地震後、会社・店舗・工場に戻っていい?再入場の判断と安全確認7項目

大きな地震が発生し、従業員と来客を建物の外へ避難させた。
点呼を行い、ひとまず全員の無事も確認できた。

しかし、その直後から新しい問題が始まります。

例えば、従業員から、

「スマートフォンを置いてきたので、取りに戻っていいですか?」
「財布と車の鍵を机に置いたままです」

と言われるかもしれません。

反対に会社側から、

「売上金が出たままなので、金庫にしまってきてほしい」
「重要書類を持ち出してほしい」

と指示が出ることも考えられます。

工場や事業所なら、

「このままでは設備が危ないので停止させたい」

という場面もあります。

では、どこまでなら建物へ戻ってよいのでしょうか。

誰が「戻ってよい」と判断するのでしょうか。

地震対応は、建物から避難できたら終わりではありません。

避難後にも、

  • 建物へ戻るのか
  • 誰を戻すのか
  • 何のためなら戻るのか
  • 設備を停止するのか
  • いつ立入禁止を解除するのか
  • 営業・操業を再開するのか

という判断が続きます。

内閣府も、企業の防災では人命の安全確保や二次災害防止を重視し、「従業員と事業所の安全確保が第一優先」としています。

この記事では、地震後の「建物への再入場」に絞って、企業が平常時から決めておきたい考え方を解説します。

企業の初動対応全体について確認したい場合は、こちらの記事も参考にしてください。

→ 熊本地震で問われる企業防災|爆発・工場の建物倒壊から考える「防災顧問」の役割

火災現場で何度も戻ってしまったが故に命を失ってしまった事案をいくつも見てきました。結果論で言うとなぜ戻ったとなります。
ただ、現実として戻ってしまう人は少なからずいると言う現実を知って、対策をしておくことが重要です。

目次

「戻る理由がある」だけでは再入場の判断材料にならない

まず重要なのは、

「戻る理由があること」と「戻っても安全であること」は別の問題

だということです。

スマートフォンを取りたい。
会社の現金を金庫へしまいたい。
重要書類を持ち出したい。
設備を停止したい。

理由によって緊急性は違います。

しかし、

「会社から言われたから」
「仕事だから」
「数分で終わるから」

という理由だけで、安全確認が十分でない建物への戻っていいわけがありません。

ただ、設備の異常など、放置することで火災や漏えいなどの二次災害でより多くの被害につながる可能性だってあります。

つまり再入場では、

何のために戻るのか。
今、本当に戻る必要があるのか。
そして、安全をどう確認するのか。

を分けて考えなければなりません。

地震後に建物へ戻る理由は、大きく3つある

再入場の判断を考えやすくするため、まず理由を3つに分けてみます。

再入場の理由具体例考えるポイント
個人的な理由スマホ、財布、上着、車の鍵今すぐ必要なのか
会社の資産・業務上の理由現金、重要書類、PC、商品人を戻す必要があるほど緊急なのか
二次災害を防ぐ理由設備停止、危険物対応、漏えい確認放置する危険と再入場する危険の比較

この3つをすべて、

「戻ってはいけない」

で終わらせても、実際の企業防災にはなりません。

逆に、

「必要なら戻ればいい」

でも危険です。

それぞれについて、判断する仕組みを決めておく必要があります。

個人でスマホや財布を取りに戻る場合

まず分かりやすいのが、私物を取りに戻るケースです。

スマートフォン
財布
車の鍵
上着

本人にとっては重要なものです。

特にスマートフォンは、家族への連絡や情報収集にも使うため、

「どうしても取りに戻りたい」

と考える人が出ても不思議ではありません。

また、職種によって、ロッカーに入れていて、非常時は置いて逃げないといけないと言うのが多いです。

しかし、ここで注意したいのが、

「すぐそこだから」

という感覚です。

目の前で崩落が起きていたりと明らかな危険であれば、入らない選択をしますが、そうでない場合、大丈夫だろうと思ってしまうケースは非常に多いと感じています。

しかし、余震の発生時刻を予測することはできません。

建物内へ入っている数分の間に、再び強く揺れる可能性もあります。

だから、

「スマホくらいなら」
「財布くらいなら」

ではなく、

安全確認が終わるまで私物回収は待つ

というルールを会社として決めておく方が、現場で迷いにくくなります。

重要なのは、社員の判断力だけに頼らないことです。

入口を管理する。
再入場する場合は責任者を通す。
誰が建物内にいるのか記録する。

ここまで仕組みにしておく必要があります。

会社から「現金を金庫にしまってきて」と言われた場合は?

