令和8年熊本地震を受けて企業が今すぐ確認したいBCPの7項目

2026年7月28日16時27分、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。

熊本県宇城市と氷川町では最大震度7を観測しました。気象庁は、揺れの強かった地域では地震活動や降雨による土砂災害などに注意し、身の安全を確保するよう呼びかけています。

被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。

被害や地震活動に関する最新情報は、気象庁や消防庁などの公的機関で確認してください。

企業が今行うべきなのは、被害の大きさを見て不安になることだけではありません。

同じ規模の地震が、自社の本社、工場、店舗、倉庫の近くで発生した場合に、

  • 従業員の安全を確認できるか
  • 経営者が不在でも判断できるか
  • 重要な業務を続けられるか
  • 停電や通信障害に対応できるか
  • 取引先へ状況を説明できるか

を確認することです。

BCPを策定している企業も、まだ作成していない企業も、今回の地震を機に、次の7項目を確認してください。

※地震に関する記載は2026年8月1日時点の公表情報に基づきます。

目次

地震の直後にBCPを確認する意味

大きな災害が起きると、BCPの必要性が注目されます。

しかし、BCPは災害が起きた後に慌てて読むためだけの書類ではありません。
作っただけで終わりの書類でもありません。

内閣府は、BCPを含む事業継続の取組について、災害時の経営判断、教育・訓練、点検・是正、経営層による見直しを継続的に行う必要があるとしています。

自社のBCPを開いてみてください。

最後に更新したのはいつでしょうか。
現在の担当者、設備、システム、取引先が反映されているでしょうか。

BCPを作成していない場合は、少なくともこの記事の7項目について、経営者と担当者で話し合ってください。

災害が起きてから初めて考えるのでは遅いです
本当は災害が起こらなくても意識したもらいたい。
ただ作ってなかった、考えてなかった、見直してなかったなら、対岸の火事として人ごとにせず、ぜひBCPについて考えてみてください。

企業が今すぐ確認したいBCPの7項目

1.従業員の安否確認後に、何を確認するか決まっているか

地震発生後、最初に確認するのは従業員と来客の安全です。

多くの企業では、電話、メール、安否確認システム、連絡アプリなどを使って安否確認を行います。

しかし、安否確認が取れれば、事業を継続できるわけではありません。

確認すべき情報は、無事かどうかだけではないからです。

安否確認と合わせて確認する内容

  • 現在いる場所
  • けがの有無
  • 家族への対応が必要か
  • 出社できるか
  • いつから勤務できるか
  • 在宅で業務を行えるか
  • 電話やインターネットを使用できるか
  • 担当業務を継続できるか

例えば、従業員本人が無事でも、自宅が被災していたり、家族の迎えや介護が必要だったりすれば、すぐに出社できない可能性があります。

「無事」と「勤務できる」は別です。

BCPには、安否確認の方法だけでなく、その結果を誰が集計し、業務に参加できる人数をどう判断するかまで記載する必要があります。

災害時には、携帯電話の混雑、停電、端末の破損、充電切れなどにより、連絡が取れないことがあります。

連絡が取れない人を待ち続けない

全員から回答が届くまで、会社としての判断を止めることはできません。

確認できた情報の範囲で、

  • 何人が活動できるか
  • 誰と連絡が取れていないか
  • どの業務を縮小するか
  • 誰が未確認者への連絡を続けるか

を分けて判断する必要があります。

安否確認は重要ですが、安否確認は時間がかかります。
そこで判断を止めていては、被害が拡大します。
同時進行で行っていく必要があります。

2.経営者や責任者が不在でもBCPを発動できるか

地震は、経営者やBCP担当者が会社にいる時間に発生するとは限りません。

出張中、移動中、休日、夜間である可能性もあります。

BCPに、

社長の指示により対応する

とだけ書かれていれば、社長と連絡が取れない間、現場の判断が止まってしまいます。

確認する内容

  • BCPの発動基準
  • 発動を判断する責任者
  • 第1・第2代行者
  • 各拠点の現場責任者
  • 業務停止を決められる人
  • 緊急支出を承認できる人
  • 取引先への公表を判断する人
  • 通常業務へ戻す判断者

個人名だけではなく、役職と代行順位で決めておくと、人事異動があっても更新しやすくなります。

また、「代わりに対応する」と書くだけでは不十分です。

誰が、どの範囲まで決定できるのかという権限も必要です。

指揮者が不明確だと情報も行動も分かれる

災害対応では、指示を出す人がいない状態だけでなく、複数の人が異なる指示を出す状態も危険です。

営業部門は顧客対応を優先し、現場部門は設備確認を優先し、総務部門は従業員対応を優先する。

どれも必要ですが、会社全体の優先順位がなければ、人と情報が分散します。

非常時ほど、誰が全体方針を決めるのかを明確にしなければなりません。

災害時、現地を見ていない人と現地にいる人で指示が変わることは多いです。現地にいる人が指揮者になる体制をとらないとリスクは高くなります。

3.地震直後に止める業務と、続ける業務を分けているか

地震後も、平常時と同じ業務をすべて続けようとしてはいけません。

従業員、設備、電力、通信、仕入れのすべてが不足する可能性があるからです。

BCPでは、業務を少なくとも次の3つに分けます。

区分考え方
最優先で行う業務人命安全、被害確認、重要顧客対応など
縮小して続ける業務人数や設備に合わせて規模を下げる業務
一時停止する業務後日に延期しても重大な影響が少ない業務

