地震による火災を防ぐ対策として、消防庁や自治体などが設置を進めている【感震ブレーカー】
一定以上の揺れを感知すると自動的に電気を遮断し、地震による電気火災の発生リスクを下げるためのものです。
大きな地震では、電気ストーブの上に物が落ちたり、電気コードやコンセントが損傷したり、停電後に電気が復旧したことで火災が発生したりすることがあります。
また、人が不在のときや、避難を急いでいてブレーカーを落とせないときにも、自動的に電気を遮断できることには大きな意味があります。
ただ、忘れてはいけないことがあります。
感震ブレーカーは、電気を止めることで火災を防ぐ設備です。
つまり種類によっては、感震ブレーカーが正常に作動した瞬間、家の中が停電します。
夜中だったらどうでしょう。
大きな揺れがおさまり、家具や物が散乱している。床には割れたガラスが落ちているかもしれない。
その状態で突然、家の中が真っ暗になります。
感震ブレーカーを設置するなら、
「電気を止める準備」と同時に、「電気が止まった後の準備」もしておく。
ここまで考えておくことが重要です。
なぜ地震では「電気火災」への対策が重要なのか
大きな地震では、建物の倒壊や津波だけでなく、火災も大きな被害につながります。
その中でも注意したいのが、電気を原因とする火災です。
内閣府の資料では、東日本大震災の本震で発生し、原因が特定された火災108件のうち58件が電気関係の出火でした。半数を超えています。
例えば地震によって、
- 電気ストーブの上に衣類や家具が倒れる
- コンセントや電気コードが損傷する
- 電気機器が倒れる
- 停電後、異常がある状態のまま復電する
といったことが起こります。
怖いのは、地震直後だけではないことです。
停電して一度電気が止まり、「火災は起きていない」と思って避難したあと、電気が復旧したことで出火することもあります。
だからこそ、避難するときにブレーカーを落とすことが重要です。
しかし、大地震の直後に必ずブレーカーまで移動できるとは限りません。
家族を助けなければならないかもしれない。
建物が壊れているかもしれない。
そもそも外出中かもしれない。
そこで役に立つのが感震ブレーカーになります。
感震ブレーカーとは?
感震ブレーカーは、一定以上の地震の揺れを感知し、ブレーカーやコンセントなどへの電気を自動的に遮断する器具です。
内閣府が2026年3月に公表した資料では、震度5強相当以上の揺れを感知した際に電気を自動的に止める器具として説明されています。ただし、作動条件や遮断までの時間などは製品によって異なります。
主なものには、
- 分電盤タイプ
- 簡易タイプ
- コンセントタイプ
があります。
ここで、ぜひ知っておいてほしいことがあります。
感震ブレーカー=必ず家全体がすぐ停電する、ではありません
製品によって電気を止める範囲が違います。
分電盤タイプなどは、主幹ブレーカーを作動させて家全体の電気を一括して遮断します。
一方、コンセントタイプには、接続した電気機器だけを遮断するタイプもあります。
また、揺れを感知してから一定時間後に電気を遮断できる製品もあります。
ですから、
「感震ブレーカーを付ける」
だけではなく、
「自宅に付けた感震ブレーカーは、地震が起きるとどの電気を、いつ止めるのか」
まで知っておくことが大切です。

感震ブレーカーの注意点は「作動した後」にある
感震ブレーカーが正常に作動して電気火災を防ぐ。
これは非常に重要なことです。
しかし、家全体の電気を遮断するタイプなら、その瞬間から照明も使えなくなります。
ここで当たり前だけど絶対忘れてはいけないのが、地震は予感に起こることもあるということです。
そうなると避難がしにくくなってしまいます。
防災設備は、
「付いているか」ではなく、「作動したときにどうなるか」まで考える必要があります。
地震後は、普段の家の中とは状況が違います。
家具が動いている。
物が床に落ちている。
ガラスが割れている。
扉が開かなくなっている可能性だってあります。
そこへ暗闇が加わります。
だから感震ブレーカーを設置するときには、次の対策もセットで考えてください。

地震の恐怖に加え、停電による暗闇の恐怖はパニックにもなります。
そして大災害時は救急車が来れるとも限らないので、ケガをしないが重要になります。
感震ブレーカーと一緒に備えたい6つのこと


1.まず「明かり」を準備する
最優先で考えたいのが照明です。
特に夜間の地震では、停電するとドアや床の状況が見えなくなります。
停電時に作動する足元灯や懐中電灯などを常備することが大事になります。
ただし、
「懐中電灯を持っています」だけでは十分ではありません。
その懐中電灯はどこにありますか?
すぐに使える場所にありますか?
大きな地震のあと、そこまで真っ暗な中を歩かなければ取れないのであれば、地震直後の明かりとしては使いにくい備えになってしまいます。
おすすめしたいのは、
「停電した瞬間に手が届く場所へ置くこと」
です。
例えば、
- 寝室の枕元
- リビング
- 廊下
- 階段付近
などです。
特に便利なのが、普段はコンセントに差しておき、停電すると自動的に点灯するタイプのライトが便利です。