もう一つ考えなければならないのが、本人が戻りたいのではなく、会社から戻るよう指示されるケースです。

例えば、

「レジの現金が出たままだから、金庫に入れてきてほしい」
「重要書類を机に置いたままなので持ってきてほしい」
「パソコンを持ち出してほしい」

といった場面です。

このケースは、個人的な私物回収より判断が難しくなります。

社員本人からすると、

「会社から指示された仕事」

だからです。

私は、このような場合こそ慎重に判断する必要があると考えています。

現金や重要書類は企業にとって大切な資産です。

しかし、企業防災の優先順位を考えれば、人の安全を後回しにして守るものではありません。

そして支持する人は、現場の危険性を理解していない場合がほとんどだからです。

内閣府も企業防災について、人命の安全確保と事業所の安全確保を第一優先に位置付けています。

例えば金庫へ現金をしまうために再入場するなら、

  • 本当に今すぐしまう必要があるのか
  • 後から安全確認をしてからでは遅いのか
  • 建物へ戻らなくても資産を守る方法はないか
  • 建物の状況は確認できているか
  • 誰が再入場を許可するのか
  • 誰を入れるのか
  • どこまで入るのか
  • 途中で異常を感じたら直ちに中止できるか

を考える必要があります。

会社の指示だから安全になるわけではありません。

むしろ、会社からの指示であれば社員は行動に移しやすくなるため、指示を出す側が安全確認と必要性を整理しておく必要があります。

そんなこと起こらないだろうではなく、もしもに備えることが企業には求められます。

「設備を止めるために戻る」は、現金やスマホとは違う

さらに難しいのが設備です。

例えば、

「機械を停止しなければならない」
「ガスを止める必要がある」
「危険物設備を確認したい」

という場合です。

これはスマートフォンを取りに戻ることとは、全く意味が違います。

設備を放置することによって、

火災
漏えい
爆発
周辺への被害

といった二次災害につながり、より多くの人の命を危険にさらしてしまう可能性があるからです。

事業継続を考えるうえでも、内閣府は人命の安全確保とともに二次災害の防止を重要な対応として位置付けています。

ただし、

「設備を止めるためなら入ってよい」

という単純な話でもありません。

消防の現場でも、

目的が正しいことと、その行動が安全であることは別に考えます。

二次災害を防ぐという目的は正しい。

しかし、それを行うために社員を危険な場所へ入れ、新たな被災者を生んではいけません。

だからこそ平常時に、

  • 地震時に設備は自動停止するのか
  • 遠隔で停止できるのか
  • 非常停止装置はどこにあるのか
  • 建物内へ入らず停止できないか
  • 誰が停止操作できるのか
  • どの状態なら停止操作を断念するのか
  • 異常時にどの専門業者へ連絡するのか

まで確認しておく必要があります。

地震が発生してから、「誰か止めに行って!」と決めるのでは遅いのです。

「見た目では大丈夫」は安全確認ではない

地震後に建物を外から見て、

「建物は立っている」
「大きなひび割れも見えない」
「ガラスも割れていない」

からといって、その建物の安全性が確認されたとは限りません。

一方で、

「専門家が来るまで企業は何も確認できない」

という意味でもありません。

内閣府は「大規模地震発生直後における施設管理者等による建物の緊急点検に係る指針」を公表しています。

この指針は、建築の専門知識を持たない建物管理者等が緊急・応急的に安全確認を行う際の参考として作られています。

ただし重要なのは、地震発生後に初めて見よう見まねで点検するためのものではないということです。

平常時に、設計者、構造設計者、施工業者など建物に詳しい専門家とカルテを作成し、確認箇所を把握し、建物に合ったチェックシートを用意し、訓練しておくことが想定されています。

