事業継続力強化計画とBCPの違い|どちらを作ればいい?認定後の進め方まで解説

事業継続力強化計画の認定を取得したものの、
「これでBCPまでできたと考えていいのか」
「認定後は、さらに何か取り組む必要があるのか」
と迷う企業もあるのではないでしょうか。

事業継続力強化計画とBCPは、どちらも災害などによる事業への影響に備えるためのものですが、目的や位置づけ、具体化する内容には違いがあります。

ただし、まったく別々のものとして考える必要はありません。

事業継続力強化計画を入口として自社の災害リスクや事前対策を整理し、そこから重要業務や復旧目標、代替手段などを具体化して、より実践的なBCPへ発展させることもできます。

つまり、

事業継続力強化計画か、BCPか。

という二者択一で考える必要はありません。

事業継続力強化計画で自社の災害リスクや防災・減災対策を整理し、必要に応じて重要業務や復旧目標、代替手段まで具体化していく方法もあります。

この記事では、

  • 事業継続力強化計画とは何か
  • BCPとは何か
  • 両者にはどのような違いがあるのか
  • 自社はどちらから取り組めばよいのか
  • 認定取得後に何を具体化すればよいのか

を説明していきます。

目次

事業継続力強化計画とは

事業継続力強化計画は、中小企業等が行う防災・減災の事前対策に関する計画を、経済産業大臣が認定する制度です。

中小企業庁では「中小企業のための取り組みやすいBCP」と位置づけており、認定を受けた事業者は、要件を満たす場合に税制措置、金融支援、補助金の加点などの支援措置を受けられます。

主に、

  • 自社にどのような災害リスクがあるか
  • 災害が事業へどのような影響を与えるか
  • 発災直後にどのような初動対応を行うか
  • 人員をどう確保するか
  • 建物や設備をどう守るか
  • 情報やデータをどう保護するか
  • 必要な資金をどう確保するか
  • 計画をどのように訓練・見直ししていくか

といった内容を整理していきます。

「BCPを作らないといけないが、何から考えればよいか分からない」という中小企業にとって、自社のリスクと現在の備えを整理する入口として利用しやすい制度です。

制度内容や申請方法は変更される場合があるため、申請時には必ず中小企業庁の最新情報を確認してください。

中小企業庁「事業継続力強化計画」
中小企業庁「事業継続力強化計画の申請方法等について」

認定には実施期間がある

事業継続力強化計画は、一度認定を受ければ永久に認定が続く制度ではありません。

現在の制度では、計画の実施期間は変更後を含めて最大3年とされています。実施期間が満了した後も認定を受ける場合には、新たな計画を策定して申請する必要があります。

つまり、認定を取ったら終わりではありません。

計画した対策を実施し、訓練し、現在の会社の状況に合わせて更新していくことが重要です。

BCPとは

BCPは「Business Continuity Plan」の略で、日本語では事業継続計画と呼ばれます。

災害や事故などで事業が中断する、または中断する可能性が生じたときに、重要な業務を継続し、中断した場合でもできるだけ早く再開するための計画です。

内閣府も、企業にとって事業継続は単なる防災対策ではなく、重要業務の中断による顧客流出や企業評価の低下などを防ぐための経営上の課題として位置づけています。

BCPでは一般的に、

  • 優先して継続・復旧する重要業務
  • 事業が停止した場合の影響
  • 目標とする復旧時間
  • どの水準まで業務を戻すか
  • 発動条件
  • 指揮命令体制
  • 責任者不在時の代行者
  • 必要な従業員と代替担当者
  • 設備・データ・拠点の代替手段
  • 仕入先や物流が停止した場合の対応
  • 顧客・取引先への連絡

などを、自社の事業に合わせて具体化します。

ただし、最初から完璧なBCPを作る必要はありません。

内閣府の事業継続ガイドラインでも、初めから完璧なものを目指して着手を遅らせるのではなく、できることから始めて継続的に改善することが推奨されています。

BCPをこれから作る場合の具体的な手順は、以下の記事で詳しく解説しています。

中小企業のBCPの作り方|ひな形から始める7つの手順

策定率は上がってきていますが、まだBCPを知らない人も多いのが現状です。

事業継続力強化計画とBCPの違い

両者を整理すると、次のようになります。

比較項目事業継続力強化計画BCP
位置づけ中小企業向けの認定制度であり、取り組みやすいBCP事業継続のための計画
主な目的防災・減災や事業継続の基礎となる対策を整理する重要業務を継続・早期復旧する
主な対象中小企業者等業種・規模を問わず企業・組織
国の認定ありBCP自体に一律の国の認定制度があるわけではない
主な内容災害リスク、初動、人員・設備・資金・情報などへの対策重要業務、復旧目標、必要資源、代替手段、取引先対応など
支援措置要件を満たせば税制・金融・補助金加点等ありBCPを作ったこと自体に一律の支援措置があるわけではない
作成後実行・訓練・見直し訓練・検証・改善・更新
実効性の確認認定を受けただけでは確認できない訓練・試験等で確認する必要がある

重要なのは、

「事業継続力強化計画はBCPではない」と完全に切り分けないことです。

中小企業庁自身が、事業継続力強化計画を取り組みやすいBCPと位置づけています。

一方で、取引先から具体的な供給継続策や復旧時間を求められている企業、複数拠点や工場を持つ企業などでは、認定計画の内容を土台として、さらに詳細な事業継続策を具体化する必要があります。

事業継続力強化計画の認定を取ればBCPは完成する?

