大雨が予想されている日の午後。雨が次第に強くなってきた。
保育園として、
「早めにお迎えをお願いした方がいいのでは?」
と考える場面があります。
子どもたちをできるだけ早く保護者へ引き渡したい。
その考え自体は自然です。
ただし、大雨時のお迎えには一つ大きな注意点があります。
まだ道路が安全な段階で早めのお迎えをお願いすることと、道路がすでに冠水し始めてから「すぐ迎えに来てください」と連絡することは、同じではありません。
場合によっては、園からのお迎え依頼によって、保護者を危険な道路へ向かわせてしまう可能性があります。
大雨時の保育園では、
「いつ迎えに来てもらうか」と同じくらい、「いつから迎えに来てもらわないか」を考えておく必要があります。
これを決めておかないとなんとしても迎えに来ようとしてしまう保護者を危険にさらしてしまう可能性だってあります。
この記事では、豪雨時の休園、保護者連絡、お迎え、引き渡し、園内待機、避難について、実際の判断につながる形で整理します。
豪雨時の道路冠水や移動そのものの危険については、先にこちらをご覧ください。
→ 大雨・豪雨で道路が冠水したらどうする?車・避難・帰宅で迷わないための判断ポイント
2026年8月の千葉豪雨でも、保育園の防災気象情報への対応が改めて重要になった
2026年8月13日から千葉県では記録的な大雨となりました。
千葉市では、保育園・認定こども園等について、防災気象情報に応じた対応基準を定めています。2026年度の通知では、特別警報、自治体からの避難情報、鉄道の計画運休などを臨時休園の判断材料としています。
特に注目してほしいのは、開園後に状況が悪化した場合の扱いです。
千葉市の園向け通知では、午前6時以降に休園基準に該当した場合、原則として開園を継続しながらも、保護者の安全に配慮したうえで早めのお迎えを依頼したり、避難情報に応じた避難行動をとるよう示しています。
ここで大切なのは、
「大雨になったら、とにかく迎えに来てもらう」ではない
という点です。
自治体の基準を確認したうえで、
- 園は安全なのか
- 周辺道路は安全なのか
- 保護者が安全に来園できるのか
- 子どもを引き渡したあと安全に帰れるのか
まで考える必要があ流ということです。
「警報が出たらすぐお迎え」だけでは足りない
園のマニュアルに、
「大雨警報が出た場合、保護者へお迎えを依頼する」
とだけ書いてある場合があります。
分かりやすいルールですが、これだけでは実際の豪雨に対応できません。
なぜなら、同じ警報でも、
まだ道路が安全な段階と、すでに道路が冠水している段階があるからです。
また、保護者も全員同じ場所にいるわけではありません。
近くの職場にいる人。
電車で1時間かかる人。
車で迎えに来る人。
自宅から徒歩で来る人。
大雨時には、園から保護者までの移動条件が一人ひとり異なります。
そのため、
「何の情報が出たら連絡するか」だけでなく、「そのとき周辺がどのような状態なら迎えに来てもらうのか」まで考える必要があります。

園の周りがどうなりやすいかハザードマップを見ておくことも大切なことです。


大雨時のお迎え判断は4つの時間帯で分けて考える
1.開園前|そもそも登園させるのか
危険が高まってから子どもや保護者を移動させないことは非常に大切です。
自治体によっては、特別警報や避難情報、計画運休などに応じて臨時休園基準を定めています。
豪雨災害のあった千葉市でも、午前6時時点で一定の基準に該当する場合は原則として臨時休園とする仕組みがあります。
そのため園独自の判断だけでなく、まず、
自園の自治体では何を基準に休園することになっているのか
を確認しておく必要があります。
そして自治体から明確な基準が示されていない場合でも、
台風の接近、計画運休、今後の降雨予測、園の立地などを考慮し、
「いったん登園してもらってから、数時間後に全員迎えに来てもらう」状況をできるだけつくらない
という視点が重要です。