私はここが非常に重要だと思っています。

防災担当者が、地震をきっかけに突然建築の専門家になる必要はありません。というより不可能でしょう。

大切なのは、

「自分たちだけでは安全だと判断できない状態」を認識し、人を入れない判断ができることです。

地震後の再入場前に確認したい7項目

ここからは、再入場を判断するときに企業で確認したい内容を7項目に整理します。

この7項目だけで建物の構造的な安全性を判定できる、という意味ではありません。

目的は、

明らかな危険を見落とさないこと。
再入場の必要性を考えること。
誰が判断するかを明確にすること。
必要な専門家へつなぐこと。

です。

1.建物や周辺に明らかな異常がないか

まず、建物へ入る前に外側から確認します。

例えば、

  • 建物が明らかに傾いている
  • 柱や壁などに大きな損傷がある
  • 周辺地盤に大きな亀裂や沈下がある
  • 外壁などが落下している
  • 看板や外装材が落下しそう
  • 隣接する建物や工作物が傾いている

といった状態です。

内閣府の緊急点検指針でも、建物周辺や構造部分、落下等の危険性を確認する流れが示されています。

ただし、

「異常が見つからなかった=安全」ではありません。

外から分かる明らかな危険を見つけることと、建物の安全性を保証することは別です。

少しでもおかしいと思ったら、入らない選択をしてください。
入らない選択をすることも勇気です。

2.落下・転倒・避難経路の危険はないか

建物そのものが立っていても、

天井材
照明
ガラス
外壁
看板
書棚
商品棚
倉庫ラック

などが危険な状態になっている場合があります。

最初の地震で落ちなかった物が、その後の余震で落ちる可能性も考えなければなりません。

さらに、再入場する場合には、

もう一度すぐに避難できるか

も確認する必要があります。

避難経路が荷物でふさがれていないか。
扉が開くか。
非常口を使用できるか。
停電した状態でも移動できるか。

当たり前のことですが、いつもと違うというのを甘くみがちです。

再入場では、

「入れるか」だけでなく「もう一度逃げられるか」

まで確認してください。

3.火災・ガス・電気・危険物・設備に異常がないか

建物だけを確認して終わりではありません。

例えば、

  • 煙が出ている
  • 焦げた臭いがする
  • ガス臭がする
  • 電気設備から異音や火花が出ている
  • 配管から液体や気体が漏れている
  • 水が噴き出している
  • 機械やタンクが傾いている
  • 危険物や薬品の容器が破損している

といった状況です。

異常を確認するために危険な場所へ近づくのではなく、

異常を感じた時点で、それ以上人を近づけない

という判断も必要です。

5感を大切にしてください。特にニオイや異音などいつもと違う感覚は異常があると判断してください。

4.誰が建物内にいるか把握できるか

避難して点呼を終えたあと、一人が建物へ戻ったらどうなるでしょうか。

その時点で、

「全員避難済み」

という情報は変わっています。

再入場をする場合は、

  • 誰が入ったのか
  • 何のために入ったのか
  • どこへ行くのか
  • 何時に入ったのか
  • 戻ってきたのか

を管理する必要があります。

これは個人的にスマートフォンを取りに戻る場合でも、会社から現金回収を指示された場合でも同じです。

点呼とは人数を一度数えて終わる作業ではなく、今、誰がどこにいるかを把握するためのものです。

再入場を認めるなら、出入口の管理までセットで考えてください。

5.今、本当に戻る必要があるのか

ここが特に重要な項目です。

再入場を考える前に、

「そもそも今戻る必要があるのか」

を確認します。

スマートフォンなら、安全確認後まで待てないか。
現金も取りに行かなきゃ盗まれる可能性があるのか。
重要書類なら、今すぐ持ち出す必要があるのか。
設備なら、遠隔停止や自動停止ができないか。

「大切だから戻る」

ではなく、

「今、人を入れる必要があるほど緊急なのか」

という視点で考えてください。

元消防士として私が企業防災で特に伝えたいのは、この優先順位です。

災害時には守りたいものが一気に増えます。

現金
重要書類
パソコン
商品
設備

しかし、それらを守るために人を危険な場所へ戻せば、防災の優先順位が逆転します。

6.誰が再入場の必要性と安全性を判断するのか

会社として、

誰が「まだ入らない」と決めるのでしょうか。

そして、

誰が「この目的なら、この範囲へ再入場する」と決めるのでしょうか。

「社長が判断する」

だけでは足りません。

地震は、社長や防災担当者が会社にいるときに起きるとは限らないからです。

少なくとも、

  • 第一責任者
  • 第一責任者不在時の代行者
  • さらに不在の場合の第二代行者
  • 出入口を管理する人
  • 建物や設備の状況を確認・報告する人
  • 専門家へ連絡する人