認定を受けたからといって、

「これで災害時にも会社は問題なく動ける」

訳ではありません。

これは、事業継続力強化計画の制度に問題があるという意味ではありません。

計画書に書いてあることと、実際の災害時に人が判断して行動できることは別だからです。

例えば、計画に、

【従業員の安否を確認する】

と書いてあったとします。

しかし実際には、

  • 誰が確認結果を集約するのか
  • 連絡がない従業員を誰が確認するのか
  • 出社できる人数を誰が判断するのか
  • 従業員が半数しか集まらなければ何の業務を止めるのか

まで決まっていなければ、その後の事業継続にはつながりません。

同じように「データをバックアップする」と書いてあっても、

  • 誰が復元するのか
  • 管理者権限を確認できるのか
  • 代替端末はあるのか
  • 通信障害時でも復旧できるのか
  • 実際にバックアップから復元したことがあるのか

まで確認して初めて、使える対策になります。

また、「代替仕入先を確保する」と書いていても、候補企業の名前だけを書いている状態では不十分です。

必要な量を供給できるのか。
何日で届くのか。
自社も被災している状況で取引を開始できるのか。

そこまで確認しておく必要があります。

認定は、計画を作ったことを示すものです。
災害時にその計画どおり事業を継続できることを保証するものではありません。

事業継続力強化計画とBCP、どちらから始めればいい?

自社の状況によって変わります。

まず事業継続力強化計画から始めやすい企業

次のような企業は、まず事業継続力強化計画を利用して、自社の防災・減災と事業継続について整理する方法があります。

  • BCPがまったくない
  • 何から考えればよいか分からない
  • まず自社の災害リスクを整理したい
  • 防災・減災対策を整理したい
  • 認定制度や支援措置も検討したい
  • 最初から詳細なBCPを作るのは難しい
  • 社内で事業継続を考えるきっかけを作りたい

何も作らないままにするより、まず整理を始めることが重要です。

最初からBCPまで具体化した方がよい企業

一方、次のような企業は、事業継続力強化計画の項目だけで終わらず、重要業務や復旧戦略まで具体化したBCPを検討した方がよいでしょう。

  • 取引先からBCPの提出や説明を求められている
  • 工場・倉庫・物流拠点などを運営している
  • 複数の事業所がある
  • 事業停止が顧客や社会へ与える影響が大きい
  • 特定の設備や担当者への依存度が高い
  • 特定の仕入先への依存度が高い
  • 代替拠点や代替生産を検討する必要がある
  • 「いつまでに復旧できるか」を取引先へ示す必要がある
  • 災害時の供給責任が大きい

単純に、

小規模企業=事業継続力強化計画
大企業=BCP

と分けるものではありません。

事業が止まった場合にどれだけ影響が出るのか、取引先や利用者から何を求められているのか

によって考える必要があります。

認定取得後はBCPとして何を深める?

事業継続力強化計画を作成した企業が、次の段階として確認したいのは大きく3つです。

1.重要業務と復旧目標を具体化する

災害時にすべての業務を通常どおり続けることは困難です。

そのため、

  • 最優先で継続する業務は何か
  • 一時的に止められる業務は何か
  • いつまでに復旧する必要があるか
  • どこまでの水準に戻せばよいか
  • その業務に必要な人員・設備・情報は何か

を具体化します。

「すべての業務が重要」では、優先順位を決めたことになりません。

BCPをこれから具体化する場合は、作成手順をこちらで解説しています。

中小企業のBCPの作り方|ひな形から始める7つの手順

2.現在の計画で本当に動けるか確認する

計画を作った後は、

  • 責任者が不在でも判断できるか
  • 従業員が十分に集まらなくても重要業務を続けられるか
  • 停電しても必要な設備を動かせるか
  • データを実際に復元できるか
  • 代替拠点を本当に利用できるか
  • 主要仕入先が止まった場合に代替できるか

を確認します。

すでにBCPや事業継続力強化計画を作成している企業は、次のチェックリストも確認してください。

BCP見直しチェックリスト10項目|企業の地震対策を実効性ある計画へ

3.訓練して「動けないところ」を見つける

最後は、計画を使って確認します。

例えば、

平日14時に震度6強の地震が発生。
社長とBCP担当者は社外。
従業員の半数が出社できない。
停電は3日間継続する。
主要仕入先も被災している。

という条件を与え、

  • 誰が判断するのか
  • 何を止めるのか
  • 何を優先するのか
  • 誰へ連絡するのか
  • どの代替手段を使うのか

を検討します。

そこで判断できなかった部分が、次に修正すべきBCPの課題です。

机上訓練の具体的な進め方やシナリオについては、こちらで解説しています。

BCP机上訓練のやり方|地震シナリオ・進め方・評価項目を解説

認定取得だけを目的にしない

事業継続力強化計画の認定を目指すこと自体は問題ありません。

問題になるのは、認定を受けることだけが目的になる場合です。

例えば、

  • 記載例をそのまま転記する
  • 申請担当者以外が計画の内容を知らない
  • 認定後に計画を開かない
  • 防災設備を購入して終わる
  • 人事異動後も責任者を更新しない
  • 設備やシステムが変わっても計画を変更しない
  • 訓練を一度も行わない