電気が当たり前の生活をしているので、ライトの重要性を感じないかもしれないですし、スマホがあればと思うかもしれません。
ただスマホはのちに使う頻度が高いものにもなります。なのでなるべくスマホの消費は抑えてもらいたいです。
ライトを持っている、そして暗くなった瞬間に使えることが大事です。
2.「どこまで電気が止まるのか」を家族で知っておく
感震ブレーカーを購入・設置したら、取扱説明書を保管するだけで終わらせないでください。
確認したいのは、
- どの程度の揺れで作動するのか
- すぐ遮断するのか、猶予時間があるのか
- 家全体が止まるのか
- 一部の電気だけが止まるのか
- 作動したあと、どうやって復旧するのか
です。
家族の一人だけが知っていても不十分です。
地震が発生するとき、その人が家にいるとは限りません。
少なくとも家族で、
「大きな地震が起きたら、この家では電気がこうなる」
というところまでは話しをしておきましょう。
3.電気が止まると困る医療機器がないか確認する
これは設置前に必ず確認してほしい項目です。
家庭用医療機器など、電気が止まることで生命や健康に重大な影響が出る機器を使用している家庭では、通常の家庭と同じ考え方ではいけません。
2026年3月に内閣府などが作成した「感震ブレーカー等の選び方」でも、感震ブレーカーを選ぶ前の確認事項として、
「自宅に災害時でも電気を止めてはいけない機器があるか」
が示されています。
該当する場合は、
- 必要な予備バッテリー
- バッテリーで使用できる時間
- 停電時の切り替え方法
- 医療機関や機器メーカーとの確認
- 停電が長期化した場合の対応
などを平時から確認しておく必要があります。
「ポータブル電源を買えば大丈夫」と一律に考えるのではなく、使用している医療機器に適したバックアップ方法を医療機関やメーカー等へ確認してください。



命に関わる場合もあります。起きないかもではなく、起きた時のことをしっかり確認しておきましょう。
4.スマートフォンだけに情報収集を頼らない
これは感震ブレーカーというより、停電が起きた時のことになりますが、一緒に考えておいてください。
停電するとテレビが使えなくなります。
Wi-Fiルーターも電源が止まると使えません。
携帯電話はバッテリーが残っていれば使用できますが、大規模災害では通信が不安定になることも考えておく必要があります。
そのため、
- モバイルバッテリー
- 乾電池
- 電池式・充電式ラジオ
など、情報を得る方法を複数持っておくことも大切です。
スマートフォンは非常に便利で、あるのが当たり前になっている分、使えない場合を考えなくてなっている方もいると思います。
だからこそ、非常時にスマートフォンだけへ依存しない他の方法を用意してことも重要です。
5.停電した状態で「外まで出られるか」を確認する
ここはぜひ、一度家庭で試してみてください。
夜、家の照明を消した状態で、
寝室から玄関まで安全に移動できますか?
もちろん実際の地震では、家具が動いたり、物が落ちたりしている可能性があります。
窓ガラスが割れていることだって考えられます。
なので、
- 家具を固定する
- 避難経路に物を置かない
- ガラスが割れそうな場所を確認する
- ライトをすぐ使える場所へ置く
といった対策も、感震ブレーカーとセットになります。
感震ブレーカーだけを設置しても、地震対策そのものが完成するわけではありません。



感震ブレーカーがあれば安心っていうことはありません。
合わせて家具の固定は必須です。
6.一度は「作動した後」を確認しておく
防災用品全てに言えることですが、
持っていることと、使えることは違います。
感震ブレーカーも同じです。
取扱説明書に従って、
- 正常に作動するか
- 作動したことをどう確認するか
- どの電気が止まるのか
- 復旧方法は分かるか
を確認しておきましょう。
いざという時に使えないでは設置の意味がありません。
「いざというときに本当に動くか」まで確認して初めて意味があります。
電気が止まったあと、すぐにブレーカーを戻さない
もう一つ、非常に重要なポイントがあります。
感震ブレーカーが作動したあと、
「地震もおさまったし、電気がないと不便だから」
とすぐにブレーカーを戻すのは絶対に避けてください。
地震後は、ブレーカーを戻す前に安全確認が必要です。
少なくとも、
- ガス漏れがないか
- 電気製品が倒れたり壊れてたりしていないか
- 電源コードが家具などの下敷きになっていないか
- コンセントや配線などに異常がないか
- 電気機器の周囲に燃えやすい物が落ちていないか
などを確認してください。
そして電気が使えるようになったあとも、
「電気が付いたから大丈夫」と考えないでください。
しばらくは、
- 焦げ臭くないか
- 煙が出ていないか
- 電気製品に異常がないか
を気にしておいてください。