まで整理しておきます。

私が企業の防災体制を見る場合も、

「責任者は決まっています」

と言われたら、そこで終わりにはしません。

「その人が今日休みだったら、誰が決めますか?」

と確認します。

そこで答えが止まるのであれば、実災害で判断が止まる可能性があります。

初動対応、代行順位、情報共有などを整理する場合は、防災マニュアルへ具体的な手順として落とし込む方法があります。

→ 企業向け防災マニュアル作成・見直し

7.何が確認できれば立入禁止を解除するのか

立入禁止を決めても、

いつ解除するのか

が決まっていなければ、現場は再び迷います。

建物や設備によっては、

  • 建物所有者・管理会社
  • 設計者
  • 施工会社
  • 建築士などの専門家
  • 電気設備会社
  • ガス事業者・ガス設備会社
  • 消防設備会社
  • 機械メーカー・保守会社
  • 危険物設備の専門事業者

などへ確認する必要があります。

重要なのは、

地震後に初めて「誰に聞けばいいのか」を探さないことです。

建物の安全なら誰。
電気設備なら誰。
ガスなら誰。
消防設備なら誰。
製造設備なら誰。

と、平常時から整理しておくことが重要なのです。

内閣府の緊急点検指針も、平常時から建物に詳しい専門家と連携し、カルテやチェックシートを準備しておくことを想定しています。

被災建築物応急危険度判定とは別に考える

地震後の建物安全確認について調べると、

「被災建築物応急危険度判定」

という言葉が出てきます。

これは、大きな地震で被災した建物について、余震による倒壊や部材の落下などによる二次災害を防止するため、建物の危険度を緊急に判定する制度です。

市町村が実施し、判定士が建物を調査して危険の程度を知らせます。

ただし、

「地震が起きたら会社が応急危険度判定を依頼し、それが終わるまで待てばよい」

と考えるのは現実的ではありません。

大規模地震では点検対象となる建物が非常に多く、専門家がすぐ確認できるとは限りません。

そのため内閣府は、企業等でも活用できる施設管理者向けの緊急点検指針を整備しています。

行政による応急危険度判定と、企業が平常時から準備しておく建物管理・初動対応は分けて理解しておきましょう。

再入場は「全員戻る」「誰も戻れない」の二択ではない

地震後の建物利用について、

「安全だから全員戻る」
「危険だから誰も戻れない」

という二択だけで考える必要はありません。

建物や被害の状況、設備、確認結果などによっては、危険箇所への立入りを制限しながら対応することも考えられます。

ただし、

「1階は大丈夫そう」
「この部屋だけなら問題なさそう」

と現場の感覚だけで判断するという意味ではありません。

建物の特徴に応じた確認方法や、必要な専門家との連携を平常時から準備しておく必要があります。
また、建物の奥まで入らないといけないのかそれとも入り口近辺ですぐ避難できる場所なのかなど、状況によって変わるので一律に判断するのが難しいのも事実です。

内閣府の指針でも、建物の立地や構造など、それぞれの特徴に応じてチェック内容を具体化する考え方が示されています。

「戻らないでください」だけでは再入場を防げない

マニュアルに、

「地震後は安全が確認されるまで建物へ戻らない」

と書くことは必要です。

しかし、それだけで実際の再入場を防げるとは限りません。

スマートフォンを取りたい人がいる。
会社から現金をしまうよう指示される。
設備担当者が機械を確認しようとする。

こうした場面まで想定すると、

  • 誰が入口を管理するのか
  • 誰が再入場を許可するのか
  • 会社から誰が作業指示を出せるのか
  • 再入場者をどう記録するのか
  • 個人の私物回収をいつ認めるのか
  • 設備確認が必要な場合はどうするのか