各部署に「重要な業務は何か」と聞くと、ほとんどの業務が重要だと回答されます。

しかし、災害時にはすべてを同時に守ることはできません。

すべての業務が重要という結論は、優先順位を決めていないのと同じです。

重要業務を決める際は、売上だけではなく、次の観点を確認します。

  • 人命や安全への影響
  • 顧客や利用者への影響
  • 法令や契約への影響
  • 資金繰りへの影響
  • 他業務への連鎖
  • 企業の信用への影響
  • 復旧に必要な時間

BCPの作り方から確認したい場合は、次の記事も参考にしてください。

中小企業のBCPは、まずひな形からでも始める|使える計画に変える7つの手順

4.停電・断水・通信障害が同時に起きても対応できるか

地震BCPでは、建物の倒壊だけを想定してはいけません。

建物が使用できても、電気、水道、通信が止まれば、多くの業務は継続できなくなります。

停電時に確認すること

  • パソコンやサーバー
  • インターネット機器
  • 電話設備
  • 生産設備
  • 冷蔵・冷凍設備
  • 電子錠やシャッター
  • 照明
  • 空調
  • エレベーター
  • 給排水設備
  • 携帯電話の充電

非常用発電機がある場合も、発電機があるだけで安心してはいけません。

  • 何時間動かせるか
  • どの設備につながっているか
  • 誰が操作できるか
  • 燃料を補充できるか
  • 定期的に始動試験をしているか

まで確認してください。
点検は行っていてもどれぐらい使えるか把握している人は少ないので使用時間や予備の燃料はチェックしておきましょう。

断水時に確認すること

  • 飲料水
  • トイレ
  • 手洗い
  • 調理
  • 清掃
  • 製造工程
  • 冷却設備
  • 消火設備への影響

通信障害時に確認すること

  • 従業員への連絡
  • 顧客や取引先への連絡
  • 社内システム
  • クラウドサービス
  • データ確認
  • キャッシュレス決済
  • 物流や発注システム

電話や一つのアプリだけに依存せず、SMS、メール、災害用伝言サービス、紙の連絡先一覧など、複数の手段を準備します。

従業員や来客を事業所内で待機させる可能性がある場合は、次の記事もご確認ください。

企業の防災備蓄は何をどれくらい用意する?従業員・来客を守る防災用品の考え方

5.自社だけでなく、仕入先・物流・外注先の停止を想定しているか

自社の建物、設備、従業員が無事でも、事業を続けられない場合があります。

主要な仕入先、物流会社、外注先、システム会社などが被災する可能性があるからです。

確認したいのは、次の内容です。

  • 主要仕入先が停止した場合の代替先
  • 一社に依存している原材料やサービス
  • 物流が止まった場合の在庫
  • 外注業務を別の会社へ移せるか
  • 設備修理や部品供給の依頼先
  • クラウドサービス停止時の対応
  • 主要取引先への連絡順位
  • 納期や供給停止を説明する方法

「代替先を確保する」とBCPに書くだけでは不十分です。

実際に連絡したことがなく、数量、納期、価格、品質を確認していなければ、まだ代替手段とはいえません。

連絡したことのない代替先は、対策ではなく候補です。

また、取引先の電話番号だけでなく、通常の担当者と連絡が取れない場合の緊急窓口も確認しておきます。

被災して急に連絡しても、対応してくれるとは限りません。普段から分散して、顔の見える関係を築いておくことも大切です。

6.BCPと備蓄・防災マニュアルの内容がつながっているか

BCP、防災マニュアル、備蓄、避難訓練が、それぞれ別の担当者によって作られていないでしょうか。

例えば、

  • BCPでは100人が3日間待機すると想定している
  • 備蓄は50人分しかない
  • 防災マニュアルでは全員帰宅させることになっている
  • 避難訓練では屋外へ避難した時点で終了している

という状態では、計画同士が矛盾しています。

BCPでは重要業務の継続を考えますが、その前提として従業員と来客の安全確保が必要です。

これらは単独ではなく、繋がっていることが大事です。
作るのは別の人でも構いませんが、情報の共有をしていないと使えないものになってしまいます。

相互に確認する内容

  • 施設内待機と帰宅の判断
  • 従業員と来客の想定人数
  • 備蓄量
  • 避難場所
  • 安否確認方法
  • 初動時の責任者
  • 重要業務の担当者
  • 停電・断水時の対応
  • BCP発動後の業務体制

