときは、次の5つを確認します。

  1. いつ、どこで使用するか
  2. 地震・浸水・火災等の影響を受けないか
  3. 鍵や棚に問題がなく、取り出せるか
  4. 実際の職員体制で運べるか
  5. 配置図や記録を職員で共有しているか

一か所で管理する備蓄と、発災直後や避難時に使用する分散備蓄を組み合わせます。
また、配置を決めて終わりにせず、避難訓練で実際に取り出し、運び、使用できるかを確認します。

必要な量があること。
災害時に取り出せること。
数量や期限が継続して管理されていること。

この3つがそろうことで、保育園の防災備蓄は実際に使える備えになります。

必要量の計算は、次の記事で確認できます。
保育園の防災備蓄は何がどれくらい必要?園児・職員の必要量と計算方法

期限・数量・更新方法については、次の記事で解説します。
保育園の防災備蓄をどう管理する?期限・数量・更新・監査対応のポイント

参考資料

※指導監査等の確認項目、提出資料、具体的な保管基準は自治体によって異なります。
自治体が公表する最新の監査資料、自己点検表、非常災害対策に関する指針も確認してください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次