まで決めておかなければなりません。

「戻るな」というルールだけでなく、「勝手に戻れない仕組み」を作る。

私はここまでが企業の再入場対策だと考えています。

このぐらいなら大丈夫だろう、私はそんな目に遭わないと思って行動する人は少なくありません。そして、社会的な責任を会社は追求されるリスクもあります。仕組みを作ることで戻らせないようにしておくことは思っている以上に重要です。

避難訓練を「点呼」で終わらせない

多くの地震避難訓練では、

地震発生

身を守る
避難する
点呼する
講評する

というところで終了します。

もちろん、この訓練も必要です。

ただ、実災害ではその直後から判断が始まります。

そこで、年に一度でも構わないので、避難後に追加条件を出してみてください。

例えば、

状況1
社員から
「スマートフォンを取りに戻りたい」
と言われた。

状況2
責任者から
「売上金が出たままなので、金庫にしまってほしい」
という指示が出た。

状況3
設備担当者から
「このままでは設備に問題が起こる可能性があるので確認したい」
と言われた。

状況4
そのとき社長と防災担当者には連絡が取れない。

ここまで条件を出して、

「では誰が判断しますか?」

と問いかけます。

正解を当てることが目的ではありません。

「誰が決めるか分からない」
「建物の確認方法を決めていなかった」
「設備会社の連絡先が分からない」
「会社が社員へ再入場を指示する基準がない」

と分かれば、それが訓練の成果です。

BCPの机上訓練についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

→ BCPの机上訓練はどう進める?地震シナリオと実施手順・評価方法

あなたの会社では答えられますか?再入場ルール簡易チェック

次の質問に、自社ではすぐ答えられるでしょうか。

確認項目自社のルール
地震後、立入禁止を決める人は誰か
その人が不在なら誰が代行するか
建物の緊急点検方法を決めているか
出入口を誰が管理するか
私物を取りに戻りたい社員がいたらどうするか
会社の現金・重要書類を回収する基準はあるか
会社から再入場を指示できる人を決めているか
設備停止のために再入場する基準はあるか
人が入らず設備を停止する方法はあるか
再入場した人を記録する方法はあるか
建物の安全について誰へ確認するか
電気・ガス・設備等の連絡先が分かるか
立入禁止を解除する条件は決まっているか
責任者不在・停電時にも同じ判断ができるか

あくまで簡易チェックにはなりますが、すべて即答できるのであれば、かなり具体的に地震後の対応まで考えられていルト言えます。

一方、

「そのとき社長が決める」
「建物を見てから考える」
「必要なら誰かが取りに行く」
「設備担当者に任せる」

という項目があるのであれば、

そこが地震前に整理しておくべき部分です。

災害時はいろんなことを同時進行で考えなければいけません。想定外もたくさん起こります。決めておくことで混乱を防ぐことにつながります。

地震後の再入場に関するよくある質問

地震の揺れがおさまれば会社へ戻ってもいいですか?

揺れがおさまったことだけを理由に再入場を判断するべきではありません。
建物周辺、構造、落下物、設備などの異常、再入場の必要性、立入管理などを確認します。

また、施設管理者が緊急点検を行う場合も、平常時から建物に詳しい専門家と確認箇所やチェックシートを準備しておくことが重要です。

スマートフォンや財布を取りに戻るだけでもダメですか?

「短時間だから安全」という判断はできません。

安全確認が終わっていない段階では、私物を理由とした個人判断による再入場を認めないルールを決めておく方が、災害時の混乱を防ぎやすくなります。

重要なのは物の種類ではなく、現在の建物状況と再入場の必要性です。

会社から現金や重要書類を取りに戻るよう言われた場合は?

会社からの指示であっても、建物の危険性で判断が必要です。

なぜ今すぐ回収する必要があるのか、人を入れずに対応できないのか、建物の状況を確認できているのか、誰が判断したのかを整理する必要があります。

人命・従業員の安全を第一に考えることは企業防災の基本です。

設備を停止する場合も戻ってはいけませんか?

設備停止は、私物や現金回収とは異なります。

放置することで火災、漏えいなどの二次災害につながる可能性もあるため、設備ごとに判断する必要があります。

だからこそ、地震が起きてから判断するのではなく、自動停止、遠隔停止、非常停止、担当者、停止を断念する条件などを平常時に整理しておくことが重要です。

それと同時にその情報は消防にもいち早く共有するようにしてください。

震度何以上なら会社を立入禁止にすればいいですか?