企業防災全体を確認したい場合は、次の記事をご確認ください。

企業の防災レベルを見極める|訓練・備蓄・BCPを使える備えに変える考え方

防災マニュアルの作成・見直しについては、次のページで案内しています。

企業向け防災マニュアル作成・見直し

7.今回確認した内容を、訓練とBCPの更新につなげられるか

今回の地震を受けて、BCPの連絡先や担当者を確認することは重要です。

しかし、書類を読み返して終わりにしてはいけません。

BCPが機能するかどうかは、実際に条件を与えて確認する必要があります。

例えば、次の条件で机上訓練を行います。

  • 社長とBCP担当者が不在
  • 従業員の半数が出社できない
  • 電話とインターネットが使えない
  • 本社へ入れない
  • 主要設備が停止した
  • 仕入先から納品できないと連絡が入った
  • 重要顧客から復旧予定を聞かれた

この状況で、

  • 誰が最初に判断するか
  • どの業務を止めるか
  • 何を優先して復旧するか
  • 従業員をどこへ配置するか
  • 顧客へ何を伝えるか

を確認します。

予定どおり答えられなかったとしても、訓練の失敗ではありません。
判断できなかった部分を災害前に見つけられたことが、訓練の成果です。

訓練は成功させるために行うものではない

災害現場では、想定していた人、物、通信手段がすべてそろうとは限りません。

そのため、決められた手順を間違えずに実行できるかだけではなく、条件が変わっても判断と連携を続けられるかを確認する必要があります。

訓練で問題が見つからない場合は、本当に計画が優れているのではなく、想定が易しすぎる可能性もあります。

訓練の目的は、BCPが正しいと証明することではありません。BCPの弱点を見つけることです。訓練は貴重な勤務時間を削って行うことになるので、こなすだけになってしまっては意味もないし、時間を奪うだけになってしまいます。

企業向けBCP緊急確認チェックリスト

現在のBCPや防災体制について、次の項目を確認してください。

確認項目確認
安否確認後の出社・勤務可否を集計できる
経営者不在時の代行順位が決まっている
続ける業務と停止する業務を分けている
停電・断水・通信障害の代替手段がある
主要仕入先や物流停止時の代替策がある
BCP、マニュアル、備蓄の内容が一致している
BCPを使った訓練と更新の予定がある

チェックが付かなかった項目を、すべて一度に解決する必要はありません。

ただし、未決定のまま放置せず、

  • 誰が確認するか
  • 誰と協議するか
  • いつまでに決めるか
  • どの訓練で確かめるか

まで決めてください。

地震の直後だけBCPを確認しても、会社の仕組みにはならない

大きな地震が発生すると、防災用品の購入やBCPの確認が一時的に増えます。

しかし、時間がたつと、通常業務が優先され、見直しが止まることがあります。

BCPは、地震のニュースを見るたびに思い出す書類ではありません。

人事異動、設備変更、システム変更、取引先変更、新規事業などに合わせて更新し、定期的に訓練する会社の仕組みにする必要があります。

現在のBCPが、

  • 数年前の担当者名のまま
  • 連絡先だけを更新している
  • 訓練で使ったことがない
  • 経営者しか内容を知らない
  • 重要業務が決まっていない
  • 復旧目標に根拠がない

という状態であれば、今回の確認を一度きりで終わらせないでください。

いつかやろうではなく、年間スケジュールに見直しの時期と担当者を決めておくことも大切です。

地震のニュースを見て終わらず、自社の判断を確認する

令和8年熊本地震は、企業にとっても、自社の地震対策やBCPを確認する契機になります。

ただし、被災地の状況を見て「自社も備えなければ」と考えるだけでは、会社の体制は変わりません。

確認すべきなのは、次の7項目です。

  1. 安否確認後の勤務・業務体制
  2. 経営者不在時の指揮命令
  3. 継続・停止する業務の優先順位
  4. 停電・断水・通信障害への対応
  5. 仕入先・物流・外注先の停止
  6. BCP、備蓄、防災マニュアルの整合
  7. 訓練とBCPの更新

BCPがまだない企業は、まず公的なひな形を使い、分かる範囲から作り始めてください。

BCPがある企業は、現在の会社で本当に実行できる内容かを確認してください。

地震が起きたことを知るだけでは、会社の備えは変わりません。
自社なら誰が何を判断するのかを決めて、初めて備えになります。

日本に住んでいる以上、災害リスクは避けられません。自分の地域で起こったらどうするか、しっかり考えておくことが従業員、会社、そして地域も守る力になります。

自社のBCPを確認し、実際に動ける計画へ

ファーストレスキューでは、企業が作成したBCPの確認、重要業務や復旧目標の整理、初動体制、防災マニュアル、備蓄、訓練までを一体的に支援しています。

目的は、分厚いBCPを作ることではありません。

経営者や担当者が不在でも、限られた人員、設備、情報の中で判断を続けられる計画にすることです。

  • BCPをまだ作成していない
  • ひな形を途中まで作ったが進まない
  • 数年前のBCPを更新できていない
  • 重要業務や復旧目標が曖昧
  • BCPを使った訓練を行っていない
  • 自社だけでは内容の妥当性を判断できない

という場合は、現在の状況を整理するところから確認できます。

企業向けBCP作成・運用・見直し支援を確認する

企業向けの研修、避難訓練、防災マニュアル、年間支援を含む全体像は、次のページで案内しています。

企業向け防災支援を確認する

参考資料

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