という状態です。

申請書を完成させることと、災害時に会社が動けることは同じではありません。

内閣府も、BCPの策定だけでなく、事前対策、教育・訓練、点検、継続的な改善などを含む平常時からの活動をBCM(事業継続マネジメント)として位置づけています。

作る。
実行する。
試す。
直す。

この循環を続けることで、計画は実際の災害時に使えるものへ近づいていきます。

作って終わりだと思ってる人は少なくありません。作ることが目的ではなく、命を、会社を守るために作っていることを忘れないでください。

事業継続力強化計画とBCPに関するよくある質問

事業継続力強化計画はBCPではないのですか?

完全に別物と考えるのは適切ではありません。

中小企業庁は、事業継続力強化計画を「中小企業のための取り組みやすいBCP」と位置づけています。

一方で、企業の事業内容や取引先から求められる内容によっては、重要業務、復旧目標、代替設備、代替拠点、供給継続策などをさらに具体化する必要があります。

事業継続力強化計画とBCPを2つ別々に作る必要がありますか?

必ずしも、ゼロから別々の計画を2つ作る必要はありません。

事業継続力強化計画で整理した災害リスク、初動対応、人員・設備・情報などへの対策を土台にして、重要業務や復旧目標、代替手段などを具体化していくことができます。

認定を取れば取引先に「BCPがあります」と説明できますか?

取引先が何を求めているかによります。

認定取得の有無を確認したい場合もあれば、

  • 重要業務
  • 目標復旧時間
  • 代替生産
  • 代替拠点
  • 供給継続方法
  • 災害発生時の連絡体制

まで説明を求められる場合もあります。

「BCPの有無」だけではなく、取引先が何を確認したいのかを把握することが重要です。

事業継続力強化計画の認定はずっと有効ですか?

現在の制度では、計画の実施期間は変更後を含めて最大3年です。

期間満了後も認定を継続したい場合は、新たな計画を策定して認定を受ける必要があります。

すでに認定を取っています。次に何をすればいいですか?

まず、

  • 優先する重要業務が決まっているか
  • 復旧目標が具体的か
  • 責任者不在時でも判断できるか
  • 従業員不足時の体制が決まっているか
  • データや設備の代替手段を実際に試しているか
  • 主要取引先・仕入先が停止した場合を想定しているか
  • 計画を使った訓練を実施しているか

を確認してください。

不足があれば、現在の計画を捨てて作り直すのではなく、必要なところから具体化していく方法があります。

事業継続力強化計画は、事業継続を考えるスタートにできる

事業継続力強化計画は、中小企業が災害リスクや防災・減災対策を整理し、事業継続について考え始めるための有効な制度です。

認定を受けることで、要件を満たせば税制措置、金融支援、補助金加点などの対象になる可能性もあります。

一方で、

認定を取った=災害時にも事業を継続できる

ということではありません。

災害時に会社を動かすためには、

  • 何を最優先で続けるのか
  • いつまでに復旧するのか
  • 誰が判断するのか
  • 必要な人員が集まらない場合はどうするのか
  • 設備やデータが使えない場合は何で代替するのか
  • 取引先へ何を伝えるのか

まで具体化し、実際に確認する必要があります。

事業継続力強化計画を作ったことをゴールにするのではなく、

自社が災害時にも判断し、重要業務を継続・復旧できる計画へ育てていくこと

が重要です。

認定を取るための計画から、災害時に使えるBCPへ

ファーストレスキューでは、これからBCPを作りたい企業だけでなく、

  • 事業継続力強化計画を作成したが、その後何をすればよいか分からない
  • 取引先からBCPについて説明を求められている
  • 重要業務や復旧目標を具体化できていない
  • 数年前に作成したBCPを現在の会社に合わせて見直したい
  • BCPを使った訓練を実施したい
  • 自社で作成したBCPが実際に使えるか確認したい

といった企業のBCP作成・見直し・運用を支援しています。

計画書の体裁を整えることだけが目的ではありません。

災害が起きたときに、

限られた人員、設備、情報の中で何を優先し、どう事業を継続・復旧するのか。

そこまで自社の状況に合わせて整理することを重視しています。

企業向けBCP作成・策定支援|見直し・運用まで

参考資料

制度や申請要件は変更される場合があります。最新情報は必ず各公式情報をご確認ください。

中小企業庁「事業継続力強化計画」
中小企業庁「事業継続力強化計画の申請方法等について」
内閣府「事業継続ガイドライン」

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