来るときは安全だったけど、帰れないとなる可能性もあるし、来たのにすぐ迎えに来てもらうというのは理解してもらいにくいことにもなりかねません。
2.保育中・道路がまだ安全|早めのお迎えを判断する
開園後に雨が強くなる場合があります。
この段階では、
まだ安全に移動できる時間を逃さないこと
が重要です。
千葉市の通知でも、開園後に休園基準に該当した場合には、保護者の安全へ配慮したうえで早めのお迎えを依頼することが示されています。
ここで園が確認したいのは、
- 雨は今後さらに強くなるのか
- 自治体から避難情報が出ているか
- 園周辺の道路に冠水が始まっていないか
- 河川や用水路の状況
- 公共交通機関の運行状況
- 保護者が安全に来園できる時間が残っているか
です。
「危険になったらお迎え」ではなく、「危険になる前のお迎え」を考えてください。
3.道路冠水などが始まったら「今すぐ迎え」を一度考え直す
ここが今回の記事で最も伝えたい部分です。
園の周辺道路がすでに冠水している。
アンダーパスに水がたまっている。
河川の水位が高い。
避難指示が出ている。
この状況になってから、
「できるだけ早く迎えに来てください」
と一斉連絡すると、保護者が危険な道路へ向かう可能性があります。
もちろん、園そのものが危険であれば、子どもたちを安全な場所へ避難させなければなりません。
しかし園が安全な場所にあり、子どもと職員の安全が確保できているのであれば、
保護者を無理に移動させるより、園で安全を確保しながら状況の改善を待つ方が適切な場合もあります。
「早く子どもを返すこと」と「子どもと保護者を安全にすること」は、必ずしも同じではありません。
4.引き渡し場所を変更する
園外避難をした場合にも注意が必要です。
保護者が、
「園へ迎えに来たら誰もいなかった」
となってはいけません。
千葉市の園向け通知でも、避難所へ移動した場合には、保護者へ避難先を連絡することが示されています。
平常時から、
- 避難した場合の連絡方法
- 引き渡し場所
- 誰が保護者対応をするか
- 子どもの引き渡し記録
- 電話がつながらない場合の代替手段
を決めておく必要があります。



雨の中での移動は困難です。さらに連絡もとなると手が回らなくなる可能性も十分あります。前もって伝えておくことが大事です。
お迎えに来られない保護者は必ず出る
豪雨時には、
「全員が迎えに来られる」
と考えるのは危険です。
電車が止まる。
職場から出られない。
道路が冠水する。
別の子どもの迎えがある。
保護者自身が避難している。
こうした事情が重なる可能性があります。
そのため、園では、
「最後の一人を引き渡すまで安全に保育を続けられるか」
も考えておく必要があります。
既存の水害対策記事でも、水害時には園内待機が長くなったり、上階へ移動する可能性を想定し、水、食料、ミルク、おむつ、照明、モバイルバッテリー、園児名簿、引き渡し記録などを確認しておくことを整理しています。
詳しくはこちらをご覧ください。


避難確保計画と「お迎えルール」が矛盾していないか
浸水想定区域などにある一部の社会福祉施設・学校等の要配慮者利用施設では、水防法などに基づき避難確保計画の作成等が必要になります。
また、土砂災害警戒区域内で市町村地域防災計画に定められた要配慮者利用施設では、避難確保計画の作成と避難訓練の実施が義務付けられています。
ここで確認してほしいのは、
園の避難確保計画と保護者のお迎えルールが別々に作られていないか
です。
例えば、
避難確保計画では
「この段階で園外避難する」
となっているのに、
保護者向けマニュアルでは
「警報が出たら園へ迎えに来てください」
となっていたらどうでしょうか。
職員は子どもを避難させようとしている。
一方で保護者は園へ向かっている。
これでは動きが逆になります。
避難する判断、保護者へ連絡する判断、引き渡す判断は一つの流れとして整える必要があります。
保護者への連絡は「お迎えください」だけでは足りない
大雨時には、保護者も不安になっています。
だからこそ、園からの連絡は簡潔である一方、必要な情報が入っていなければなりません。
既存のファーストレスキューの記事でも、水害時の連絡では、園の現在の状況、子どもの安全確認、園内待機・園外避難などの対応、お迎え時の注意、次回の情報更新予定などを事前に整理することを勧めています。
例えば、
「大雨のため早めのお迎えをお願いします」
だけではなく、
「現在、園周辺の道路に冠水は確認されていません。今後雨が強まる予報のため、安全に移動できるうちの早めのお迎えをお願いします」
まで伝えれば、なぜ今迎えをお願いしているのかが分かります。
逆に道路が危険になった場合には、
「園児は園内で安全を確保しています。園周辺道路で冠水が確認されているため、無理にお迎えに向かわず、安全を優先してください。状況が変わり次第再度ご連絡します」
という連絡も考えられます。
重要なのは、
園からの連絡によって、保護者がどう行動するかまで想像することです。