何かおかしい、変なにおいがするという感覚を気のせいとせず、すぐにブレーカーを落としてください。電気が使えないのは不便ですが、火災のリスクは忘れてはいけません。
煙や火が発生した場合は、速やかに119番通報をしてください。


感震ブレーカーは、作動した後まで考えて備える
感震ブレーカーについては、
「地震火災を防ぐために設置しましょう」
という説明で終わることが少なくありません。
もちろん、感震ブレーカーを設置して電気火災のリスクを下げることは重要です。
ただ、防災では設備を設置したことではなく、実際に作動したときに安全に行動できるかまで考えておく必要があります。
感震ブレーカーが作動すれば、種類によっては家全体の電気が止まります。
夜であれば照明が消える。
テレビやWi-Fiが使えなくなる。
充電ができなくなる。
家庭によっては、電気を必要とする機器が止まる可能性もあります。
だからこそ、
「感震ブレーカーを付ける」だけで終わらず、作動した後に何が困るのかを一度考えてみてください。
真っ暗になるのであれば、すぐ使えるライトを準備する。
情報が取りにくくなるのであれば、ラジオや予備電源を準備する。
電気を止められない機器があるのであれば、バックアップ方法を確認する。
必要な備えは家庭によって違います。
防災用品を先に選ぶのではなく、
「地震が起きたら何に困るのか」から逆算して備える。
感震ブレーカーについても、この考え方が大切です。
感震ブレーカーを設置したら確認したいチェックリスト
最後に、確認項目をまとめます。
- □ 自宅の感震ブレーカーの種類を知っている
- □ どの程度の揺れで作動するか確認した
- □ 作動するとどこまで電気が止まるか知っている
- □ 遮断までの猶予時間があるか確認した
- □ 寝室のすぐ手が届く場所にライトがある
- □ 停電時でも使用できる照明を準備している
- □ 電気を止めてはいけない医療機器等がないか確認した
- □ モバイルバッテリーやラジオなど別の情報手段がある
- □ 暗い状態でも避難できるよう避難経路を確認している
- □ 家族が感震ブレーカーの存在を知っている
- □ 地震後、すぐブレーカーを戻さないことを家族で共有している
- □ 感震ブレーカーの動作確認を定期的に行っている
全部にチェックが入る必要はありません。
まずは、
「感震ブレーカーが作動したら、自宅で何が困るだろう?」
と考えるところから始めてください。
まとめ:感震ブレーカーは「止める・備える・戻す」まで考える
感震ブレーカーは、地震による電気火災を減らすために有効な設備です。
特に、不在時や避難を急ぐ状況で、自分でブレーカーを落とせない場合にも電気を遮断できることには大きな意味があります。
ただし、設置しただけで地震への備えが完了するわけではありません。
覚えておきたいのは3つです。
① 地震時に電気を止める
感震ブレーカーで電気火災のリスクを減らす。
② 電気が止まった後に備える
照明、情報、医療機器、避難経路などを準備する。
③ 電気を戻す前に確認する
地震後の電気製品や周囲の安全を確認してから復電する。
この3つはセットです。
防災設備は、設置した瞬間ではなく、作動した瞬間を考える。
感震ブレーカーをすでに設置している方も、これから設置しようとしている方も、ぜひ一度「電気が止まった後の我が家」を確認してみてください。
よくある質問
Q.感震ブレーカーが作動すると家全体が停電しますか?
製品によって異なります。分電盤タイプや一部の簡易タイプ・コンセントタイプでは主幹ブレーカーが作動し、家全体の電気を遮断します。一方、接続した機器だけを遮断するコンセントタイプもあります。設置前に遮断範囲を確認してください。
Q.感震ブレーカーは地震が起きたらすぐ電気を止めますか?
製品によって異なります。揺れを感知してから一定時間後に遮断するタイプや、遮断までの時間を設定できるタイプもあります。夜間の避難時に照明を利用できるよう猶予時間を設定できる製品もあります。
Q.感震ブレーカーを付ければ地震火災を防げますか?
すべての地震火災を防げるわけではありません。感震ブレーカーは、電気を原因とする火災の発生リスクを下げるための設備です。家具の転倒防止、火気周辺の整理、避難時のブレーカー遮断など、他の対策と組み合わせることが重要です。
Q.感震ブレーカーにはデメリットがありますか?
「デメリット」というより、電気を遮断する設備である以上、種類によっては照明や家電なども使用できなくなることを理解しておく必要があります。特に夜間の照明や家庭用医療機器については、事前の停電対策が重要です。
参考資料
記事末尾の「参考資料」は、自社記事ではなく公的資料だけで問題ありません。
- 内閣府「感震ブレーカーの普及促進」 内閣府 防災情報のページ
- 内閣府・消防庁等「感震ブレーカーをつけましょう!/感震ブレーカー等の選び方(令和8年3月)」
- 内閣府「大規模地震に備えるための家庭での停電対策について」
- 総務省消防庁「感震ブレーカー」 消防庁 感震ブレーカー
- 総務省消防庁「令和5年版消防白書 地震火災への備え」