「震度○以上ならすべての建物を立入禁止」「震度○以下なら安全」と一律に判断できるものではありません。

建物の構造、立地、設備、実際の被害状況などによって確認すべき内容は異なります。

内閣府の指針でも、建物の特徴に合わせて安全確認内容を具体化する考え方が示されています。

防災担当者が見て大丈夫なら再入場できますか?

単純に建物を見て「大丈夫そう」と判断することと、平常時に準備した緊急点検を行うことは別です。

内閣府の指針では、専門家とのカルテ作成、チェックシートの準備、安全確認の訓練などを事前に行うことが想定されています。

防災担当者が建築士の代わりになるのではなく、自社で確認できる範囲と専門家へ確認する範囲を決めておくことが重要です。

再入場ルールはBCPと防災マニュアルのどちらに書けばいいですか?

立入禁止、責任者、代行順位、再入場、設備確認など発災直後の具体的な行動は、防災マニュアルへ整理すると現場で確認しやすくなります。

一方、建物が使えない場合の代替拠点、重要業務、営業・操業停止、復旧目標などはBCPにつながります。

重要なのは、BCPと防災マニュアルを別々に作って終わらせず、内容をつなげることです。

BCP全体については、こちらの記事も参考にしてください。

→ そのBCPは地震時に本当に使えますか?企業が見直すべき10の盲点

地震後の再入場は、地震が起きてから決めることではない

地震後、

社員がスマートフォンを取りに戻りたいと言った。
会社の現金が出たままになっている。
重要書類を持ち出したい。
設備を停止しなければならない。

こうした状況は十分に考えられます。

問題は、

「戻るか、戻らないか」だけではありません。

誰が必要性を判断するのか。
誰が建物の状況を確認するのか。
誰が再入場を許可するのか。
誰を入れるのか。
どこまで入るのか。
誰が出入口を管理するのか。
どの状態になったら中止するのか。

そこまで決めておかなければ、実際の地震で迷います。

元消防士として企業の防災を見るとき、私は、「マニュアルがありますか?」だけではなく、

「今ここで地震が起きたら、誰が何を決めますか?」を確認します。

「社長が決めます」と言われれば、社長がいなかったら。

「防災担当者が判断します」と言われれば、その担当者が休みだったら。

「安全を確認してから戻ります」と言われれば、誰が、何を確認したら安全と判断するのか。

そこまで考えてもらいます。

そして、答えが止まったところが、その会社が次に見直すべき防災です。

避難する方法だけではなく、避難したあとに何を確認し、誰が何のために人を戻すのかまで決めておく。

そこまで考えて、初めて実災害で使える防災体制になります。

そこまで考えていなかったということは非常に多いです。
心のどこかで災害は起こらないをなくして、何もない時に考えておくことがもしもの備えになります。

自社の再入場ルールを見直すときに

会社によって、日によって、時間によって

建物
設備
営業時間
勤務人数
危険物の有無
来客数
業務内容

は違います。

そのため、この記事の7項目をそのままマニュアルへ貼り付けるだけでは、自社のルールにはなりません。

例えば、

「現金を回収する」

という一つの行動だけでも、

小規模店舗と大型商業施設、工場、本社オフィスでは条件が違います。

重要なのは、

自社なら誰が判断するのか。
何を確認するのか。
どこから先は専門家へ確認するのか。

まで具体化することです。

ファーストレスキューでは、防災マニュアルの作成・見直しにおいても、担当者名や行動項目を並べるだけではなく、いつ判断するのか、誰が代行するのか、情報をどこへ集めるのか、次に何を確認するのかまで整理しています。

→ 企業向け防災マニュアル作成・見直し

また、再入場だけではなく、建物、避難訓練、備蓄、役割分担、初動対応、BCPなどを継続的に確認する方法もあります。

→ 企業向け年間防災サポート・企業防災顧問

まずはこの記事のチェック表を使い、

「うちの会社ならどうするのか」

を経営者、防災担当者、施設担当者で一度話し合ってみてください。

そこで答えられなかった項目を一つずつ決めていくことが、実際に動ける企業防災につながります。

参考資料

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