平常時から、連絡体制をしっかりとっておくと、もしもの時に連絡がスムーズに行えます。
引き渡し訓練も「晴れた日に迎えに来るだけ」で終わらせない
保護者参加型の引き渡し訓練では、
決められた時間に保護者が来園し、名前を確認して子どもを引き渡す。
これだけで終わることがあります。
しかし実際の豪雨では、
全員が時間通り来られるとは限りません。
そこで訓練では、
「道路が冠水して一部の保護者が来られない」
「園外避難したので引き渡し場所が変わった」
「連絡を確認していない保護者が園へ来てしまった」
「代理人がお迎えに来た」
といった条件を一つ加えてみると、現実的な課題が見えやすくなります。
防災訓練は、
うまく引き渡せることを確認するだけではなく、予定どおりにならなかったときにどうするかを確認する場
にした方が実際の災害に近づきます。


危険になってから人を動かす難しさ
水害では、状況が悪くなるほど、
道路が通れない。
車が動けない。
暗くなる。
水位が上がる。
と、人を安全に移動させる条件が次々と失われていきます。
保育園では子どもだけでなく、迎えに来る保護者の動きまで含めて考える必要があります。
「子どもを早く家族へ返したい」という思いは当然です。
しかし、そのために保護者を危険な道路へ向かわせれば、防災としては本末転倒です。
だからこそ、
危険になってから「迎えに来てください」と言うのではなく、危険になる前に判断する。
そして間に合わなかった場合は、無理に動かさない。
この両方を決めておく必要があります。



西日本豪雨で感じたのは移動の難しさです。通常10分ほどの距離が1時間や2時間かかる。早めの行動が水害時には大切です。
まとめ 「早く迎えに来てもらう」と「もう迎えに来てもらわない」をセットで考える
大雨時の保育園では、
「いつ保護者へ連絡するか」
だけを決めても十分ではありません。
必要なのは、
休園するのか。
登園を受け入れるのか。
いつ早めのお迎えをお願いするのか。
いつから無理に迎えに来てもらわないのか。
園で待機するのか。
園外へ避難するのか。
避難した場合どこで引き渡すのか。
ここまで一つの流れとして決めておくことです。
自治体のルールがある場合は、それを前提にしながら、自園の立地、建物、園児数、職員体制、保護者の通勤状況などに合わせて具体化していきます。
豪雨時の保護者連絡で一番大切なのは、
「迎えに来てもらうこと」ではなく、子ども・職員・保護者の全員が危険な移動をしないことです。



迎えに来させることでもし保護者に万が一のことがあれば、責任問題を問われる可能性もあります。もしものことを考えることは命も守るし、園を守ることにもなります。
豪雨時の道路冠水や移動判断についてはこちらです。
→ 大雨・豪雨で道路が冠水したらどうする?車・避難・帰宅で迷わないための判断ポイント
企業の帰宅・待機判断はこちらです。
→ 大雨のとき従業員を帰宅させる?会社に留める?企業が決めておきたい判断基準
保育園の水害対策全体はこちらです。
地域での声かけ・安否確認についてはこちらです。
よくある質問
Q.大雨警報が出たら、すぐ保護者へお迎えを依頼すればよいですか?
一律には言えません。
自治体や法人が休園・お迎え等の基準を定めている場合は、まずそのルールに従います。そのうえで、園の安全性、周辺道路、今後の雨、避難情報などを確認する必要があります。
重要なのは、道路が危険になってから一斉にお迎えを依頼しないことです。
Q.道路が冠水していても、保護者が「迎えに行きます」と言えば引き渡してよいですか?
保護者自身の判断だけでなく、園としても周辺の安全状況を確認し、無理な移動を促さないことが重要です。
園児が安全に待機できるのであれば、状況の改善まで待ってもらうことも選択肢になります。
Q.保護者がいつまでたっても迎えに来られない場合はどうしますか?
豪雨ではその可能性を最初から想定しておいてください。
長時間の園内待機に必要な水、食料、ミルク、おむつ、照明、充電手段、職員体制などを確認しておく必要があります。
Q.避難確保計画を作っていれば十分ですか?
計画だけでは十分とは言えません。
対象となる施設では避難確保計画の作成や訓練が求められていますが、実際の運用では保護者連絡、引き渡し、職員配置などと整合しているかまで確認する必要があります。
保育園の防災を「実際に動ける形」に
ファーストレスキューでは、保育園・こども園向けに、防災講座、避難訓練、年間計画、BCP、安全管理の見直しなどを支援しています。
特に大切にしているのは、
「マニュアルには書いてあるけれど、実際その状況になったらどう動くのか」
まで確認することです。
保育園・こども園向けの防災支援についてはこちらをご覧ください。
保育防災の基本から見直したい場合はこちらです。









